久留米大学病院主催
「久留米大学病院 元気プロジェクト報告会」
日時:平成29年3月12日(日)13時30分~16時
会場:久留米シティプラザ 大会議室3
久留米大学病院は、厚生労働省から「平成28年度女性医師キャリア支援モデル普及推進事業」を委託されました。
本事業は、出産・育児によりキャリアを中断せざるをえない場合がある女性医師が、働き続けやすい職場環境のあり方が課題となる状況を踏まえ、女性医師支援の先駆的な取り組みを行う医療機関を「女性医師キャリア支援モデル推進医療機関」として選定し、効果的な取り組みを地域の医療機関に普及するための支援です。
久留米大学病院男女共同参画事業推進委員会は、女性医師支援策の充実を図るために、本事業を精力的に取り組まれており、その報告会に南副センター長が参加しました。
第1部は、厚生労働省の医政局医事課医師臨床研修専門官の櫻本恭司氏による基調講演で、厚生労働省や日本医師会の調査データの解説がありました。
例えば、日本の医師全体の中で、女性医師の割合は2割ですが、これはOECD;Organisation for Economic Co-operation and Development=経済協力開発機構に加盟する35か国の中でみると、最下位とのことです。この結果について、「意思決定権のある女性を増やすことが大事ではないか」と話されました。
各診療科における女性医師の割合が多い順は、皮膚科(46%)、眼科(38%)、麻酔科(38%)、小児科(34%)、産婦人科(33%、うち20~30代は50%以上)となっているそうです。
臨床研修終了後に、希望が増える診療科は、麻酔科、精神科、皮膚科、眼科、泌尿器科、放射線科などで、ワークライフバランスの観点で選択されている可能性を示唆され、「働きやすい診療科の希望者が増えていくのではないか」と話されました。
医師の就業率については、卒後12年38歳頃が女性医師の就業率が最下位(73.4%)となり、同年代の男性医師の就業率89.9%との差を埋めるべく、この「女性医師キャリア支援モデル普及推進事業」を行っている、ということでした。
医師全体の働き方としては、長時間労働の問題、有給休暇取得の低さなど、多くの問題があります。また、日本は病床当たりの医師数が少ないのが現状で、「女性医師の就業率低下を防ぎ、医師数を確保できれば、全体としての働き方も変わるのではないか」ということでした。
次に、元気プロジェクトの成果報告があり、久留米大学病院男女共同参画事業推進委員会副委員長 守屋普久子先生からの事業報告は示唆に富む内容でした。パート医から常勤へ復職した女性医師が複数人出たという実績は素晴らしいと思いました。同委員の岡松由記先生の「復職に成功しているママドクターの、”仕事へのやる気”と”医学への向学心”の意識変化グラフの調査結果」では、女性医師の「やる気スイッチ」には、「学会発表」「論文作成」「専門医取得」などの項目が挙がったそうです。
第2部シンポジウム ~女性医師復職支援モデル「Kurume モデル」の開発について~ では、2名の女性医師の勤務状況・環境についての発表と、全体討論がありました。医学生教育を担当している佐賀大学医学部医学科社会医学講座准教授の原めぐみ先生からは、「女性医師のパートナーの大多数は男性医師で、「妻へ『働かなくて良い』と言う夫」にならないように、男子医学生にも教育が必要だ」と話されました。JCHO久留米総合病院院長 田中眞紀先生からは、「子どもが3歳になったら当直を月1回からしてみるように勧めてみる」という具体的なお話がありました。専門医取得後の「やる気スイッチ」についての質問には、「経営に関わるような業績を上げる」「病院の宝となる」ことを目指すようとコメントされました。また、田中先生から、「厚生労働省の制度として、チーム主治医制を進めてほしい」という要望が櫻本氏へ伝えられました。
復職状況を調べたところ、長崎大学病院で育児休業を取得して、平成28年度内に復職した女性医師は、出産日から1年以内に全員(100%)復職していました。しかし、長崎県内病院のどこにでも同じ環境が整備されているわけではなく、復職が難しい、両立が難しい状況が存在すると思います。当センターでは、県内の女性医師の就労支援・キャリア支援を行っていますので、いつでもご相談ください。