日時: 平成26年10月30日 (木)13:30~15:00
場所: 長崎大学文教キャンパス 総合教育研究棟2階 多目的ホール
講師: 中央大学大学院 戦略経営研究科 佐藤博樹教授
医療従事者の皆さんを対象にした「メディカル・ワークライフバランスセミナー2014」の翌日、講師の佐藤博樹先生(中央大学大学院戦略経営研究科教授)には、長崎大学職員を対象にしたセミナーにもご登壇いただきました。
「管理職のための働き方改革セミナー」は、長崎大学男女共同参画推進センターと、長崎大学病院メディカル・ワークライフバランスセンターの共催で開き、学内の幹部や管理職などが参加しました。
佐藤先生には、「ダイバーシティ・マネジメント~ワークライフバランス支援と女性の活躍の場の拡大~働き方改革が鍵」というテーマでお話しいただきました。
<講演の要旨>
「ダイバーシティ・マネジメント」とは、多様な人材あるいは人材の多様性(ダイバーシティ)を生かせる組織づくりを目指すこと。基本は「適材適所」の考え方でよいが、「適材」と考える従来の人材像の見直しが不可欠。従来の「適材」は、使い勝手のいい人(例えば…日本人・男性・フルタイム勤務・時間制約なし・転勤制約なし…など)だったが、そうした条件に合致する社員は、いまや激減している。これまでの「適材」の枠を変えないと、人材の確保は困難になっている。
ダイバーシティ・マネジメントは、単に多様な人材が配置されていればいい、というものではない。多様な人材が活躍できるような「仕組み」を整備することが基本。多様な人材の中から「適材」を選び、その人たちが活躍できるような組織・風土づくりをしていく。
ワークライフバランス支援では、時間制約のない社員だけでなく、時間制約のある社員も活躍できる組織・職場風土を構築する。人材活用(管理職のマネジメント)の基本は、①社員が自分の担うべき役割を理解 ②社員が自分に期待された役割を実現するために必要な職業能力を保有(不足する場合は能力開発を支援)③社員が高い水準の仕事意欲を持続すること。管理職は、部下に仕事を任せていくのが役割。部下の仕事を上司がやっていたら、本来のマネジメントができなくなる。
最近は社員の価値観やライフスタイルが変化している。仕事以外の生活で、大切にしたいことや、やるべきことのあるワークライフ社員が増えている。過去のように仕事中心のワークワーク社員ばかりではなくなった。上司は、部下が高い意欲を持って働けるように配慮することが、非常に重要になっている。自分の頭で考え仕事することが増えている現在、組織パフォーマンスを上げるためにも、大事なことであると言える。
ワークライフバランスが実現した状態とは、社員が仕事上の責任を果たせると同時に、仕事以外での生活で取り組みたいこと、取り組まなければならないことができている状態。一方で、それらが両立できていない状態がワークライフコンフリクト。後者の状態だと、仕事に意欲的に取り組めなくなってくる。例えば、夫婦で子育てしたい社員の上司が理解してくれないとなれば、ワークライフコンフリクトを起こし、仕事への意欲も低減するだろう。そうなれば上司は、管理職として失格だ。
これからは立場を問わず、時間制約のある社員が増えていく。管理職も例外ではない。時間資源は有限であり、大切に使っていかなければならない。そもそも、制約がなければ工夫しないものだ。時間制約を意識し、時間当たりの生産性を評価することが、効率を高める鍵となってくる。
効果を上げている取り組み例として「週2日定時退社」がある。それぞれの都合に応じて、週2日の割り振りを自由に設定することが可能。毎日誰かが定時退社しなければならないので、夕方の会議がなくなる。定時退社を実現するために、1週間の仕事の段取りを工夫するようになる。定時退社日にさまざまな予定を入れることで、生活全体の充実にもつながる。
管理職の部下への「期待」が、能力の開発機会を左右してしまう傾向がある。例えば、男性の部下に対しては、中期のキャリアを考慮して、能力伸長を期待して仕事を配分することになりがち。一方で、部下が女性だったらどうだろうか?「ピグマリオン効果」「予言の自己成就」などと言われるように、人間は期待された通りの成果を出す傾向がある。先入観をできるだけ排除し、本来のポテンシャルや意欲を見極めていくことが大事だ。
<参加者アンケートより>
今回のセミナーの内容について「大変良かった」66.7%、「よかった」23.8%と、合わせて9割の参加者に評価をいただきました。
(意見の抜粋) ・「時間制約」を前提とした働き方についてのお話が特に興味深かった。管理職だけでなく、職員全体が”時間は有限”と意識することが重要だと改めて気づかされた。
・「“時間を大切に、効率よく仕事をする”ことを考えるようにし向ける」という言葉が心に響きました。