2022年12月5日

2021年度からメディカル・ワークライフバランスセンターが始めた「長崎県女性養成医キャリアサポート事業」では、将来長崎県養成医として離島・へき地で勤務するミッションを与えられて入学した、長崎大学医学部・佐賀大学医学部・川崎医科大学の地域枠の女子学生と、自治医科大学の女子学生、初期研修の女性医師を対象に、将来のワークライフバランスに関する不安を減らし、離島医療の魅力・離島の楽しさを感じてミッションコンプリートしてもらうことを目的として、「養成医のワークとライフを聞いてみよう!ロールモデル探し」オンライン会を行っています。

今年度2回目は、内科・小児科と、外科・産婦人科の専攻医の先生にご参加いただき、医学部4・5・6年生と初期研修医の21名を対象として開催しました。11月13日内科・小児科グループには4名、11月27日外科・産婦人科グループには3名の合計7名が参加しました。Zoomを利用して、各グループ120分間、じっくりと専攻医の先生との意見交流会を行いました。

離島での専攻医研修について、初期研修病院選び、専門とする診療科選び、サブスペシャリティのこと、当直や拘束のこと、島外に出かけることができるか、島内での過ごし方、妊娠・出産のタイミング、大学医局への入局、出身大学による違い、義務年限修了後の働き方についてなど、専攻医の先生よりご自身の経験や周囲の女性医師・男性医師の状況を交えながら答えていただき、離島での診療のなかで、内科・小児科は専門医取得に必要な症例はおおむね経験できること、外科・産婦人科は本土での研修が必要であること、診療科によって学会発表や論文が必須であることを知りました。また対馬・上五島のどちらの病院も全科当直で、緊張感を持ちながら経験を積んでいけること、どちらの病院も女性医師が増えており、それによる楽しさも増えていることがわかりました。

センターからは、マタニティ白衣貸出事業から判明した女性医師の貸出時(妊娠)年齢の最新版、研修医・専攻医期間中に認められている休暇について、養成医の育休取得・短時間勤務と義務の延長についての情報を提供しました。
第2回は、年齢も近い専攻医の先生との対話で、参加者は、将来のキャリアプランのヒントになった様子でした。

 

【アンケートから抜粋】
<今のお気持ちをお聞かせください>上位3つ、複数回答あり
・卒業後の働き方の参考にしたい     6人
・診療科選択の参考にしたい       5人
・専攻医登録/専門医取得の参考にしたい 5人
・離島勤務のイメージが明確になった   4人

<将来考えている診療科を2つ教えてください>
・内科     6人
・産婦人科   5人
・外科     1人
・小児科    1人
・総合診療科  1人

<学生の感想>
・いつも先輩医師の経験が聞けてとても参考になります。
・将来の参考になりました!ありがとうございました!
・初期研修後の島での働き方を少しイメージすることができました。島は十分自己研鑽できる環境であることが知れました。自分の意欲を持って学びたいと思います。結婚・妊娠出産・育児などと両立ができる環境であること伝えていただきいつも安心感を感じます。
・今回は学年の近い先生方のお話が聞けて前回とは、また違ったお話を聞くことができて良かったです。
・様々な科の専門医の先生方とお話できて、またいろいろな制度について教えていただき、非常にためになりました。
・少人数で気軽にお話しさせていただくことができて良かったです。
・妊娠、出産の時期などに関して聞けて良かったです。また、産婦人科専門医取得までの流れを知れて良かったです。
 

  

↑先輩医師のご紹介      ↑参加者アンケート結果(クリックください)

<先輩医師の感想>
・①グループに参加 瀬戸牧子先生
回を重ねるにしたがって、地域での研修の不安、問題点が浮き彫りになり、そして解決の方向が見えてくるような会で、とても心強く思っています。今後、地域での指導者の育成がさらに大きな問題になってくるようですね。いつもお伝えしていますが「地域枠の医師は、地域の宝」です。頑張って下さい。
・①グループに参加
参考になるようなお話ができたり、できなかったりはありますが、楽しくいつも参加しています。私自身も先輩医師の皆さんのお話を参考にしており、その時々で気になることや聞きたいことは変動していくものなので、今後もこの会は続いて欲しいなと思います。

2022年10月11日

「医師としてのキャリア継続のため、ワークライフバランスの考え方を知るとともに、医師としての多様な生き方を学ぶ」ことを目的として取り組みました。昨年同様、感染対策を講じて対面で行いました。
日 時:2022年9月30日(金)8:50~16:20
対 象:長崎大学医学部医学科3年生(男性85名、女性39名 合計124名)の「医と社会」教育の一環で実施。

<ロールモデル医師の講演①>

・ミネソタ大学 糖尿病・内分泌代謝部門 Assistant Professor 荒木 貴子 先生
「アメリカ臨床留学から研究室立ち上げそして子育てまで」
臨床留学のきっかけ、生涯のメンターとの出会い、下垂体専門分野を極める決意とチャレンジ精神、シングルママとして双子の子育てとキャリアの両立方法などについて話しました。「男性だから、女性だからとリミットを作らないこと、ダメかな~とは考えずにどんどん挑戦してほしい。医学部3年生の頃は自身も道に迷っていて、今の立場を全く想像もできていなかったので、皆さんの可能性は多様にある。」とのメッセージを贈りました。学生さんには受講前に「輝く卒業生インタビュー」を読んでもらいました。ご縁を手繰り寄せる力をお持ちの荒木先生に、既に数名の学生さんからコンタクトがあったそうです。

<ワークライフバランス講義>

長崎大学 理事(学生担当・国際担当) 伊東 昌子 先生
「多様性の尊重とキャリア形成について考える~無意識の偏見~」
伊東先生の医師としての研究テーマ「骨粗鬆症」について、マイクロCT画像の説明は学生の目を惹きつけました。いわゆる男社会の中で臨床・研究を学び、地位を確立された伊東先生の自己紹介は、様々な選択と覚悟の積み重ねがあったことが感じ取れました(アカデミックキャリアアップへのアドバイス参照)。「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)は、だれもが持っていること、これを意識することで社会生活が変わってくることを学び、認識してほしい。」と話しました。また、アンコンシャスバイアスの解決法として「心理的安全性」という考え方があることを紹介しました。

<メディカル・ワークライフバランスセンターの取組紹介>

長崎大学病院メディカル・ワークライフバランスセンター 副センター長 南 貴子 先生
「メディカル・ワークライフバランスセンターの取組紹介」
南先生よりセンターの「私たちのワークライフバランス実践術」「輝く卒業生インタビュー」「育休取得者へのキャリアコンサルティング」「マタニティ白衣の貸出」「復職&リフレッシュトレーニング」「長崎医師保育サポートシステム」「研修病院ワークライフバランス推進員との連携」等々の取り組みを紹介しました。
また、南先生のキャリア年表を示し、「道のりも歩むスピードも多種多様。子どもを授かった時の相談や介護相談もできるので、両立に悩んだ際はセンターへ相談してほしい。」と話しました。

<グループ討論>
仕事と育児の両立を目指す共働き医師が、問題に直面した時にどのように解決していくかを、グループに分かれて討論しました。
 
 
↑ワークの様子            ↑好評だった「医師会スイーツ」

<医師会の取組紹介>

長崎県医師会 常任理事 瀬戸 牧子 先生
「国の予算から社会保障の財源を獲得しようにも医療系の議員が少ない現状では充実が見込めない。医師会の取り組みは多岐に渡っていることをもっと多くの人に知ってもらい、若い先生方には男性も女性も関係なく分科会など身近なところから医師会の役割に関与してほしい。」と話しました。
※会場で配布:日本医師会発行「ドクタラーゼ別冊~医師会のことをもっとよく知ってもらうために~」
※「ドクタラーゼNO.43」2022.10発行分に、長崎大学理事 伊東 昌子 先生が掲載。

<発表と先輩医師からのアドバイス>
事例毎に、12グループが発表しました。うち2グループには3年ぶりにロールプレイング発表をしてもらいました。

ワークライフバランス推進員などの先輩医師から、貴重なご意見を聴かせていただきました。
 
消化器内科 田渕 真惟子 先生     腫瘍外科 田中 彩 先生

 
皮膚科 服部 尚子 先生        麻酔科 吉﨑 真依 先生
 
心臓血管外科 田口 駿介 先生     医療教育開発センター 松島 加代子 先生

<ロールモデル医師の講演②>

・長崎大学病院 血液内科 助教 佐藤 信也 先生
「私のメディカルワークライフバランス~無理なく共働きを続けるために~」
佐藤先生が「自分、家事や子育て手伝ってる方だよね。何パーセントくらいかな?」とパートナーに尋ねたところ「0%!
」との返事で驚いた会話の紹介があり、夫婦の家事・育児に対する意識のズレを無くすこと「男性は特に手伝っているという発想はおかしい」ことに気づき、家事・育児の分担を明確にする、コミュニケーションを図る、利用できるサービスは積極的に受けるようにアドバイスしました。

<ロールモデル医師の講演③>

・長崎大学病院 循環器内科 医員 黒部 昌也 先生
「卒後13年目医師が思うワーク&ライフに大切なこと5選」
①仲間を作る→自分の思いを表現しきちんと伝える事ができる環境・信頼できる人を増やす②きちんと断る→安請け合いはせず
自分の担当業務に支障が出そうな時は、中途半端な関わりで逆に迷惑をかけないように勇気を持って断り、代替案を出す③料理を作る→家族の行動や健康状態など家庭全体を把握しやすい④スイミングスクールに通う→父担当枠で送迎を行い父と子の関係づくり、仕事と別の居場所を持つ⑤育休を取る→ライフイベントで家族一緒に変化する、家事・育児の目線を合わせる、仕事の任せ方を学ぶ、職場の組織力があがる、家庭・仲間へ貢献したいと思える、など黒部先生の実体験からわかりやすく話しました。

icon_exclaim.gifその他、グーグルフォームによる「講義前後アンケート」の実施や「キャリア&ライフ未来年表」の作成など、盛りだくさんのキャリア講習会でした。

<講義前後アンケートの集計結果抜粋>
●2022年度の受講予定者124名(男性85名、女性39名(女性の割合31%))のうち、アンケート回答者は、講義前101名、講義後107名でした。「ワークライフバランス」の言葉も内容も知っている割合は70%で、3年連続過去最多を更新しており、年々関心が高まっているといえます。
●現時点での将来の不安については「不安がある」割合が講義前56%→講義後44%で講義前に比べると減少しています。また、講義後に「講義前と比べて不安が減った・不安がなくなった」と回答した割合は59%で、学生の半数以上は、不安を抱えながらも本講義で不安を軽減できたようです。将来に対する不安の内容(複数選択)で一番多いのは、「勤務地」が18%、次に「キャリア形成」と「仕事と生活の両立」が共に16%、「診療科の選択」が15%で続きました。
「産休」「育休」の言葉はそれぞれほぼ100%の割合で認知され、男性も育休を取ることができると知っている学生も99%と高い割合でした。講義後の「自分も育休を取ってみたい」学生の割合は95%(男性95%、女性97%)でした。講義を受ける前から、育休取得を考える学生が性別を問わず年々増えています。
●将来の進路を決定する時に重視するもの(3つまで選択)のランキングは、講義前:1位「仕事の内容」2位「雰囲気の良い科」3位「その領域の研究に興味がある」、講義後:1位「仕事の内容」2位「雰囲気の良い科」3位「希望するライフスタイルが得られる」でした。講義後は、仕事と生活の両立を重視する学生が増えました。
●仕事と生活の両立については、講義の前後で「できる」前10%→後20%、「なんとかできそう」前56%→後69%へと増加して、講義後の両立への自信は89%と高い割合に到達しました。「できない」「わからない」の割合はいずれも講義後に減少し、また、「今回の講義が将来役に立ちそうだ」と答えた学生は96%となり、講義の意義があったと感じました。

<学生の感想抜粋>
◎医療関係はどうしても多忙でパートナーへの負担が大きい職業であると偏見を持っていたが、いまはワークライフバランスを重視した将来に期待できるようになった。
◎男性だからとか女性だからという考えがなくなってきている(そういう人もまだいるが)という現状があることがすごく良いことだと思う。僕も将来パートナーと協力して仕事と家庭の両立ができればと思う。
◎医者として働いている先輩方も周囲の人に助けられて仕事と家庭を両立させているとわかった。今回の講義が聞けて良かった。
◎ワークライフバランスについて考える機会はこれまでも何度かあったが、今回ほど現実的なのは初めてだった。特にロールモデルとなる先生のお話を聞けたことはとても良かった。
◎長崎大学はいろいろな先生方が仕事と家庭を両立していて凄く良い環境だなと思った。ただ、自分は実家の都合上、福岡に帰らないといけないので福岡ではどこの病院がワークライフバランスを重視しているのかネットで調べようと思ったが、正直どこの病院がどの感じなのかを自分だけで把握するのは大変でできるかどうかには不安が残る。
◎特に男性は取りにくいイメージのあった育休であったが自分の生活のためにも必要であり、また取りやすくなってきていることがわかりとても安心した。
◎人のためを思う医師といえども自分たちの生活は大切にしなければと思った。
◎様々な先生のお話を聞くことが出来たので、より具体的に自分の将来を考えることが出来た。グループワークでは、同じ症例でも自分とは違った視点の問題点が出てきたので、面白かった。
◎仕事の話を聞く機会は今までもあったが、医師のプライベートの話を聞ける機会は今までなかなかなかった。将来を考えるきっかけになったと思う。
◎実際に子育てをされている先生方のお話がリアルでとても身にしみた。たくさんの先生のお話が聞けて良かった。
◎ワークライフバランスの考え方を、実際の医師の方々の実体験を交えながら学ぶことができた。今日の授業まで、こうしたことは考えていなかったので、これから少しづつ考えていけると良い。
◎キャリアプランをしっかり考えた経験が乏しかったので、改めて考えてみて、将来について何も考えてなかったことに気付かされ、不安が増したので、これからしっかり考えようと思う。


講義前後アンケート集計結果抜粋グラフ

<先輩医師のコメント>
●消化器内科 田渕 真惟子 先生
久しぶりに病院実習前の医学部学生さん達のお顔を拝見いたしました。皆さん、お若いにも関わらず、メディカル・ワークライフバランスセンターから出された絶妙に際どい難問に真摯に向き合っている姿に、とても感銘を受けました。子育てや仕事は私自身、ぶち当たって初めてその困難さに気づいたような未熟者ですので、皆さんの他人事ではない、かつ悲観的でもない前向きな意見が羨ましくも感じました。医療と私生活の両立は困難な道であることも間違いありませんが、これからの医療を支える若い力に期待したいと思います。
●腫瘍外科 田中 彩 先生
これから数年後には医師になる皆さんが、今どのように働き方について考えているのか、知ることができて、とても面白かったです。「両親を頼る」という選択をするグループが多いように感じましたが、両親には両親の生活がありますし、いつも元気というわけではありません。体調の悪い子どもを預けるのは、うつしてしまうリスクもあるし、元気のある子どもよりも責任を重く感じさせてしまうので申し訳ないと私は思っています。適度に一緒に育児を楽しんでもらえたらという距離感でいられる方が良いのではないかなと思いました。長崎には小児科併設の病児保育施設や、大学病院の病児保育施設「にじいろ」がありますので、そのようなサポートを活用するのも良いのではと思います。また、「環境が変わるのは子どもにも良くない」と、アフリカや関東への引っ越しをしないという選択をするグループがありましたが、環境が変わっても、家族一緒に過ごせる時間は貴重ですし、子どもは意外と強いかなと思います。特に共働きをしていると、自分が育児をできる時間は、本当にあっという間に過ぎると実感しています。振り返ればきっと良い思い出です。自分のキャリアも大事にしつつ、自分の周りの人や子どもを大切にできるように、一緒に頑張っていきましょう。
●皮膚科 服部 尚子 先生
与えられたケースに対する短期的・長期的な対策や、それぞれの結論が、とても現実味を持っていて驚きました。皆さんの回答から学ぶことも多くあり、有意義な時間を過ごさせていただきました。また「キャリアを諦めない」選択をされている方が多く、意識の高さも感じました。現実的には、どこかの段階で何かしら手放さないといけないものや諦めないといけないものも出てくるかと思うのですが、今回のように想像力をはたらかせて、自分や家族にとって何が一番重要なのか、大切なのかを見極めながら進んでいただければと思います。
●麻酔科 吉﨑 真依 先生
とても印象的だったのは、いずれのシナリオにおいても、家族という設定の中で誰かが我慢しないといけないということではなく、お互いの仕事や考えを尊重しながら、その中でどうすればうまくいくか、ということに多くの学生さんが重点を置いていたことです。家庭も仕事も周りの協力がなければ成り立たず、周りに感謝しつつ、お互いに尊敬しあうということが大切だと思います。今だからこそそのように思えますが、自分が学生の頃にはそこまで深く考えることはできていませんでした。今回の発表を聞かせていただいて、ただただ素晴らしいなあと感銘を受けました。
●心臓血管外科 田口 駿介 先生
私自身が大学生の頃はワークライフバランスのことについて考えることがほとんどなく、正直なところ、心臓血管外科に進み、仕事第一で家庭のことをはじめ、私生活のことは二の次だろう、などと考えていました。しかし、実際に結婚し子どもを持つと考え方が変化してきました。今回の講習会に参加させていただき、学生さん達の意識の高さに驚かされるとともに、これからの時代はワークライフバランスが重要な鍵を握っているなと改めて感じました。皆で気持ちよく仕事をしていくために少しでも出来る事はないかと日々模索していきたいと思いました。ありがとうございました。
●医療教育開発センター 松島 加代子 先生
育休はもちろんのこと、院内外で利用できるサポートシステムを学生さん達が詳細を発表しており、メディカル・ワークライフバランスセンターの取り組みが認知されてきていることを嬉しく思いました。長崎の医療機関の良いところは、どこへ行っても顔の見える関係で繋がりをもってワークライフ支援を受けられるという点です。ぜひ、学生のうちに、長崎の良い部分を吸収し、広い視点を持って積極的に実践する力を養ってください。そうすれば、将来どこに行こうとも、柔軟に対応できると思います。また、今後のキャリアのなかで誰にでも、体力的、時間的、経済的…様々な理由で、凹凸が生まれると思います。そんななかでもお互いを思いやり協調しながら豊かなワーク&ライフを過ごしてほしいと思っています。いつでも頼って来てくださいね。

icon_redface.gif南 貴子 副センター長 所感
今回初めての試みとなりましたが、アメリカ在住で長崎大学医学部の先輩医師・荒木貴子先生にご講演いただき、時差10時間(夏時間)のミネソタとZoomを利用して直接質疑応答する時間を設けました。朝一番の講義でしたが、学生の皆さんは、荒木先生のパワフルで波乱万丈のキャリアを熱心に聴いていました。自分の「諦めたくないこと」を定めて、どんな手段を使っても諦めないという、強い姿勢に影響を受けた学生さんが多かったと思います。グループワークでの発表では、子育て支援にシッターさんを利用するという選択肢が多くみられ、講義後の未来年表には、これまでより多い20数名の学生さんが「海外留学」の希望を書いていました。荒木先生にはロールモデル医師として、非常に良い刺激を与えていただきました。また、佐藤先生、黒部先生の男性医師お二人は、パートナーのキャリアを尊重しながら、自分の仕事と家庭生活を両立させるために、どのように工夫しているかをお話しいただき、学生さんに夫・父親としての新たな一面を見せていただきました。
来年度も、インフルエンサーとなるロールモデルに登場してもらえるように、準備したいと思います。

2022年7月1日

センターでは、医師のキャリア形成・継続のサポートをするために、医学生や研修医等、若い世代を対象として「医師のワークとライフをきいてみよう!ロールモデル探し」と題し、現役で活躍されている医師と若い世代が交流できる身近な意見交換会をセンター開設当初より不定期で開催しています。

2021年度より、将来長崎県養成医として離島・へき地で勤務するミッションを与えられて入学した、長崎大学医学部・佐賀大学医学部・川崎医科大学の地域枠の女子学生と、自治医科大学の女子学生、初期研修の女性医師を対象に、将来のワークライフバランスに関する不安を減らし、離島医療の魅力・離島の楽しさを感じてミッションコンプリートしてもらうことを目的として「養成医のワークとライフを聞いてみよう!ロールモデル探し」のオンライン会を行っています。

今年2年目となる第1回は、対象の46名の女子学生のうち38名、女性研修医3名の合計41名が参加しました。
先輩医師として、3名の養成医の先生が新しく加わり、また養成医ではないですが、離島勤務歴のある総合診療科の先生を含め、先輩医師13名体制で本会をサポートしていただきました。

Zoomを利用して、各6グループが約90分間の意見交換会を行いました。
パートナーとの出会いから結婚・妊娠・出産・育児休業・子育てのこと、研修病院選び、離島診療、専門医取得、医局入局についてなど、義務年限中に想定される内容の質問に対して、先輩医師よりご自身の経験や周囲の女性医師の状況を交えながら、丁寧に答えていただきました。
印象的な話題は、離島で働く男性医師は、単身赴任であるケースが多く、子どもの進学で家族と離れて暮らすと大変そうであること、幼い子どもがいる女性医師の多くは、育児短時間勤務制度を利用して仕事と生活を両立していること、結婚協定※で義務を果たしている自治医大卒の夫婦が、育児休業を双方が取得することで異動のタイミングを調整したこと、以前は対馬から韓国へ気軽に焼肉を食べに行っていたこと、上五島病院には、多職種の職員で結成されたバンド(バンド名:のぼせもん)があり、院長・副院長も参加していることなど、興味深いお話がたくさんありました。※結婚協定・・・自治医科大の卒業生同士が結婚した場合の取り決め

センターからは、あじさいプロジェクト活動で把握しているデータを共有して、マタニティ白衣貸出事業から判明した女性医師の貸出時(妊娠)年齢、長崎大学病院で活躍中の義務年限を修了した医師、長崎県病院企業団の子育て支援状況などを紹介しました。
 

【アンケートから抜粋】
<今のお気持ちをお聞かせください>上位3つ、複数回答あり
・キャリア形成(診療科の選択や専門医取得など)の参考にしたい 28人
・共働きするには、パートナーの理解と協力が必要だと感じた   26人
・ワークとライフを両立するイメージが明確になった       23人
・不安な気持ちを相談できる部署があって安心した        18人
・様々な働き方をしながら医師を辞めずに継続できそう      17人

<将来考えている診療科を2つ教えてください>
・内科     21人
・総合診療科  19人
・小児科    12人
・産婦人科   10人
・外科     7人
・整形外科   5人
・眼科     1人

<学生の感想>
・将来のことについてお話を聞くことができて、参考にもなりましたし、これからの学生生活の勉強などのモチベーションにもつながりました。
・自分の人生設計の参考になりました。「学生時代の計画とは全く違う生活をしている」というお話を聞けて少し安心しました
・この会を通して、女性医師の日々の仕事のことや子育てのことなど、貴重なお話を聞くことができ、毎回楽しみにしていました。今回も、先生方のお話を聞くことができ、さらに将来についてのイメージが膨らみました。 毎年、質問したいことなど変わってくるので、また次回も参加できることを楽しみにしています。
・女性の先生方や、自分と同じように学生生活を送っている女性の方と、女性のみの空間でお話を聞かせていただく機会はなかなかないので、妊娠・出産やパートナーのことなどについて、詳しく様々なことをお聞きできて、非常に参考になりました
プライベートでB枠であることを後悔するような出来事があったばかりだったので、「養成医は地域の宝である」とのお言葉に救われました。将来に希望を持ってこの先実習や勉学に取り組んでいきたいです。
・養成医の先生方が医師としてもひとりの人間としても、充実した生活を送られていることが伝わりました。養成医への道に誇りをもって、前向きに頑張れそうです

  

↑先輩医師のご紹介    ↑参加者アンケート結果(クリックください)

<先輩医師の感想>
・①グループに参加
Zoomを用いての会は初めてでしたので、上手くお話できたかわかりませんが、少しでも学生さんのモチベーションアップにつながれば幸いです。また、私の方も先生方のお話が聞けて良かったです。
・①⑥グループに参加
ロールモデル探しの会、私も楽しく参加させていただきました。長崎県医師会常任理事 瀬戸牧子先生の「養成医は地域の宝」と言う言葉が響きました。私も宝である若い先生たちを離島に送り出し、バックアップしていけるよう微力ながら頑張ります。
・②グループに参加
へき地医療に携わる事で、キャリア形成に時間がかかる事は事実ですが、へき地医療に携わる事で、やりたい事が見つかる時もあります。そして、いくつになっても、子育て中であろうとも、やる気さえあれば、何でもできる!という事を気づいていただきたいです。
・⑤グループに参加
この会を通して私自身も色々な発見があり、モチベーションアップに繋がっています。今後も継続していただけたらありがたいです。

icon_razz.gif今回も大変有意義な会になりました。参加した自治医科大学の学生より「他県の同級生に聞いても、このような取り組みをしているのは長崎県だけで、有り難く思います。」との発言があり、開催を企画して本当に良かったと感じました。本会の参加者の皆さんが、少しでも将来への不安が和らいで、離島勤務にやりがいを感じながら、安心できる離島生活が豊かなものとなるように、センターでは引き続き支援を行いたいと考えます。

2021年11月30日

 センターでは、医師のキャリア形成・継続のサポートをするために、医学生や研修医等、若い世代を対象として「医師のワークとライフをきいてみよう!ロールモデル探し」と題し、現役で活躍されている医師と若い世代が交流できる身近な意見交換会をセンター開設当初より不定期で開催しています。

 2021年度は、将来長崎県養成医として離島・へき地で勤務する義務を持つ、長崎大学医学部・佐賀大学医学部・川崎医科大学の地域枠の女子学生と、自治医科大学の女子学生、初期研修の女性医師を対象に、将来のワークライフバランスに関する不安を軽減する目的で、「養成医のワークとライフを聞いてみよう!ロールモデル探し」と題して、オンライン会を2回行いました。

 第2回は、11月23日(火・祝)27日(土)28日(日)の3日程で開催しました。参加者は学生32名(参加率82%)で、先輩医師11名と長崎県医師会常任理事 瀬戸牧子先生のご協力を得ました。 
 今回は、学生が検討している診療科について考えることをテーマとして、「小児科」「産婦人科」「内科」「外科」「整形外科」の5診療科の先輩医師と学生をグループ分けし、各グループ90分間を目処にZoomを用いたオンライン会で意見交流しました。まず、センターより11月に行った「育児休業を取得したことがある女性医師へのWebアンケート調査」の結果報告と、参加の学生が将来勤務する可能性のある長崎県病院企業団の主な関連病院の子育てとの両立支援環境をお知らせしました。
 

 先輩医師からは、今の診療科を選んだ理由、思い出深い出来事や症例、離島・へき地での診療科の特徴や、勤務環境、当直・拘束について、さらに、パートナーとの出会いや、離島・へき地での子育てについても話してもらいました。その後に、学生から診療科のこと、研修先選び、専門医受験のタイミング、年限明けのこと、プライベートな時間の確保、子育てとの両立について以外にも、様々な質問が挙がりました。
icon_arrow.gifグループ①「小児科」
 ・育休期間はブランクではなく、家族と一緒に過ごせる大事な時間であり、医師としても良い経験になる
 ・対馬のお魚は本当に美味しい
icon_arrow.gifグループ②「内科・整形外科」
 ・島はどの診療科の医師でも、当直時は受診する様々な症例をすべてを診る
 ・学生の時には「英語」の勉強をしておくと後で必ず役立つ
 ・「産業医」「スポーツドクター」資格取得の話
icon_arrow.gifグループ③「内科」
 ・パートナーとの家事・育児分担の話
 ・総合診療医や離島でのプライマリケアの話
icon_arrow.gifグループ④「外科・産婦人科」
 ・女性外科医として体力面について
 ・病棟実習では医療面接、コミュニケーションの技術を磨いて欲しい
 ・「ユマニチュード」ケアメソッドの紹介
icon_arrow.gifグループ⑤「産婦人科」
 ・島の学校に赴き性教育の講演を行っている
 ・学会はオンライン配信が進み、遠方でも参加しやすくなった
 ・イノシシにぶつかって廃車になった話
 ・大人の女性として、避妊や計画的妊娠を考えよう

【アンケートから抜粋】
<今のお気持ちをお聞かせください>上位3つ、複数回答あり
・キャリア形成(診療科の選択や専門医取得など)の参考にしたい 30人
・様々な働き方をしながら医師を辞めずに継続できそう      19人
・ワークとライフを両立するイメージが明確になった       17人
・不安な気持ちを相談できる部署があって安心した        14人

<学生の感想>
・卒業を控えて将来の働き方や出産育児、産休や育休をどうするか、友人達とも悩むことが多い時期だったので、すごく参考になった。使える制度や支援があると知って安心した。また、産休や育休もブランクではなく、子どもと関わってとても重要な時間というお話を聞いて、将来育休をとることに対しての不安が減った。
・どのようにして専門科を決めたかや研修医のときに取っておいてよかった資格などを聞くことができて、とても有意義な時間になりました。ありがとうございました。
・実際に内科で働いておられる様々な立場の先生方に多くのお話を聞かせていただき、とても参考になりました。また、いろいろな病院で働いておられる先生方だったので、今後病院見学や実際に勤務することになった時に、知っている先生方がおられるということはとても有難いことだし安心できると思いました。

↑先輩医師のご紹介       ↑参加者アンケート結果(クリックください)

<先輩医師の感想>
・学生さん方が、地域で働くことや進路に関して不安も期待もありつつ真剣に考えていることが伝わってきて、私も楽しく過ごせました。
・学生さんが真剣に、時には頷きながら、意見を聞いてくださって嬉しかったです。低学年にも関わらず、将来を見据えた質問をされ、非常に頼もしく感じました。
・産・育休中にも関わらず、このような機会をくださり本当にありがとうございました。休みの間、働いている同僚や世間へ申し訳ない気持ちがずっとありましたので少しでもお役に立てる機会をいただけて嬉しかったです。参加された方々に対馬の魅力を知っていただけてとても嬉しいです。
・第1回に比して、学生さんからもより深い内容のご質問をいただき充実した時間となりました。自分が学生時代に同じように考えていたことを学生さんたちも考え悩んでおり、このような機会をいただいたことで自分自身も振り返るきっかけとなりました。
・急患対応で参加が遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした。まだ若輩の身ですが、これからの先生たちの参考になれば幸いです。
・学生のみなさんの考えや先生方のお話を聞くことができて、楽しい時間でした。私が1、2年生の頃は、まだ基礎の解剖や生理学等の授業しかあっていなかったと記憶しますし、何科になりたい、将来どこで働きたい等何にも考えていなかったように思います。今回1、2年生のみなさんも、漠然とでも将来のことや、働く面での不安なことを考えていることがわかりました。養成医の実際についてや、大学病院での話が出ましたので、少しでも参考になればいいなあと思いました。5、6年生のみなさんからはより具体的な質問があり、将来をきちんと見据えていることを感じました。みなさんと病院見学や研修で会えるのを楽しみにしています。

icon_razz.gif初年度となる本会に、2回とも参加した学生は73%でした。その中でも、6年生は数か月後には研修が始まるとのことで、緊張感も感じられました。医学生の今も、卒業して養成医になった将来も、いつでもセンターが仕事と生活の両立に悩んだ時の相談窓口であることを学生へお伝えしました。6年生のキャリア形成がスムーズに進むように祈っています。来年度も開催を計画しますので、先輩医師の皆さん、どうぞよろしくご協力のほど、お願い申し上げます。

2021年10月5日

「医師としてのキャリア継続のため、ワークライフバランスの考え方を知るとともに、医師としての多様な生き方を学ぶ」ことを目的として取り組みました。昨年は、感染症対策のためオンラインでの授業でしたが、今年は対策を講じて対面で行いました。
日 時:2021年9月24日(金)8:50~16:20
対 象:長崎大学医学部医学科3年生(男性83名、女性41名 合計124名)の「医と社会」教育の一環で実施。


↑~講義風景

<ワークライフバランス講義-ビデオ->

長崎大学 理事(学生担当・国際担当) 伊東 昌子 先生
「多様性の尊重とキャリア形成について考える~無意識の偏見~」
思い込み(=無意識の偏見)で物事を判断していないか、感じ方や表現は人によって異なること等を理解し、対人関係を円滑にする術を学びました。また、日本の課題である少子高齢化に伴い、時間制約を持つ人が増えるため、男女共に働く、定年退職後も働く事や、様々な価値観に対応するためになるべく違う条件の人と働く等に、考えを切り替えて生産性を高める必要があると話しました。アカデミアにおける多様性の実現、ジェンダーバランスの取れたチームの生産性は向上することを裏付ける国内外の根拠データを数多く示しました。しかし日本は、諸外国に比べて女性研究者が少なく、その理由を日本の男性研究者は「適性の差」と考える割合が高かったことに疑問を呈しました。その他、長崎大学におけるダイバーシティ推進の取組紹介、書籍を引用して、シェリル・サンドバーグ著「LEAN IN」と「OPTION B」からキャリアの積み方や困難にあった時は次善の選択肢を最大限に利用すべきとの考え方を伝えました。コロナ禍の大学生活を過ごす学生には、まさに「OPTION B」をどう活用するか、「回復する力を鍛えてこれから起きる様々な局面を乗り越えてほしい」とエールを贈りました。

<行政医の紹介-ビデオ->

長崎県上五島保健所 所長(五島振興局上五島支所保健部長) 安藤 隆雄 先生
「行政医の紹介」
 米国ニューヨーク留学中に研究に没頭しつつ子育てを楽しむ充実した日々のお話、帰国後の臨床~研究の様々な業績、行政医になったきっかけ、行政医の業務紹介があり、近況はCOVID-19関連の対応に邁進されていました。「どの分野でも苦労はあるが、やりがいを感じて、医師としての専門性を活かすことが大切」と話しました。

<グループ討論>
仕事と育児の両立を目指す共働き医師が、問題に直面した時にどのように解決していくかを、グループに分かれて討論しました。
 

↑ワークの様子

<医師会の取組紹介>

長崎県医師会 常任理事 瀬戸 牧子 先生
長崎県医師会常任理事の瀬戸牧子先生から、センターと連携して行っている事業「長崎医師保育サポートシステム」「マタニティ白衣貸出」の紹介がありました。行政・大学(病院メディカル・ワークライフバランスセンター)・県医師会が円滑に連携して事業を推進しているところは珍しいため、瀬戸先生は、日本医師会の男女共同参画委員に着任され、全国波及の一助を担われるそうです。医師会活動の紹介や「良い医療者になってください」と学生へ激励の言葉をいただきました。

<発表と先輩医師からのアドバイス>
 事例毎に、12グループが発表しました。他のグループは、相違点や良かった点などを発表しました。

icon_redface.gif医局長やワークライフバランス推進員の先輩医師から貴重なご意見を聴かせていただきました。
 
↑医療教育開発センター 松島 加代子 先生 ↑腎臓内科 阿部 伸一 先生

↑ワークライフバランスコンサルタント 吉岡 和佳子 氏

<ロールモデル医師の講演①-ビデオ->

長崎大学病院 心臓血管外科 准教授 三浦 崇 先生
「外科系診療科における男女共同参画の現状と展望」~心臓血管外科における「育児休業(育休)」取得と「その効果」~
日本外科系連合学会学術集会で発表された動画を三浦先生の許可を得て視聴しました。医局で2名の男性医師が同時期に子どもを授かったことが判明してから、医局長としての対応と医局の現状を見据えて具体的に行ったサポートを説明しました。家事・育児への男女共同参画の好事例となり、「今後も医局内で取得を促し「ワークライフバランス」が充実するようにサポートしていきたい」と話しました。

<ロールモデル医師の講演②-ビデオ->

長崎大学病院 麻酔科 助教 岡田 恭子 先生
「私のワークライフバランス」
2児の母で、麻酔科医として育休明けから徐々に勤務時間を増やし、子どもがいてフルタイムで働き当直も行う女性医師は少数派だが、「自分がどうしたいか」「夫の理解があるか」「子どもの預け先があるか」が大事だと話しました。個性心理学インストラクターや性教育認定講師としてもご活躍です。「「医師としてどう生きたいか」人と比べず「みんな違う」ことを知り理解することで穏やかに過ごせるので参考にしてほしい」と話しました。

<ロールモデル医師の講演③-ビデオ->

長崎大学病院 産科婦人科 医員 野口 将司 先生
「産婦人科医の育休」
「いつか自分に子どもができたら育児休業を取りたいな」と思っていた。妻の妊娠判明時は、自身の「人生の大きな転機だった」と位置づけました。まず育休制度について調べ、給付金制度、条件や期間を検討し上司へ報告、周囲の同僚や後輩へ業務の根回し等を実行したと説明しました。育休期間は1か月間で、家族でゆっくりと充実した日々を過ごせたと話しました。本来は、妻の体調が一番辛い時期(生後すぐ~3か月頃)に取得したかったが、条件面で叶わなかった。しかし、育児・介護休業法の改正により、2022年4月から段階的に条件が緩和されるので、2人目ができたら、男性版の産休や育休を取りたい、育休を取得してみて、人生において「家族との時間が一番大事」だと痛感した。育休を取るのが目的ではなく、「家族を支えるのが目的」と締めくくりました。

<メディカル・ワークライフバランスセンターの取組紹介>

↑長崎大学病院メディカル・ワークライフバランスセンター 副センター長 南 貴子 先生
「メディカル・ワークライフバランスセンターの取組紹介」
最後に、南先生よりセンターの「医学生・研修医Q&A」「私たちのワークライフバランス実践術」「輝く卒業生インタビュー」「育休取得者へのキャリアコンサルティング」「マタニティ白衣の貸出」「復職&リフレッシュトレーニング」「長崎医師保育サポートシステム」「研修病院ワークライフバランス推進員との連携」等々の取組を紹介しました。
 また、南先生のキャリア年表を示し、「道のりも歩むスピードも多種多様。子どもを授かった時の相談や介護相談もできるので、両立に悩んだ際はセンターへ相談してほしい」と話しました。

icon_exclaim.gifその他、グーグルフォームによる「講義前後アンケート」の実施や「キャリア&ライフ未来年表」の作成等、盛りだくさんのキャリア講習会でした。

<講義前後アンケートの集計結果抜粋>
●2021年度の受講予定者124名(男性83名、女性41名(女性の割合33%))のうち、アンケート回答者は、講義前108名、講義後98名でした。「ワークライフバランス」の言葉も内容も知っている割合は過去最多の62%で、小・中・高校の授業で学んだり、様々なメディアで取り上げられ、浸透しています。
●現時点での将来の不安については、講義の前後で、不安がある割合は共に50%以上(前60%→後50%)であったものの、不安がない割合は少し増加(前24%→後27%)しました。講義後に、講義前と比べて不安が減った・なくなったと答えた割合は57%で、学生の半分以上は、不安を抱えながらも、本講義で不安を軽減できたようです。将来に対する不安の内容(複数選択)で一番多いのは「仕事と生活の両立」と「キャリア形成」が共に16%)でした。次は「勤務地」と「診療科の選択」が共に15%で続きました。
「産休」「育休」の言葉はそれぞれほぼ100%の割合で認知され、男性も育休を取ることができると知っている学生も98%と高い割合でした。講義後の「自分も育休を取ってみたい」学生の割合は95%(男性95%、女性94%)でした。講義を受ける前から、育休取得を考える学生が性別を問わず年々増えています。
●将来の進路を決定する時に重視するもの(3つまで選択)のランキングは、講義前:1位「仕事の内容」2位「やりがい」3位「雰囲気の良い科」、講義後:1位「仕事の内容」2位「やりがい」3位「希望するライフスタイルが得られる」でした。講義後は、仕事と生活の両立を重視する学生が増えました。
●仕事と生活の両立については、講義の前後で「できる」前14%→後28%、「なんとかできそう」前48%→後62%へと増加して、講義後の両立への自信は90%と過去最多になりました。「できない」「わからない」の割合はいずれも講義後に減少し、また、「今回の講義が将来役に立ちそうだ」と答えた学生は92%となり、講義の意義があったと感じました。

<学生の感想抜粋>
icon_razz.gif将来のプランは一通りではなく、様々な選択肢があることが分かりました。
icon_razz.gifとても有意義な授業だった。昼休みに友達と将来について話したが、色々な選択があっていいと思う。

icon_razz.gifワークライフバランスについては、常々自分で考えていたので、自分としてはとてもありがたい話題でした。今日の色々な話を聞いて、自分は、悪い方にばかり考えてしまったり、細かいところまで気にしすぎたりしていると気付きました。もっと楽しく将来を見ていきたいと思います。
icon_razz.gif家族との時間と、仕事の両立について不安がありましたが、今回の授業を聞いて、男性の育休について学ぶことができ、また、子どもを産み育てることが仕事に関してマイナスにはあまりならないのだと思えるようになりました。
icon_razz.gif女性として今後経験する結婚、出産に対する不安が軽くなりました。
icon_razz.gifグループワークでリアルな事例に触れて、みんなと意見を交流することでイメージが膨らんだ。
icon_razz.gif自分のしたいこと、希望を前提にしながら結婚等する際はパートナーと話し合ったりして、しっかりとライフプランをしていきたいと思います。
icon_razz.gif男性育休の制度が徐々に整っていて、自分が医師になる頃にはもっと理解のある職場になっているのだろうなと、安心しました。
icon_razz.gif普段気になっていたけど、知ることができなかったことばかりで面白かったです。
icon_razz.gif自分の将来を今までで一番考える時間になりました。

<講義協力者のコメント>
●腎臓内科 阿部 伸一 先生
 大変勉強になりました。私の学生時代はあの様な講義はなかったので、新鮮に感じるとともに今の学生は恵まれているなとうらやましく思いました。
●産科婦人科 松本 加奈子 先生

 今回、同講習会に初めて参加させていただきました。与えられたケースにおける問題とその対応・解決策について、学生さん達が想像力を働かせながらいろいろな角度から考えている姿に感激し、私自身も学ぶことが多くありました。医師にとって、この「想像力」がとても大切だと日々感じています。患者さんはもちろん、同僚・コメディカル・家族など、相手の立場になって考えていくことは、医師として、人としての成長につながると思います。この講習会はぜひ今後も継続していただきたいと思います。
●医療教育開発センター 松島 加代子 先生
子育てについて、アフリカ留学について行くのか、日本で進学させるのか、学生さんと私たちシニアの選択に相違があった場面は興味深かったですね!医師経験を積んでいくなかで、「視野を広げること」、「新しい経験をすること」の重要性を、キャリアとともに強く感じていくのかもしれないなと思った場面でした。年月を経て、自身の考え方や価値観は変化していきます。自分がどうありたいか、そのときの気持ちを是非大事にして、ポジティブに取り組んでみてほしいと思います。ただし、全てが最短距離で到達しようとすることが最善策ではない場合もあります。皆さんを取り巻く人たちの考えも尊重しながら、しっかりと前進していってください。私たち医療教育開発センターも全力で応援します!
●クラスペディア代表 吉岡 和佳子 氏(ワークライフバランスコンサルタント)
年を追うごとに、学生や医療人の方々の意識、そして病院の職場環境が変わってきていることを実感しています。グループワークで取り組むテーマは、簡単には解決できない課題ばかり。発表された結論も多種多様で興味深かったです。今回は「お互いにとって何が一番大切なのか?」を重要視しながら、ポジティブに解決策を考えるグループが多い印象でした。希望する診療科やキャリアの方向性、子育ての方針など、パートナー同士でしっかりと思いを共有し、尊重していくことが大事。現役医師の先輩方が「希望の進路は変えないで」とエールを送り、様々な選択肢や可能性を示してくださる様子を見て、とても心強かったです。

icon_redface.gif今年の講義では、来年2022年度に男性育休の法制度が改正されることを受け、ロールモデル医師3名のうち、1名は男性の育休取得を推進した心臓血管外科の医局長、1名は育休を実際に取得した産科婦人科の男性医師にご協力いただき「男性育休」を大きな柱にしました。
 授業の最後には「キャリア&ライフ未来年表」で自身の人生計画を時系列でイメージしてもらいました。提出のあった70名の男子学生のうち、13名(19%)が、育休取得を明記していました。昨年の2名から増加しているため、今の社会情勢や、今回の授業を受けたことで、育休取得を現実的に捉えることができるようになっていると思います。同じく同数の13名(19%)が、子育てや、家族を大切にすることを記載しており、男子学生の3割以上が、子育てを共有する意識ができているとわかりました。
 アンケート結果からわかるように、これからの若い世代は、夫婦での育休取得が当たり前と考えるようになります。それを受け止めて、組織とその管理職の意識が変わる必要があります。来年度以降、長崎大学病院はじめ長崎県内の医師の育休取得が、希望に沿ったものになるように、センターとして、環境整備を促進したいと思います。

1 2 3 4 14