当センターが7月に実施した学生キャリア講習会を見学された神戸大学医学部附属病院D&Nplusブラッシュアップセンター主催の講演会が開催されるとのことで、参加してきました。
D(ドクター)&N(ナース)plusブラッシュアップセンターとは・・・
「D&Nブラッシュアップセンター」は、平成19年11月1日~平成22年3月31日まで文部科学省のプログラムに採択され、神戸大学医学部附属病院内に開設。平成22年4月1日からは、「D&N plus ブラッシュアップセンター」として妊娠・育児・介護休後に職場復帰を目指す当病院に係る医師・看護師・コメディカルを含む医療職者や事務職員の良きパートナーとして事業を展開している。
2015年 D&Nplusブラッシュアップセンター講演会
神戸大学医学部附属病院 「仕事も家庭も諦めない。そんな医療人・病院組織を目指して」
日時:平成28年1月13日(水) 15:00~16:00
会場:神戸大学医学部附属病院 医学部会館シスメックスホール
はじめに、主催者の錦織千佳子センター長より事業概要やセンター紹介、講師紹介がありました。
講師は、ips細胞を活用した臨床応用のトップバッター高橋政代先生で、ご夫婦共に医師であり、研究者としてまた親としてキャリアを重ねてこられた工夫と方法をお話しになりました。
講演:高橋政代先生
理化学研究所 多細胞システム形成研究センター
網膜再生医療研究開発プロジェクト プロジェクトリーダー
テーマ:「医師として研究者としての子育て期の働き方」
当センターの「輝く卒業生インタビュー」でご紹介している鈴木眞理先生と同じアメリカ・サンディエゴ ソーク研究所で研究員として勤務されていました。その時期は、お子さんが2歳と4歳、パートナーは脳外科医、ということで、まず家族の協力をあてにせず、「保育園とシッターさんとで乗り切る覚悟」をされたそうです。
<印象に残った点>
・子どもの急な病気に備え、仕事に穴をあけられない同僚とチームをつくり、シッター会社に交渉し、月定額でシッターをキープし、病気の際は自宅で看てもらうシステムを考えた。(訪問型・共済型病児保育)5人の女性医師からはじまり、20人弱にまで増えていった。
・男女共同参画におどらされるな(覚悟が必要)
・子育て・家事・仕事を「両立」ではなく、「同等のもの」「プロジェクト」として捉える
・プロジェクトは計画的に(根回しが一番大事)
・洗濯・掃除に愛はいらない(料理は別。どこをアウトソースするか)
・過去→現在→未来という単線的な時間感覚ではなく、abductions=未来を出発点にして現在について考える
・競争のない分野フィールドを探す=ブルー・オーシャン戦略
・境界領域(ダブルメジャー) を目指す
高橋先生の場合:脳研究+眼科医、臨床医+研究者、母親+研究者、基礎+応用
・着手する前に考えること(俯瞰・見通し) 課題、仮設定、軌道修正
<質疑応答>
・ダブルメジャー基礎研究+臨床を目指していると、どちらも中途半端になっている気がする
→メインの土俵はつくる。10年間臨床をやっていないと医師とは言えない
・研修医教育を担当していると課題の設定を悩む医師が多い
→20年あれば何か極められる。若いうちは一生懸命に何事もやり、与えられた仕事をどう楽しく意義を持って取り組むかどうかで、先で何かが見えてくるのではないか。
・(当センターからお尋ね)保育サポートシステムを運営しているが、利用者が増えない
→利便性をアピールし、実例をみせるのが一番。罪の意識から利用を戸惑うのかもしれないが、変われる人、変えられるのに変われない人(変えたくない人)なのかの見極めも必要。
「可能性や未来を想定し、それらとの関係で現在を位置づける」という時間感覚を持つことで、「こうあるべきだ」ではなく「これがだめならこうすればいい」という柔軟な発想ができ、この考え方は家庭生活にも役立つというお話が印象的でした。子育ても仕事も「こうあるべきだ」「こうしなければならない」と考えると行き詰まってしまいますが、高橋先生の考え方をヒントに、広い視野をもって自分作りに励まないといけないと気づかせていただきました。
講演後、D&Nplusブラッシュアップセンターのご厚意により、意見交換のお時間をいただくことができました。
D&Nplusブラッシュアップセンターは、大学病院から少し離れた場所にあり、県の土地に神戸大学が医学部の建物として建築されたそうです。
当センターと対象が異なる部分はありますが、大変有意義な1時間半となりました。
お疲れのところ、ご対応いただきましたコーディネーターの橋本様、ありがとうございました。