長崎県出前講座「働き方改革が中小企業を救う~ワークライフバランスこそ、生き残り戦略~」に参加しました
2014年8月29日

平成26年長崎県出前講座
「働き方改革が中小企業を救う~ワークライフバランスこそ、生き残り戦略~」
ながさき地域少子化対策強化事業

開催日時/平成26年8月22日(金)10:00~11:30
会  場/長崎商工会議所 2階ホール
主  催/長崎県


講師の渥美由喜さんは、現在東レ経営研究所の研究部長で、ワークライフバランスやダイバーシティ推進企業をサポートしておられるほか、内閣府少子化危機突破タスクフォース政策推進チームリーダーとしても活躍されています。座右の銘は、「市民の三面性=職業人、家庭人、地域人」。講演内容も、いろいろな実体験を交えたお話でした。
2013年3月の長崎市男女共同参画推進センター主催講座でも講演された渥美さんですが、今年は長崎県主催の講座で来崎。今回の講演は、主に中小企業に焦点を当てたものでした。
現在の人口減少社会では、「働き方の見直しなくして、企業の成長なし」と言われるほど、ダイバーシティやワークライフバランスの取り組みは、経営戦略・地域戦略として不可欠なものとなっています。
ただし、「特効薬ではあるが、即効薬ではなく、漢方薬」。このことに気付けるかどうか、日本企業は大きな分岐点に立っています。

<覚えておきたいキーワード>
1.ワークライフバランスとは
「ワーク」の土台が「ライフ」。相乗効果として、質の高い生活が質の高い仕事につながるし、メリハリのある仕事は生活の余裕につながる。ワークのストレスをライフで発散し、ライフのストレスをワークで発散させるという「ストレス相殺効果」もある。従業員の働き方を平準化すれば、時間外は削減できる。
2.中小企業のワークライフバランス
中小企業は、従業員との距離が近いことが強み。従業員とともに課題解決を行うことができ、機動性・柔軟性に富んでいるのも強みとなっている。「トライ・アンド・エラー」を恐れずに行うことが、成功するポイント。
3.中小企業の先進事例
「誰かが職場にいない状態」を当たり前にして、通常の休暇時の対応、突発休暇時の対応を考えて、業務内容を「見える化」する。3Kから「3恵」(従業員満足度、顧客満足度、企業業績の三面で恵まれる職場)へのシフトが、現実に起きている。
4.働く時間や場所に制約がある社員のマネジメント
「貢献なくして支援なし」、「支援は3倍返し」。支援を受けたら周囲に感謝し、次は支援する側に回って3倍返しを。「支援する人」「される人」を固定化させない。それが当たり前となる企業風土づくりが大切。
5.業務改善の考え方
作業後の「振り返り」が大事。時間記録票をつけ、分析し、平準化をすることで業務の効率化を図る。業務状況を見える化し、作業を「マニュアル化」することで、誰でも対応できるようにしておく環境づくりが必要。
6.その業務、時給に見合っていますか
会議コストを見える化(回数×時間×人数)し、無駄を省いてスピード化を図る。時間限定スピーチ(1~5分)を行い、結論→理由の順で話す訓練を。
無駄を取る「やかましい」の手法…やめる、簡単にする、まねをする、してもらう、一緒にする
7.今後、増えるリスク(介護・看護)をどう乗り越えるか
ワークでもライフでも、「良かった」と思える職場環境・生活環境を作る。
 ・会社で働いていて良かった!と思える職場作り
 ・子どもが生まれてきて良かった!と思える環境作り
 ・妻が産んで良かった!と思える環境作り
 ・親が晩年に生きていて良かった!と思える環境作り

<企業子宝率とは?>
実質的な子育てと仕事の両立を示す指標として、渥美さんが提唱した”企業子宝率”。
企業の従業員(男女問わず)が、在職中に持つことが見込まれる子どもの数で、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)を参考にした方法で算出します。
従来のように、子育てしやすい職場になるように計画実行する手法ではなく、企業子宝率の結果から、その高い要因を探し出すという逆の手法で、両立しやすい「職場風土」を目指すものです。
平成23年度に福井県が、県内企業を対象に、全国で初めて調査を実施。子宝率2・0を超えた7事業者を、「子育てモデル企業」に認定しました。
渥美さんは、「中小企業の方が、形式にとらわれず、個別の事情に合わせた柔軟な対応で効果を上げている」という分析結果を、企業事例を交えて紹介されました。

icon_redface.gif早速、私たち長崎大学病院メディカル・ワークライフバランスセンター職員を例に、子宝率を算出してみました。男性職員が0人という特殊な職場環境ではありますが、2・023となり、福井県では表彰される数値が出ました!
みなさんの職場でも、算出してみてはいかがでしょうか?(ネットで「企業子宝率」で検索してみてください)
☆参考(福井県公式ホームページ)
http://www.pref.fukui.lg.jp/doc/rousei/kodakara.html

<感想>
icon_razz.gif今回は、中小企業の生き残り戦略ということでしたが、「企業・会社」を「病院」に変え、「社員」を「病院職員」に変えて考えると、私たちセンターの今後の活動に役に立つ、大事な考え方・手法を教えていただいたと思いました。

icon_smile.gif団塊世代が後期高齢者へ突入する15年から20年後、日本は介護ラッシュとなり、介護と仕事を背負い、身体的・精神的に疲弊する社員は急増することは目に見えています。そうなった時に後悔せぬよう、1日も早くダイバーシティ・ワークライフバランスに取り組むことが不可欠だと痛感しました。そして、このような講演をもっと多くの男性管理職の方々にも聞いていただき、取り組む時期を逃さぬようにしていただきたいと思います。

icon_surprised.gif今回特に印象的だったのは、「中小企業の方が、むしろ柔軟に、働きやすい職場づくりができている」ということでした。ワークライフバランスというと、大企業の取り組みというイメージがありますが、社員の顔が見える中小企業の方が、一人一人の状況に応じて、働き方を調整できている…という事実は新鮮でした。制度だけで、見た目の環境を整えるのではなく、社内風土そのものを変えているというのが興味深かったです。