「イクボスが長崎を変える~中小企業が生き残るための経営戦略~」
開催日時/平成29年3月15日(水)14:00~16:30
会 場/長崎市市民生活プラザホール(メルカ築町5階)
主 催/長崎県
第1部:基調講演
イクボス式経営戦略で解決できること
~離職率ダウン、業績アップを実現するために~
講師:NPO法人ファザーリングジャパン 代表理事 安藤 哲也 氏
イクボスとは・・・
職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことを指す。イクボスの「育」は、部下を育てる・企業組織を育てる・社会を育てるの意。
企業や自治体のトップがイクボスを増やす取り組みを実施することを旗揚げする「イクボス宣言」や「イクボス企業同盟」が全国で広がりをみせています。
長崎には未だ不在とのことで、「長崎から変えていきましょう!」「イクボスは漢方薬。毎日工夫し続けることで半年後、1年後に会社の風通しがよくなる、働いている人が笑顔になる、少しずつ変わっていくもの。」と安藤氏からの熱いエールがたくさん届きました。
厚生労働省イクメンプロジェクト推進チームの座長や内閣府・男女共同参画推進連携会議委員など多方面から委嘱された幅広い活動実績や著書などがあり、会場には多くのメディアが取材に訪れており、注目度の高さがうかがえました。
講演では、国の政策紹介や2025年の大介護時代到来による介護離職問題・制約社員(働く場所や時間、従事する仕事内容などの労働条件について何らかの制約をもつ社員の総称)推定7割、などの諸問題があると示され、対策として、働き方改革が最優先の課題であることがわかりました。部下をマネジメントする上司の意識改革が必要で、イクボスとしての役割・覚悟を持って、組織が生き残るために、できることから行動を起こさなければいけないと感じました。
<イクボスが必要とされる背景>
・女性が働くこと、男性が家事をすることに、若い世代は抵抗がなくなってきている。都市部の核家族は「共働き共育て」でないと生活が成り立たない。
・しかし、その上司(経営者~管理職世代)の固定化した価値観・仕事のやり方や男女の役割分担意識が、ワークライフバランス、つまり男性の育児休暇取得・女性の活躍推進・超長時間労働の是正などの妨げとなっている。
・一方、少子化で労働人口が減りつつある中、子育て世代の出産育児時の離職や40~50代の介護離職者をいかに防ぐかは、企業の喫緊の課題。
・「男女問わず全て」の労働者の「育児・介護・その他私生活」などスタッフの生活事情全般への理解を示す「イクボス」の存在が大切になってきた。
・社員のワークライフバランス推進にとどまらず、企業にとっては従業員の満足度、健康度、ロイヤルティ(忠誠心)を上げ、生産性向上と利益拡大にも繋がっていく。
<働き方改革の5つのポイント>
①すべての社員のための制度
②働いた時間=成果ではない
③多様なライフスタイルを尊重
④時間に対するコスト感覚
⑤トップダウンとボトムアップ
第2部:事例発表
チームで成果を出すための仕組みづくり
~離職率44%からゼロへ。契約解除寸前の状況を変えた!イクボス実践術~
講師:株式会社 OZ Company 代表取締役 小津 智一 氏
講師の小津智一氏は、大手科学メーカーでの営業職を経て、若くして未経験の業種(企業内保育施設・イベント保育の企画・運営)で起業されていますが、その原動力は、お子さんの誕生にあり、子育てに関わることで感じる親心に寄り添った事業をしようと決断されたそうです。「子育て中の父親、母親 そして、子どもたちの笑顔を広げる会社」を理念として掲げ、夫婦二人三脚からスタートし、契約解除寸前の困難にも、スタッフと真摯に向き合い、働き方・制度を変え、残業削減の知恵を絞り、経費削減・社員と顧客の満足度アップ、売上上昇・離職率低下へとつながった具体的な取り組み結果を、失敗談も交えて話されました。試行錯誤をしながら、新しい観点からのアプローチやスタッフの意見を尊重した対策を見つけ出し、「ぶれない」姿勢で熱心に働く若い経営者を、寛大な顧客や、信じて支えるスタッフとの信頼関係づくりが実を結び、事業が成功されていることがわかりました。
<感想>
上司は、部下の職場での業務に関することだけではなく、私生活や家族のことなどのバックボーンにも配慮しながら、各種のパフォーマンスを引き出す技量が必要だとわかった。また、様々な経験や考え方を、自宅や職場とは別のサード・プレイス(第3の居場所、ネットワーク)で得て、ライフが充実できている大人が若者から魅力的に映ることに共感できた。「発言」「態度」「行動」で、仕事への情熱と人生を謳歌するイクボスが増えると社会が少し変わるのではないかと期待できた。
「女性活躍の時代というが、同時に、男性が家庭や地域で活躍する時代」という言葉が印象的だった。共働き・共育て夫婦が増えている現代において、女性活躍推進の補強策として、「男性も育児や家事に参画すること」「残業を減らすなどすべての人の働き方を見直し、転換する必要がある」というお話しから、「女性活躍」「イクメン」「イクボス」を3点セットで推進する必要性がよくわかった。時間制約のある社員が7割を占めるだろうと言われる将来に向け、性別を問わず全体の働き方や意識を変えていかなければ、日本の現状を変えることは難しいと感じた。