「女性医師等キャリア支援連絡会議 全国会議」
開催日時/平成30年11月2日(金)13:30~16:00
会 場/東京医科歯科大学M&Dタワー 鈴木章夫記念講堂
主 催/全国医学部長病院長会議
厚生労働省平成30年度女性医師等キャリア支援モデル全国展開事業に採択された一般社団法人全国医学部長病院長会議事務局が主催する「女性医師等キャリア支援連絡会議」の全国会議に長崎大学の代表として南副センター長が参加しました。
<南副センター長所感>
全国医学部長病院長会議(以下AJMC)が、厚生労働省平成30年度女性医師等キャリア支援モデル全国展開事業に採択され、全国における女性医師支援等の取り組みを紹介し、効果的な取り組みの後押しをしていくこととなり、今回、女性医師等キャリア支援連絡会議全国会議が開催されました。長崎大学は、都道府県女性医師等キャリア支援協議会の幹事大学として、長崎県で連絡協議会を開催し、関係機関と意見交換を行うことになります。
会議の冒頭、AJMC山下英俊会長、文部科学省西田憲史高等教育局医学教育課長の挨拶がありました。次に、全国会議開催の趣旨説明をAJMC男女共同参画委員会相原道子委員長が行い、全国の各医療機関において実施されている女性医師等がキャリアと家庭を両立できるような取組を収集・分析し、効果的な支援策の全国展開を支援することで、女性医師等のキャリア支援の充実を図ることが本事業の目的だと話されました。長崎大学病院も、支援してもらえることを期待します。
日本医師会から「女性医師支援センター事業について」の報告がありました。参加者からは、現在関東地区で東京女子医大と連携して行っている再研修事業を、各地区に拡げ、再研修できる施設を設置してほしいという希望が挙がりました。
厚生労働省からは「厚生労働省が取り組む女性医師等勤務環境改善」について説明がありました。平成28年度の調査結果より、20代~40代の子どものいる女性医師は、その他の医師(男性:子どもあり・なし、女性:子どもなし)と比較して勤務時間が短いが、50代以降は勤務時間に大差がなくなること、つまり、子どものいる女性医師は、50代から勤務時間が増加するが、その他の医師は、年代が上がるにつれ勤務時間は短くなったと示されました。これは、病院勤務の医師についての調査結果ですが、子どもの成長とともに、子どものいる女性医師の勤務時間は上昇し、男性医師は、子どもがいてもいなくても、勤務時間に大きな影響が出ていません。子育て期間中は女性の方が往々にして勤務時間の調整をしている結果ではないかと思われました。男性の働き方が変わり、性別役割分担意識がなくなれば、子どものいる女性も働きやすくなると思います。
また、平成29年度の女性医師への調査結果より、仕事を続けるうえで必要な制度や仕組み・支援対策は、第1位が「病児保育」でした。長崎大学でも、院内病児保育施設の設置は、女性医師の悲願でもあります。厚生労働省は、各病院が抱える保育・病児保育の莫大な運用資金に対しても、今後診療報酬改定などで対応していく予定だと話されました。
参加者からは、医学生へのキャリア教育のみではなく、研修医や指導医講習会などでのワークライフバランスの教育を行うべではないかと質問があり、平成32年度には研修医ガイドライン改定が予定されており、その際に考えるとの返答がありました。
その後、基調講演として10年以上女性医師等のキャリア支援の取組を継続している3大学の講演がありました。
◆旭川医科大学 二輪草センター
私たちのセンターの初年度に見学・意見交換をさせていただきました。活動開始とともに、院内24時間保育園を開設、2年後には病児・病後児保育所を開設しています。また、バックアップナースシステムは画期的で、子どもやご家族の急な病気・介護・受診などで休む看護師の代理として、勤務してもらうスタッフで病児保育も担当できるそうです。10年間の活動で、当事者意識が変わり、組織が変わり、育児休業取得者数は増加、女性管理職が増加、女性教員が増加、看護師退職率の低下など、働きやすい環境が整備されているとのことでした。
◆東京女子医科大学 女性医療人キャリア形成センター
「高い知識・技能と病者を癒す心を持った医師の育成を通じて、精神的・経済的に自立し社会に貢献する女性を輩出すること」という建学の精神に基づき、さまざまな支援を行っておられます。日本医師会が連携している、再研修部門も充実しており、メディカル・ワークライフバランスセンターのホームページで東京女子医科大学のe-learningのバナーを設置し、紹介しています。女性の上位職への積極登用、女性科(女性医師(専門医)・女性医療スタッフによる診療・女性特有の疾患に限らない・女性医師を希望する患者の診療が可能)の新設で女性教授を増やし、「ガラスの天井を突き破れ!」と頑張っておられます。女性教員が増えることで、男性中心の運営から新しい変化が期待できます。
◆九州大学 きらめきプロジェクト
九州で最初に活動を開始していますが、もともと女子医学生比率が少なく、現在も教員の女性比率は8%程度と低いそうです。参加者からは、「きらめきプロジェクトのスタッフ枠は、短時間勤務ができるとあるが、男女の賃金格差を生んでしまう懸念があるのではないか」との厳しい質問が挙がりました。長崎大学病院の「復帰医」も、類似の短時間枠で、長期間離職した医師の慣らし復職には好都合ですが、育休明けの復職の場合、社会保障がなく、保育園入所条件もクリアすることが難しくなるという欠点もあります。九州にある各大学の10医学部では独自の女性医師等支援がスタートしており、長崎大学の「あじさいプロジェクト」も、頑張っていると紹介していただきました!
基調講演を拝聴し、長崎大学病院において、これからできることがあると実感しました。司会の東京女子医大医学部長からは、「アジアにおいても、家事・育児を全部抱えている女性医師は日本くらいだ」というコメントがあり、今後、私たちのセンターが行っている両立サポート「長崎医師保育サポートシステム」の拡大が大事ではないかと思いました。