「ながさき女性活躍推進フォーラム」に参加しました
2015年1月5日

ながさき女性活躍推進フォーラム/ながさき女性活躍推進会議発足式

日 時 : 平成26年12月22日(月)
場 所 :長崎ブリックホール国際会議場ほか

 官民一体で女性の活躍を推進するための「ながさき女性活躍推進会議」が、長崎県で発足しました。同会議の発足に当たり、「ながさき女性活躍推進フォーラム」が開かれ、当センターも参加してきました。

 「ながさき女性活躍推進会議」(https://www.pref.nagasaki.jp/object/event-koza/event/175022.html)は、少子高齢化に伴う急速な人口減少が懸念される中、女性の可能性を開花させ、輝く長崎県を築き上げるための推進母体として発足しました。同会議の企画委員会には、長崎県内の経済団体や企業のトップが参画しており、当センター長でもある伊東昌子・長崎大学男女共同参画推進センター長もメンバーとして入っています。

 フォーラムでは、内閣府男女共同参画局の武川恵子局長と、TOTOの木瀬照雄相談役による基調講演がありました。
 内閣府の武川局長は「女性が輝く社会の実現に向けて」と題して講演。世界における日本、日本における長崎県の、男女共同参画に関するさまざまなデータを示しました。
 長崎県は、有業者に占める女性の割合が全国で5位(45.9%)、管理的職業従事者に占める女性の割合が9位(16.4%)と、比較的上位に位置しています。
 女性の有業率が高いところは出生率が高いこと、女性活躍推進が進む企業あるいはワークライフバランスに取り組む企業は業績が良い傾向にあるということでした。
 国としても「日本再興戦略」推進の一環で、①女性の活躍促進や仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業に対するインセンティブ付与 ②女性のライフステージに対応した活躍支援 ③男女が共に仕事と子育て等を両立できる環境の整備―を政策として掲げ、取り組みを進めているということでした。

 TOTOの木瀬相談役は、「TOTOのダイバーシティの取り組み」をテーマに講演されました。木瀬さんは社長在任時から、「企業理念を正しく理解し行動する」という方針のもと、様々な経営政策を実践してこられました。TOTOの企業理念の一つに「一人ひとりの個性を尊重し、いきいきとした職場を実践します」というものがあります。この理念に通じる「ダイバーシティ(多様性の受容)」の考え方を重点に置いて、人財育成に当たってきたそうです。「これまで、50歳前後の男性の価値観で動いてきたが、均一な思想では、もはや企業は生き残れない。異質な人同士の考え方が響きあうことで、面白いものができる」と木瀬さんは話します。
 ダイバーシティの取り組みの中で目玉となったのが、社長直轄の「きらめき推進室」設置でした。マイノリティである女性の活躍を推進する専門部署で、現在では「ダイバーシティ推進グループ」に業務が引き継がれているそうです。
 「女性の活躍推進は、企業トップの強い意志が必要。制度を作るだけ、ボトムアップだけではうまくいかない」と断言される木瀬さんは、女性の正社員・管理職登用や職域の拡大、営業職への採用比率アップなどを推進。女性社員の能力発揮や意識改革に向けた取り組みを行うことで、男性を含む社員全体の能力向上、顧客への価値向上につながったそうです。現在では、研究開発から営業まで様々な場面において、女性の活躍は当たり前。女性管理職も、100人を超えるまでに増えているとのことです。「良き品質を作る前に、良き人を作るのが理想」という二代目百木社長の言葉を紹介され、会社に脈々と通じる人財育成への思いが伝わってきました。

 お二人の基調講演の後、「活躍する女性の抱負」として、島原市の星野建設建築部の堤香織さん、大村市の九州教具副社長の船橋佐知子さんが抱負を述べられました。
 星野建設では、女性も安心して働ける職場づくりを推進しており、建築士の堤さんら女性社員が、現場でも活躍しているそうです。女性ならではの細やかな配慮が、ものづくりにも生かされ、顧客との打ち合わせでも話が弾むことが多いようです。堤さんは「現場にも出ることで、机上の設計との違いを肌で感じることができた。これからはお客さんと職人さんの気持ちが分かる建築士になりたい」と話されました。
 また、九州教具では、性別や年齢に関係なく立候補で管理職を登用するほか、社員の子育て支援や、女性の職域拡大推進など、先進的な取り組みをされています。船橋副社長は「女性は、共感し寄り添う力があり、男性に対しても様々な気づきを与えている。人生は後ろ歩きで歩んでいるようなもの。先に後ろ向きで歩いている先輩には、後輩の動きがよく見える。不安はあるかもしれないが、先輩が後ろから温かく見守っている。若い人たちも心配せずに歩んでほしい」と語っておられました。

 後半では分科会が開かれ、県内の各分野で活躍する方たちが5つのグループに分かれ、事例報告や意見交換などを行いました。
 このうち、諫早市の湯江タクシー代表取締役・内田輝美さんの分科会では、「『覚悟』と『思い』で社会を変える」をテーマに、お話がありました。
 内田さんは東京の大学に在学していた20歳の時、母親の急逝で、家業のタクシー会社を社長として継ぐことになりました。男性社会のタクシー業界で、若くして女性社長となった内田さん。停滞する業界を変えたいと試行錯誤するものの、周囲から止められることも多く、閉塞感は並大抵ではなかったようです。
 結婚・出産を経て、二児の母となった内田さんは、子どもの送迎が大変なことや、妊婦が安心して移動できない現状に直面。「ドアツードアの公共交通機関はタクシーだけ。安心安全な乗り物として利用してもらいたい」と、子育てタクシー事業に乗り出します。事業のネットワークは全国に広がり、内田さんは全国子育てタクシー協会の会長に就任、現在は顧問として活躍されています。

 そんな内田さんが、輝く女性になるための要素として掲げられたのは、
・あきらめない「覚悟」
・女性目線にこだわってみる
・思い=理念を持つ
・継続するための戦略を持つ(女性は特に、ライフプランを念頭に置く)
・男性の応援部隊を作る
…ということでした。
 最後に、女子学生をはじめとした若い女性に向けて「子育てしながら仕事をするのは大変。でもその先に得られるものはたくさんある。女性ならではの視点を武器にして、ぜひ頑張ってほしい」と、エールを送っておられました。

icon_razz.gif<参加した当センター職員の感想>
◎ 九州教具・船橋副社長の「女性の共感力・しなやかな対応力」という言葉は、とても印象的でした。

◎ フォーラムでは「女性活躍が進む企業ほど企業業績も良い」ということが、グラフからも顕著に表れていて印象深かったです。女性ならではの視点が新しい発想を生んで、企業の推進力につながっていくのだと感じました。

◎ 九州教具・船橋副社長の「自分は後ろ向きに歩いている。先に出発した者として、後輩にいろんなアドバイスができる」という話から、管理職でいろんな経験をされているであろう船橋さんの「後輩を育てたい」という思いが伝わってきました。

◎ TOTO・木瀬さんの講演で「女性活躍推進のための制度改革は最優先ではなく、女性の意識変化後に必要なものを必要なように整備していくことが重要」ということでしたが、まさしく企業・職種などで十人十色、女性の求める支援、活用方法は異なると感じました。また、ボトムアップではなくトップダウンでの取り組みが”コツ”。経営難から脱却するために取り組み始めたという点は、他のワークライフバランス先進企業と同じだと思いました。