「女性の大活躍推進フォーラム」に参加しました
2015年7月21日

女性の大活躍推進フォーラム
「経営戦略としての女性活躍~多様な人材の活躍できる働き方へ~」

開催日時/平成27年7月14日(火)13:50~15:20
会  場/佐賀県立男女共同参画センター(アバンセ)1階ホール
主  催/女性の大活躍推進佐賀県会議、佐賀県

 昨年12月に行われた「ながさき女性活躍推進フォーラム」に続き、佐賀県でも同様のフォーラムがあり、当センターも参加してきました。

 佐賀市で行われた女性の大活躍推進フォーラム内で、株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵氏の講演会が行われ、これからの“働き方”について密度の濃いお話を伺うことができました。
 講師の小室淑恵氏は、これまでに900社以上の企業にコンサルティングを行い、ワーク・ライフバランスの普及に尽力されています。また、ご自身も2児の母として子育てをしながら効率よく短時間で成果を上げる働き方を実践されていて、親族の介護のためにホームヘルパー2級の資格を持ち、仕事と子育て、さらに介護と、まさに現代社会の働き方改善の必要性を身を持って体験されていて、現実味のある表現でお話くださいました。

 フォーラムは、女性の大活躍推進佐賀県会議共同代表の内田健氏と佐賀県知事山口祥義氏の挨拶で始まりました。佐賀県は中小企業や小規模事業者が多く、ワーク・ライフバランスの推進について懸念されていたそうですが、小室氏から小さな企業ほど効果が表れやすいと伺い、講演を楽しみにされていました。

 まず、小室氏の会社のワーク・ライフバランスに関するエピソードを話され、ご自身や女性社員の子育て中の勤務経験から、残業ゼロ、有休消化率の向上などを積極的に取り入れた結果、創業以来、増収増益とのことでした。

 その後、講演は3つのテーマに沿って進んでいきました。

◆テーマ1.日本が女性活躍に本腰を入れた理由
 ハーバード大学のデービット・ブルーム氏が10年前から提唱している人口ボーナス期、人口オーナス期の話があり、現在オーナス期に入っている日本は早急に働き方を変えていかなければならない、そのためには今までとは真逆の働き方(女性の活躍、労働時間の短縮、多様性のある人材確保)に変更していく必要があるとのことでした。タイムリミットとしては、団塊世代が70代に入る2年後と、団塊ジュニア女性の出産があと3~4年くらいなら可能ということで、その2つの時期が目安だということでした。また、晩婚化により育児と介護が重なる可能性が高くなっていることもワーク・ライフバランスの普及を急ぐ要因のひとつということでした。

◆テーマ2.政府の対応
  現在、内閣府男女共同参画局にある「女性の活躍見える化サイト」では、全上場企業(及び未上場の調査協力企業)を対象とした役員・管理職への女性の登用、仕事と生活の両立推進等に関する調査の結果を公表しています。調査に協力した企業の従業員や役員、管理職の女性の比率、女性登用に関する目標の有無、勤続年数、育休や産休取得者数などが掲載されていて、ワーク・ライフバランスを重視しているがどうかが一目でわかるようになっています。
 こうした背景から、先進企業は優秀な人材の確保に向けて「選ばれる会社」になるために、真新しい実績を残すこと、公表できる数値を揃えることに注力しているようです。

◆テーマ3.ワーク・ライフバランスの実践方法

 ワーク・ライフバランスを職場に普及させる具体策として、「朝夜メール*」や「カエル会議*」の導入、管理職の意識改革を促すマネージメント研修、女性に自信を持たせるための女性向け研修などが効果的だということでした。(*は長崎県主催労働セミナー参照)
  また、コンサル事例として、評価基準を期間単位から時間単位に変えたことで、残業なしで業績が上がり、女性の管理職も増え、出産数まで増加したという企業の紹介もありました。

icon_razz.gif<参加した当センター職員の感想>
◎小室氏は、TEDxTokyo2012や国会でもプレゼンされたり、安倍内閣の産業競争力会議でも提言されるほどワーク・ライフバランスの領域で認知度の高い方です。最近では、企業のコンサルタントから、地方創生交付金の影響で行政からのコンサルタント依頼が増え、大変ご活躍されているとのことでした。先日参加した長崎県主催労働セミナーで講演された松久晃士氏の代表取締役社長になります。
 日本全国でコンサルタントしてきた企業の経営転換期の事例と結果を実績とし、個人、企業、国が抱える問題をワーク・ライフバランスの観点からわかりやすく、「感覚ではなく、エビデンスを持って呈示できるようになってきた」とのことで、とても納得し、理解できました。
 働き方の見直し案として、時間や場所の柔軟さを考えて「ワークライフバランス」という新しい報酬を与える、管理職になりたがらない若手男性のために、上司が率先して魅力あるライフスタイルを示したり、育児に参画できる時間帯に退勤させる、時間内で成果のある働き方をして、仕事を「見える化」し、業務を共有するなど、様々なヒントをいただけました。
 ~お知らせ~
・「ゆう活」(政府広報オンライン)・・・政府が国家公務員を対象に始めた取り組み2015年7月~試行
・「女性の活躍見える化サイト」(内閣府男女共同参画局)・・・各企業の現状を投資家、消費者、就活中の学生等から「みえる」ようにし、女性の活躍推進を企業が積極的に行うよう内閣府が設置。

◎日本がなぜ他の先進国と比べて、人口ボーナス期から人口オーナス期へ急速に移行したのか、また、人口オーナス期にどうすれば経済発展できるかを、分かりやすく説明していただきました。
 「残業=会社のため」から「短い時間で効率よく成果を出す」という意識に変えるために、まず、なぜ時間内に仕事ができないかその理由を考えさせると、実は外的要因より内的要因が多かったというお話には耳が痛かったです。知識とスキル不足を時間でカバーしても成長はできないということ、また、人の集中力は起床して13時間までしか持たず、それ以降は酒気帯びと同じ集中力、という言葉が非常に印象に残りました。

◎時間単位で評価されるのは、男性よりも真面目と言われる女性に有利なように感じましたが、女性が自分を過小評価して、自分が上げた成果を素直に受け入れない傾向があるというような話は、とても共感を覚えました。男性はほとんどそのようなことがないということに大変驚かされ、女性躍進の問題はいろんな課題を抱えていると感じました。
 また、晩婚化により育児と介護が重なる可能性が高くなることは意外と盲点になっているように思いました。このようなケースは今後増えると思いますので、やはり早急な対策が必要だと強く感じました。