1.<調査の目的>
病院経営者・管理者として、ワークライフバランス施策に対する認識を把握し、長崎県内病院の育児・介護休業制度等の両立支援策の取り組み状況や短時間勤務制度利用等の実態調査を行う。また、医師不足・医師偏在の解決策の一つとして、長崎県内病院と診療所で働く女性医師の勤務状況を把握し、希望者にはキャリアコンサルティングやメールマガジンを通して情報発信を行うことで、就労継続のサポートやキャリアアップの後押しへとつなげる。
2.<対象と方法>
実施月:平成29年6月
調査対象:長崎県内149病院と、1,355診療所
調査方法:調査票を郵送し、同封の返信用封筒で回収。
質問内容:常勤・非常勤医師数、子育て中の医師数、医師の健康診断受診率、職場環境の整備について、ワークライフバランス施策の認識についてなど。
調査票①:医師の両立支援状況(病院用)、(診療所用)
調査票②:女性医師の勤務状況(PDF)、(word)
3.<結果と考察>
配付・回答数(回答率):配付149病院 回答101病院(67.8%)、配付1,355診療所 回答743診療所(54.8%)
結果:集計抜粋グラフはこちらをご覧ください。(病院用)、(診療所用)
↓病院用抜粋グラフ ↓診療所用抜粋グラフ
今年度は、長崎県内医療機関に勤務している女性医師をできる限り把握することを目標に活動しています。「あじさいプロジェクト」が女性医師の就労支援さらにキャリアアップ支援をしていくための基礎データを構築するために、毎年行ってきた県内149病院に加え、県内の1,355診療所を対象に調査を実施しました。調査の回答率は、病院が101/149=67.8%、診療所が743/1,355=54.8%でした。
【長崎県内の女性医師について】
今回の調査では、女性医師の勤務時間数などの質問も行いました。これまで当センターが行ってきた潜在女性医師調査(長崎大学医学部同窓会員・県医師会員対象)や医局訪問等で把握していた約800名の女性医師に加え、44名を新しく把握することができました。その半数は非常勤勤務であり、今後あじさいプロジェクト活動を通して、勤務時間数アップ、キャリアアップを促していきたいと考えています。
また、勤務状況を把握できた女性医師は426名(大学病院を除く)で、そのうち病院勤務のみは252名、診療所のみ142名、2拠点以上の兼務が32名いました。67%は週30時間以上勤務ですが、週10時間未満勤務が5%(20名)いました。今後センターでは、勤務時間を増やしたいと思っている女性医師への働きかけを行っていきます。
さらに、昨年同様、県内の医療圏別の女性医師数を調べました。
回答いただいた101の病院に勤務する女性医師555名(大学病院を含む)のうち、子育て中(小学6年生までのお子さんを養育中)の女性医師は147名(26%)でした。長崎医療圏には最多の353名(64%)が勤務中で、そのうち子育て中の女性医師も107名(子育て女性医師のうち30%、女性医師全体のうち19%)と最多でした。続いて、県央医療圏に114名(子育て中は18名(16%))、3番目に多いのは佐世保医療圏で58名(子育て中は13名(22%))でした。長崎・県央・佐世保の3つの医療圏で子育て中の女性医師が94%と集中しており、他の医療圏には10人以下が勤めているという結果でした。
昨年度は子育て中の女性医師はいなかった五島医療圏・壱岐医療圏に、今年度は2名・3名が勤務されていました。通勤や通学、保育サポート環境の有無等が、子どものいる女性医師の勤務先が偏在する理由であると思いますが、離島・県北に病児保育施設がないのは現実です(対馬病院には院内病児保育があります)。院内保育・院内病児保育施設があれば、子どもが小さい時に離島で勤務をすることが選択肢になるかもしれません。医師確保対策のひとつとして、病院管理者のみなさまにご検討いただければと思います。調査にご協力いただいた県内844医療機関の皆様の貴重なデータは、厳重な管理のもと、長崎県の医療のための有意義な情報として活用させていただきます。
【101病院の調査結果】
4年連続で100病院以上から回答をいただき、ご協力に感謝いたします。(4年間未回答は9病院で、いずれも女性医師は勤務していませんでした。)また、当センターにメルマガ登録している病院が104病院(登録率70%)であり、メールでの調査票送付や、内容確認、再依頼などが行え、相互にとって業務をスムーズに遂行できました。ご協力誠にありがとうございました。
長崎県内の病院に勤務する女性医師の割合は、最近5年間は22-23%で推移しています。勤務形態は、女性医師の場合、常勤60%、非常勤40%で、昨年度より常勤医師数・割合ともにわずかに増加していました。非常勤の割合は昨年度同様、男性(非常勤割合18%)より多いという結果でした。
前述のとおり、病院に勤務しながら子育てをしている女性医師は147人で、病院勤務の女性医師全体の26%でした。長崎県内の病院勤務医師全体では6%となり、子育て中の女性医師は病院内では依然マイノリティです。
病院における両立に関する取り組み姿勢については、休暇や休業制度(産前・産後・育児・介護)の周知・取得促進に積極的に取り組んでいる病院が増加していました。質問した取り組み項目の中で、唯一、男性の家事・育児参加の奨励については、積極的に取り組んでいる病院は微増(6→8%)、まったく取り組んでいない病院が増えている(10→20%)という結果でした。この取り組みが、女性の社会進出の重要なステップとなりますが、理解も実施も厳しい現状です。
ワークライフバランス施策についての考えでは、ワークライフバランスを重視している割合は35%以上、トップ主導で推進されている割合は29%でしたが、重視・推進されていない割合が増加していました。また施策によるメリットを感じている割合が減少、デメリットとして、病院にとって負担が大きいと感じる割合が微増(7→9%)しており、昨年までの傾向が今年は継続されませんでした。
勤務環境の整備については、仕事と生活の両立ができるように配慮した制度は、昨年同様60%前後の病院に整備されていました。施設についても院内保育園を持つ割合が32%、院内病児保育施設があるのは6施設でした。院内保育・院内病児保育施設のある病院が、今後さらに増えていくことを期待します。
医師の負担軽減に配慮している取り組み事例として、一番多く回答があったのが医療クラークの配置(27病院)、次に当直翌日の勤務緩和(13病院)、勤務時間削減(11病院)が続きました。今後も、取り組む病院が増えていくことが期待されます。
【743診療所の調査結果】
回答いただいた743診療所のうち、125診療所(125/743=17%)には女性医師が勤務しており、それ以外は男性医師のみの勤務でした。ワークライフバランス関連のご意見は抜粋グラフを参照ください。
調査へご協力いただきました各病院・診療所のみなさま、ありがとうございました。