市民公開講座「妊活って?のメッセージ 晩婚・少子化時代に生きる貴女へ」報告 
2015年2月26日

メディカル・ワークライフバランスセンターの関連機関である「ながさき女性医師の会」より開催報告がありました。

平成26年度 ながさき女性医師の会 市民公開講座報告
日時:平成27年2月13日(金) 19:00~20:30
場所:長崎市立図書館 多目的ホール

 

基調講演「妊活って?晩婚・少子化時代に生きる貴女へのメッセージ」

講師:村島温子先生(国立成育医療研究センター/周産期・母性診療センター)

母性内科とは… 著書『アラフォー安産35歳過ぎても元気な赤ちゃんを産む方法』を書いたのは、「アラフォーでも安産が可能」と言うつもりは全然なく、「30代までに出産しましょう!」と伝えたくて、自身が診療している母性内科の紹介のために書いた。かつて、膠原病の若い女性患者に出会い、“膠原病の女性は妊娠をあきらめなくてはいけなかった”時代、この不条理へ挑戦しよう!と、母性内科に関わることになった。

女性のライフサイクルと健康トラブル ホルモン環境によって、思春期~成熟期~更年期~老年期という目まぐるしい変化があるのが女性。成熟期には、比較的安定しているが、それ以降は、残念ながら、多くの健康トラブルが出てくる。50歳過ぎると、高血圧が必発で、胎児も育たない。しかし、成育医療センターでは、50代での妊娠・出産が年間数名(?)ある。20代の若い女性では、膠原病や甲状腺疾患など、免疫が関係したものが目立っており、女性の1~2割に発生している。何度も流産した女性が、検査を受けて、甲状腺機能低下症がわかった例もある。

なぜ、妊活? 高齢になると、妊孕性の低下、染色体異常の増加、慢性疾患の合併、子宮がん・乳がんの発生など、ハイリスク妊娠となりやすいからである。妊娠適齢期は、年齢別周産期死亡率から考えると、22~32歳であり、妊産婦死亡率からみると、20~32歳と言える。いずれにしても、女性は妊娠を前提としたヘルスケア(=プレコンセプションケア)を行う必要があり、これは女性自身にとっても、非常にいい健康管理法である。また、海外では、若年層の肥満が大問題になっているのに対し、日本では痩せた・痩せすぎた女性が増えていることが問題でもある。近年、出生数の減少に加えて、新生児の出生時体重が減っており、この原因は、やせの女性と関連あると考えられている。

妊娠はストレステスト! 妊娠による健康状態の変化によって、将来が読め、慢性疾患の発症を早期から予防できることになる。健康寿命延長のためには、重篤な心・脳血管障害と大いに関連している、高血圧症や糖尿病を予防することが大切だが、妊娠によって、このリスクがわかれば、若い時代から予防ができるのである。

妊娠・授乳とくすり 世の中には、妊娠中だから、授乳中だからと、薬をのまずに辛い症状と戦っている妊婦や母親がたくさんいる。医師もあまりわかっていない。その呪縛から解放して、安心して薬を服用して、快適な毎日を送れるように“妊娠と薬情報センター”を設立して、インターネットで情報発信しているので、参考にしてほしい。

 

追加発言1「婦人科クリニックから見る 長崎女子妊活事情」

講師:安日泰子先生(やすひウィメンズヘルスクリニック院長)

長崎の女性たちの声は… これまでは、若い女性たちを対象に性教育の話をすることばかりで、避妊の話はしていたけど、妊娠を勧める話をしたことはなかったので、周囲の人たちにいろいろ聞き取り調査をしてみた。長崎で、最近の女性たちが、結婚や出産に対して、どんなイメージをもっているのか…?と。昔と変わらず、人並みに結婚。出産を適齢期にしたいと願っている人がほとんどであった。ただ、長崎以外の働く女性たちは、職場や自分の夢から先延ばしにする傾向もみてとれる。

データからみる長崎の実態  長崎市女性未婚率は、各年代で全国平均より高い。その理由は、同年代の女性に比べて、男性が少ないという声があるが、調べてみると、10年前も同じ状況であり、30年前は、もっともっと男性が少なかった。大学生男子も、女性も同じような回答。男女ともに結婚する意思はあるが、結婚できない状況が背景にあるのでは…。その問題は、セックスレスや、草食系から絶食系男子と言われるが、大きな問題の一つは、雇用と経済の問題(お金がない=先立つものがない)。もう一つは、仕事と結婚観の男女のギャップ。(女性は働き続けたいと思うのに、男性は自分だけで稼いで養うべき…と。男性のジェンダーの呪縛から解放が必要。)

がんばっている女性たちを支援するために 経済状況の悪化からの教育の二極化、望まない妊娠・早い離婚・シングルマザーの増加・世代間連鎖など、問題が悪循環の輪でつながってしまっている。それぞれを断ち切るための思い切った施策が必要だし、そのためには、多様な価値観の人を政策決定の場に!つまり、女性の政治家を増やさなくてはいけない!

 

追加発言2「卵子は老化する!」

講師:長谷川ゆり先生(長崎大学病院産婦人科)

長崎における高齢出産の状況 高齢妊娠に、厳密な定義はないが、一般に、初産婦で35歳以上を、高齢妊娠という。その比率は、長崎県 20.7%(全国23%)。長崎大学病院では、4割が35歳以上で、40歳以上の人も増えてきている。分娩方法としては、35歳未満は、経膣分娩が多いが、35歳以上はかなりの数が帝王切開である。

高齢妊娠のリスク 高齢だと、妊娠の継続もできないことも多く、データ的にも、38歳が境目で、妊娠率、生産率、流産率に大きな差が生じる。日本全体で、もっと妊産婦の死亡を減らそう・なくそうとしている。ただし、高齢妊娠のメリットもある。(精神的にも、経済的にも余裕ができてからの妊娠・出産は、子育て・教育にいい影響が現れている。決して、悪い事ばかりではない。

生まれた赤ちゃんが大変 長崎県内では、NICUが4か所で27床しかない。現在、長崎大学に母体・胎児ICUとして、MFICUをつくる予定である。妊娠・出産をして、そこで終わりではない。それからがある。ここから、また新たなスタートであることを認識しておかなくてはいけない。

 ながさき女性医師の会ホームページ→http://nagasaki-joi.net/