1.<調査の目的>
病院経営者・管理者として、ワークライフバランス施策に対する認識を把握し、長崎県内病院の育児・介護休業制度等の両立支援策の取り組み状況や短時間勤務制度利用等の実態調査を行う。また、労働環境改善を意識した各病院の先進的な取組を把握して、メールマガジンを通して情報発信を行うことで、個人や組織に新しい職場環境づくりを促す。
2.<対象と方法>
実施月:平成30年9月
調査対象:長崎県内150病院
調査方法:調査票を郵送し、同封の返信用封筒やメールで回収。
質問内容:常勤・非常勤医師数、子育て中の医師数、育児休業・介護休業を取得した職員数、職場環境の整備について、ワークライフバランス施策の認識についてなど。
調査票:医師の両立支援状況調査
3.<結果と考察>
配付と回答数(回答率):配付150病院 回答103病院(68.7%)
結果:集計抜粋グラフはこちらをご覧ください。【抜粋グラフ】
【103病院の調査結果】
5年連続で100以上の病院から回答をいただきました。また、窓口担当者のメールアドレスをご登録済みの病院は、昨年度から14病院増え、118病院(登録率79%)となり、メールでの調査票送付や、内容確認、再依頼などが行え、スムーズに業務を遂行できました。例年、お忙しい中ご協力くださることにこの場をお借りして御礼申し上げます。
長崎県内の病院に勤務する女性医師の割合は、最近6年間は22-23%で推移しています。勤務形態は、女性医師の場合、常勤58%、非常勤42%で、昨年度よりわずかに非常勤医師数が増加していました。男性の非常勤も、昨年度18%から21%と増加しました。
小学6年生までの子がいる女性医師は143人で、女性医師全体の23%、医師全体では5%となり、子育て中の女性医師は病院内では依然マイノリティです。
ワークライフバランス施策についての考えでは、ワークライフバランスを重視している46%、トップ主導で推進されている38%と、過去5年間の回答結果の中で最高となり、勤務環境改善の気運の高まりを感じました。しかし施策によるデメリットとして、病院にとって負担が大きいと感じるのは昨年度9%から15%と増加しており、何を負担に感じるのか、理由を検討する必要があると思います。
勤務環境の整備について、仕事と生活の両立ができるように配慮した制度は、時間短縮勤務や呼び出し・当直への配慮など60%以上の病院で導入されていました。施設は、院内保育所あり33%、院内病児保育施設あり5%でした。院内保育所や院内病児保育施設が、今後さらに増えることを期待します。
内閣府が提唱する「働き方改革」を意識した取り組み事例では、「年次有給休暇取得の促進」「会議開始時間の見直し・時間短縮などタイムマネジメント意識の醸成」「業務分掌の見直しやタスクシフティングの推進」などに多くの病院が着手されていました。
「女性活躍推進」を意識した取り組み事例では、「柔軟な勤務体制」「資格取得・研修参加への支援」「保育に係る費用の補助」などが挙がりました。それ以外にも、子育て支援=女性の活躍につながるという事例は複数ありましたが、男性への育児・家事参加の推奨の事例はごくわずかでした。
【医療圏別の女性医師について】
今回の調査で、103病院に勤務する女性医師611名(大学病院を含む)のうち、子育て中(小学6年生までの子がいる)の女性医師は143名(23%)でした。医療圏別に見ると、長崎・西彼医療圏に女性医師は最多の383名(全体63%)が勤務中で、そのうち子育て中の女性医師も98名(26%、全体16%)と最多でした。続いて、県央医療圏に124名の女性医師、うち子育て中は20名(16%)、3番目に多いのは佐世保医療圏で74名の女性医師、うち子育て中は18名(24%)でした。上位3つの医療圏に勤務する女性医師は全体の95%を占め、他の医療圏には約10人未満、県北医療圏には、3年連続で子育て中の女性医師は0人でした。通勤や通学の利便性、教育や保育環境等の整備状況が、子どもがいる女性医師の勤務地に関与し、偏在する理由と考えられますが、院内保育所・院内病児保育施設があれば、子どもが小さい時に離島などで勤務をすることも選択肢のひとつになると思います。引き続き、施設や環境の整備を検討していただければと思います。
調査の貴重なデータは、長崎県の医療のための有意義な情報として活用させていただきます。昨年度の調査結果は、長崎県の医療勤務環境改善セミナー(平成29年度第2回開催)で発表しました。
★「長崎県内病院における医師の両立支援状況」
調査へご協力いただきました病院のみなさま、ありがとうございました。