平成27年度「病院管理者と勤務医のためのセミナー」を開催しました
2015年9月11日

平成27年度女性医師の勤務環境の整備に関する病院長、病院開設者・管理者等への講習会の一環として、「病院管理者と勤務医のためのセミナー~医療人(ひと)が集まる病院づくり~」をメインテーマに開催しました。生涯教育講座として、医師会のホームページでも開催告知を行い、テーマに関心を持たれた県内医療機関の病院管理者や勤務医など約40名のみなさんにご参加をいただきました。

日  時:平成27年9月5日(土)午後3時~5時30分
場  所:長崎県医師会館
主  催:長崎県医師会
共  催:日本医師会、長崎大学病院メディカル・ワークライフバランスセンター

司会の瀬戸牧子常任理事からご挨拶がありました。
「女性医師が働きやすい環境を整えることは、全ての医師の勤務環境の改善に必須である、との想いのもと、さらに女性医師の勤務環境の整備を推進していくことを目的に、本講習会は昨年度に引き続き、日本医師会との共催で開催するものです。」

 
↑司会/瀬戸 牧子先生 長崎県医師会 常任理事

①基調講演 15:00~16:00


↑座長/木下 郁夫先生 長崎県医師会 常任理事


テーマ/「医師の勤務環境改善~安全に医療を提供するために」
↑講師/木戸 道子先生 日本赤十字社医療センター 第二産婦人科部長

 講師の木戸道子先生は、東京大学医学部を昭和63年に卒業され、その当時の同級生の女性は3名だったそうです。その後産婦人科医として、研究・臨床に携わりながら、3人のお子さんの子育てをされ、今は月4回ほど夜間勤務も担当しながら前線で働いておられる先生です。21世紀初頭から女性医師支援に取り組まれ、現在は産婦人科領域・医師会・厚生労働省において、女性医師の活躍・勤務環境改善についての委員に多数任命されておられます。
木戸先生ご自身の経験と、周囲の女性医師の状況、産婦人科の状況などから、どうしたら、医師が男女を問わず、イキイキと働けるかについて、具体的なお話をしていただきました。
 勤務先である日赤医療センターの産婦人科が行っている交替勤務制について、「課題はあるが、病院にとっては当直料がなくなり、人件費は削減、業務量は変わらないため収益は上がる、という経営的な視点ではメリットがある。夜間勤務をすることで前後の日勤帯の時間が自由になるメリットもあり、休みをとる気兼ねがなくて済むため、見学に来た学生や研修医にも好評で就職希望者が増えた。」ということで、若い医師の反応も悪くないようです。県内の基幹病院で1つでも取り入れた病院があれば良いのでは。」と勧められました。
 女性医師には、「家庭と仕事だけで手いっぱい、そこそこの器量で満足するマミートラックに陥るリスクがあるので、医療現場で責任のある仕事や院内外の業務の役割を与え、管理業務の経験からリーダーシップを学ぶ、意思決定の場である委員会などに出席してもらいながら、病院に貢献する体験を重ね、いろんな面で一番重要なモチベーションアップを図ることが必要だ。」と話されました。
 日本産婦人科医会では、「女性医師支援情報サイト」Webを利用した支援体制で、婚活~妊活~産後、育児との両立などについて、さまざまなテーマで対処のポイントと先輩の体験談を掲載しているそうです。(リンク許諾済) 「いろんな問題を抱えても、確かな動機・モチベーションをもって進んでいけば、解決する。」と話されました。
 また勤務環境改善については、「まず長時間連続勤務をやめるように努力すること、かつ報酬体系も整えて、医師の疲弊を防ぎ、それが患者さんのためになるのだ。」と話されました。医療機関の勤務環境の改善に役立つ各種情報や医療機関の取組事例が検索できる「いきサポWeb」の紹介もあり、「医師の交代勤務制の導入」で検索をすると、木戸先生の診療科の”取組の概要”や”実施後の成果や見えてきた課題など”を閲覧することができます。「交替勤務制により、救急の受け入れは増加、患者さんからのクレームは減るという良い事例ができた。」と報告されました。(リンク許諾済)

講演後には、県内で内科系当直の変則交替勤務制を取り入れている長崎医療センター江﨑院長など、質問が挙がりました。

②パネルディスカッション 16:00~17:30

テーマ/「ワークライフバランスとキャリア継続を支える病院の役割」
パネリスト/木戸 道子先生(日本赤十字社医療センター)
      江﨑 宏典先生(長崎医療センター 院長)
      兼松 隆之先生(長崎みなとメディカルセンター市民病院 院長)
      早田  宏先生(佐世保市立総合病院 副院長)
      中尾 一彦先生(長崎大学病院 副病院長)
コーディネーター/伊東 昌子(長崎大学ダイバーシティ推進センター 教授(副学長)
                    長崎大学病院メディカル・ワークライフバランスセンター)

長崎県内3大一般病床病院と長崎大学病院の管理者および、木戸道子先生を交えて、ディスカッションを行いました。

はじめにコーディネーターの伊東昌子センター長が、県医師会とメディカル・ワークライフバランスセンターが県内155病院へ6月に施行した「医師のワークライフバランスに関するアンケート」の調査結果を報告しました(女性医師数は年々増加傾向(4人に1人は女性医師)、ワークライフバランスの理念は理解されているものの、その施策・施行については病院にとって負担が大きいと感じる意見が半数あったことから運用の進め方については苦慮されているなど)。

つぎに、各病院の管理者の先生へ”ワークライフバランスは時間に厳しく成果を出す”という基本に沿って、「8分間」で病院紹介をお願いしました。
最後は、木戸先生にご感想をいただきながら、コーディネーターからの質問などを通して、活発な討論が行われました。

<長崎医療センター>
・国立病院機構として在宅勤務制度ができたこと
・研修医を含めた教育に力を入れていること
・女性医師からは病児保育施設のニーズがあったこと
<長崎みなとメディカルセンター市民病院>
・女性のみならず多国籍・ディスアビリティの職員などダイバーシティを受け入れていること
・救急の多い心臓血管内科では当直明けの午後を勤務免除措置をしていること
・病児保育のある院内保育施設を平成28年4月開設すること
<佐世保市立市民病院>
・委員会を統廃合して会議を減らしたこと
・平成28年4月に独立行政法人化し、非公務員型となる予定で、今後柔軟な対応ができること
・院内保育施設を準備する予定であること
<長崎大学病院>
・働きやすい病院の認証“ホスピレート“取得
・子育て中の女性医師は各科で状況はさまざまだが、担当科の母医師は当直免除の代わりに日勤帯の救急業務を担当してもらい、スキルアップをしていること
・関連病院からの要望が高くなってきており、外勤先の医師不足、高齢化により医師が疲弊している問題点があること

などなど、たくさんのアピールがありました。女性医師を含め、すべての医療人が働きやすい病院づくりを、管理職の先生方が一緒にディスカッションする有意義な時間となりました。

icon_idea.gif参加者アンケートでは、「交替勤務制」「当直明けの勤務免除」「チーム主治医制」「病児保育・夜間保育」などが、印象に残った、今後の課題点だと思う、と回答されていました。

<南副センター長所感>
県内3大基幹病院の勤務環境・両立支援メニューの足並みが揃い、どの病院で研修や勤務をしても、働きやすく、キャリア形成ができるように、当センターも頑張っていきます。