2013年11月22日(金)長崎市チトセピアホールでワークライフバランス市民公開講座を開催しました。
事前申込は定員いっぱいの500人、そして当日は、約450人の方にご聴講いただき、世間の関心と佐々木氏の知名度の高さを実感しました。ご来場いただきました皆様、大変ありがとうございました
佐々木氏の物事の捉え方、仕事術、今後の日本の行く末など、とても興味深いお話を伺え、これからの人生のモチベーションが上がるような、心のリフレッシュができた素晴らしい講演でした。
長崎大学病院メディカル・ワークライフバランスセンター 伊東昌子センター長教授による開会の挨拶
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基調講演 「私は仕事も家族もあきらめない」
講 師 株式会社佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表
佐々木 常夫氏
自閉症のご長男を含む3人のお子さんの育児、肝臓病とうつ病を併発した奥様の看病など、家族を必死で支えてきた佐々木さん。大変な家庭環境の中、いかに仕事と両立し、なおかつ成果も残すことができたのか、その秘策を教えてくださいました。
「仕事も家事もすべて計画的戦略的に」行ったという佐々木さん。限られた時間内に成果を出すために、仕事内容は「シンプルをもって秀」とし、資料は最小限、会議は短時間で済ませるように心がけていました。仕事は必ず計画的に、かつ重要度の高い業務から取り組み、デッドラインを決めて追い込んでいくというスタイル。「誰もが仕事と私生活・家庭を充実させたいのが本音。だが、それができない最大の障害の一つが“長時間労働”と“非効率労働”。仕事の成果と長時間労働とは、必ずしも関係ない」といいます。
「ワークライフバランスは、個人も組織も共に成長する経営戦略。仕事の改革は、タイムマネジメントがあってはじめて実現する」といい、「タイムマネジメントとは、最も大事なことは何かを正しくつかむこと。“時間”の管理ではなく、“仕事”の管理だといえる。肝心かなめのことは完璧に、他の仕事は拙速でもよい」と語りました。
育児や介護など、時間に制約を抱える人が増えてきた現在、ワークライフバランスの考え方は一層注目されています。まだ依然として、ホワイトカラーの生産性は「劣悪」だとし、「最短コースで成果を挙げるにはどうしたらいいかを常に考える人と、ずっとダラダラ仕事する人との差は歴然で、とても勝負にならない」と話し、普段からの意識・行動の積み重ねがその後の成長に大きく影響することを伝えました。
「人は自分を磨くために働く。そうすれば、自分が幸せになる。運命を引き受け、頑張らなければ結果は出ない」と、聴衆の方々を激励しました。
<参加者アンケートより感想抜粋>感銘を受けたことば数名分ピックアップ
「運命を引き受けよう」「良い習慣は能力を超える」「愛は責任である」「3年で物事がみえてくる」「ビジネスは予測のゲーム」「自分を磨くために働く=自分が、皆が幸せになる」「きっといい日が来るだろう」
●組織のトップがワークライフバランスを経営戦略と理解し、強い意思を持って行動を起こさなければ前進しない。(30代・団体職員・男性)
●講演を聞いた人が実践に移すことで今回のイベントの狙いは完結します。社会(今回は長崎県)のインフルエンサー(世間に影響力を持つ人)が本日は多く集まっていたと信じています。そのひとりひとりが、各々の組織を変えるきっかけ作りをしてほしい。(30代・会社員・男性)
●仕事のやり方、仕事に対する価値観など佐々木先生の講演に共感できた。共感したのは自分も実践しているから。でも最近それでもうまくいかないことがあって悩んでいたが、今日の講演で勇気をいただいた。これからも続けていきます。(30代・会社員・男性)
●現在組織をあげてワークライフバランスに取り組んでいるところ。職員の意識改革をさらに進めていきたい。(60代以上・医療関係者・女性)
●佐々木常夫さんの講演を長崎で聞くことができるとは思ってもみませんでした。自分の仕事に取り入れられそうなことをやってみようと思います。(30代・会社員・女性)
●仕事の悩みがあったので、吹っ切れた。すごくいいタイミングで講演を聞くことができた。前に進めそうな気がする。(30代・医療関係者・女性)
●今日聞いたお話を「良かった」で終わるのではなく、自分の行動に落とし込むことが大事。(30代・会社員・男性)
●仕事の日々の無駄・やり方について早速考えを実践してみます。佐々木氏のお母様のお話を聞いて自分はまだ甘えているなと反省します。男女がキャリアを積んで尚且つ家庭も円満である社会になるようすべての人の意識改革が必要と思う。特に昭和世代!(20代・団体職員・女性)
●「運命を引き受ける」障害をもつ息子、病気がちの妻、忙しい仕事を持ちながら他人を羨んだり、自分たちの運命を呪ったりせず、きちんと現実と向き合い、どのようにしたら上手くいくか自分で考え行動に移すことができた所がすごい。(50代・主婦・女性)
●淡々とした佐々木氏の言葉に深い魂を感じました。もっとお話を伺いたいです。佐々木氏の実践は本当に素晴らしいと思いました。が、これを実際の医療現場に持ち込むことの難しさも同時に感じました。(50代・医療関係者・女性)
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シンポジウム 「ワークライフバランスで変わる、医療の未来」
登 壇 者 講師/佐々木 常夫氏
長崎県上五島病院病院/八坂貴宏院長
長崎大学病院メディカル・ワークライフバランスセンター/伊東昌子センター長
司 会 KTNテレビ長崎/長岡千夏アナウンサー
過重労働が問題となっている医療分野の働き方を話題に取り上げながら、ワークライフバランス実現の可能性についてパネルディスカッションを行いました。
医療現場においては「人の命を預かる」という使命があり、ワークライフバランスに取り組むには困難な面もあるのではという問いに対し、佐々木さんは「人の命を預かる仕事だからといって、他の仕事と特別に違うということはない。どんな仕事でも、工夫次第で無駄の排除は可能。私が話した効率化の技術は私一人で考え出したものではなく、チームで共有して考え出したもの。医療現場でも、チーム単位で工夫すれば結果は出るはず」と話しました。
ワークライフバランスの取り組みにおける手ごたえや課題について、八坂院長は「スタッフが元気になり、表情が明るくなった。患者さんからも来てよかったと良い印象を持っていただき、好循環が生まれている。課題は、インフラが整っておらず、託児などのサポート体制の整備に当たって、まだ財政面の負担が大きいこと」と語りました。伊東センター長は「昨年は離職した女性医師からの復帰相談が多かった。今年は、出産前の女性医師から仕事の継続についての相談が来るようになった。一方で、ワークライフバランスの実現には同意してくれるものの、まだ他人事のようにとらえている人が少なくない。自己犠牲の上に立って仕事をするという人たちに、考え方を伝えることに困難を感じている」と述べました。
続いて、緊急度の低い軽症の患者さんが、休日や夜間の救急外来を受診する「コンビニ受診」が話題になり、伊東センター長は「24時間いつでも医者が対応してくれるという一部の期待が、医療関係者を疲弊させている。それがまたリスクとして患者さんにも跳ね返ってくるということを理解してもらいたい」と話しました。これに対し、「そのような場合には、治療費を3倍取ったらいいのではないか。何でも簡単に対応しすぎ。医療機関の寛容さに患者も甘えすぎなのでは」と佐々木さんが苦言を呈する場面も。
「いまもって多くの国民の方々は『主治医制』を求めているのが現状だが、ワークライフバランスの実現に向けては、チーム単位で複数の医師がカバーすることが望ましい。どの先生が診ても大丈夫という体制を作れれば、医師も休みやすい。その辺についても市民の皆さんにご理解いただきたい」と八坂院長。チーム医療に対する意識のギャップに対し、佐々木さんは「医療機関から患者さんに根気強く説明していくことが大事なのでは。医師の務めとして単に病気を治すだけでなく、実態を伝え、協力をお願いしていくべきだと思う」と話しました。
最後に一言ずつメッセージを求められ、伊東センター長は「人には時間も能力も限界がある。いかに短時間で成果を出し、プライベートの時間を生み出すかは、あらゆる人にとって重要なこと。仕事も育児も、心から楽しいと言えるような環境づくりをしていきたい」。
八坂院長は「トップが意思をスタッフに伝えていくこと、また、地域の人々にどのような医療を求めているのか聞くことが大事だと思っている。市民の方々にも、医療とどのように関わり合いを持っていけばよいか、ぜひ考えてみていただきたい」。
佐々木さんは「人は何のために働くのか。自分を磨くため、成長するために働いている。もう一つの働く理由は、『世のため人のため』という志。何かに貢献するために働いている。医療に関わる人が、あれだけ過酷な中働いているのは、世の中に貢献しているという気持ちが強いからだと思う。自分が成長し、何かに貢献するために、人は働いている。結局は自己愛であり、自分が幸せになるためにやっているのだと思う」と語りました。
<参加者アンケートより感想抜粋>
●やはり一般企業と病院とでは、ワークライフバランスをやっていくことは違うし、難しいと思う。病院はなんといっても患者さんを第一に考えるので、自分がいくら頑張って仕事を終わらせようと計画していても、できないことばかりだと思う。上五島病院の取り組みを聞かせていただいて、すごく努力されているなと思いました。現場で働いている人の思いをよく汲みとっているなと感動した。(50代・主婦・女性)
●私自身医療関係者ですが、長時間勤務のため体調を崩して休職中です。ケアする立場なのにヘトヘトになって自分自身の栄養・生活面が乱れていく働き方に疑問を抱いていました。予防医学に力を入れ、コミュニティの活用が必要。個人的には、子供が小さい時、家族が病気の時に仕事への不安が大きい。(40代・無職・女性)
●一般企業と医療関係者(特に医師・看護師)のワークライフバランスを一緒に考えるのは難しい。「命」が関わるので、医療界のワークライフバランスの研究が必要。離島医療の現状が知れてよかった。患者の理解や協力は必要だと感じた。(30代・会社員・女性)
●私の職場も以前の上五島病院の現状と同じで、今も全く休みが取れず、病欠したらスタッフ全員の勤務が変更されるので毎日憂鬱でスタッフはいつも辞めたいと考えている。上五島病院ではスタッフの表情が明るくなったと聞いて、自分たちも意識改革をし、スタッフを増やしたら心のゆとりができ、働きやすくなると思った。院長に聞いてほしい講演だった。(50代・医療関係者・女性)
基調講演とシンポジウムの間の休憩中に佐々木氏の書籍販売がありました。
売上金は全額東日本大震災へ寄付されているそうです。
佐々木氏の300冊すべてにサインをされるスピードも速かったですが、
完売になるスピードも圧巻でした
伊東センター長所感
かねてより、佐々木常夫先生の著書を拝読し、ご講演を拝聴する機会がありましたが、是非長崎へお招きし、多くの方に佐々木先生のお話をお聞きいただきたいと思っておりました。このたび、それを実現することができ、大変光栄でした。市民公開講座に多くの方が参加していただき、感動を共有できたことを、心から感謝いたします。
ご講演を拝聴して、佐々木常夫さんの独特の「強さに裏付けられた優しさ」を身近に感じることができました。私が最も印象に残ったのは、タイムマネージメントは時間を管理することではなく、仕事を管理すること、そして「能力の差」よりも「仕事のやり方の差」の方が大きい、ということです。
よいお話を聴いて満足しているだけではだめで、今から実践に移すことが重要だと佐々木先生から教えられました。自分の時間と他人の時間のどちらも尊重することができるワークライフバランスの実現に向けて、自分を磨いていきたいと思いました。