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済生会長崎病院

2014.11.18

平成26年11月18日、県南地区での現状を確認するため、済生会長崎病院の澄川耕二院長、海外生活の経験もあり、現在は常勤短時間勤務の総合診療科 坂本藍先生、副院長兼内科主任部長 芦澤潔人先生、浦川智恵美看護部長、久保山雅弘事務部長の5名にお伺いしました。

●仕事と子育ての両立などについて、総合診療科で活躍中の女性医師 坂本藍先生インタビュー

●坂本先生の上司で、副院長兼内科主任部長の芦澤潔人先生インタビュー

●病院のワークライフバランスに対する基本的な考え方などについて、澄川耕二院長インタビュー

●看護部での取り組みについて、浦川智恵美看護部長インタビュー

●病院のワークライフバランス実現に向けた取り組みについて、久保山雅弘事務部長インタビュー

  

  

  

総合診療科で活躍中の女性医師、坂本藍先生に、仕事と子育ての両立などについて伺いました。

  

出身は長崎で、大学は宮崎です。研修は長崎原爆病院と長崎大学病院でした。入局は長崎大学の皮膚科。それから2年後に夫がインドネシアへ転勤になり、一緒についていきました。

子どもが生後半年の時で、1歳半まで滞在しましたが、そのころは医師の仕事はしていなかったですね。その後、平成23年10月に済生会病院へ就職し、平成25年5月から26年6月まで、2人目の子の産休と育休を取得しました。

そうですね。皮膚科の医局を離れ、こちらに就職して現在で4年目になります。もともと関心のあった内科に入りました。現在は総合診療科にいて、最初は上司の先生に見てもらいながらスタートしました。今は常勤で、ベッドを持っています。8:30から17:15までの勤務で、当直は免除してもらっています。土日は、患者さんの状態に応じて出勤する場合もあります。

子どもは1歳4か月と4歳です。上の子は幼稚園で延長保育を利用しており、下の子は家の近くの保育園に通っています。私は、週4日勤務の常勤医師として雇用されていますが、水曜日をお休みにしてもらっていますので、月極めで利用している訳ではありません。うちの病院では、同じような形で勤務されている先生が他にもいらっしゃいます。

<院長>
週間勤務日数は1日から5日まで自由に選択できます。ただし常勤として福利厚生が全てつくのは4日以上の勤務になります。現在、週4日勤務の医師が2名、週2日と週1日勤務が各1名です。常勤の女性医師9名のうち5名が、育児支援で何らかの勤務条件を設定しています。宿日直の免除とか、勤務日が少ないとか、一日のうちの勤務時間が少ないとかですね。別に1名、介護支援の勤務条件を使っている先生がいますので、計6名になります。

<院長>
私たち済生会長崎病院独自のルールです。

週の半ばに一日休みがあることで、家事やリフレッシュの時間になり、非常に助かっています。

休みの日に患者さんへの説明が必要になった時、子どもを急に預けることができない場合があることでしょうか。水曜日午後から幼稚園が延長保育を実施してないので。

自分で探してこちらを見つけたのですが、もともと車通勤が苦手なため、行動範囲を近くでまとめたいと思ったのが理由です。実家が近いことも大きかったです。週4日で働いている人もいるという話を、面接で伺ったのが決め手になりました。

実家が近いので、母に週2回ほど家事を手伝ってもらったりしています。保育園の校医の先生が、こちらの小児科なので、もし呼ばれたらここに連れてきて診てもらって、実家に連れて帰ってもらっています.

夫の職場はフレックスタイムなのですが、朝5時くらいに出て、19時ぐらいに帰ってきてくれます。子どもをお風呂に入れたり、土日に面倒を見たりしてくれるので、助かっています。

職場では、総合診療科の先生がカバーしてくださいます。主治医制ですが、グループ内でカンファレンスを行っているので、誰かが休みのときはカバーできる体制が整っています。

内科認定医の資格を、来年受けようと思っています。こちらは研修指定病院です。褥瘡(じょくそう)も診ているので、その認定医も、5年くらいかかるようですが、挑戦してみたいと思っています。

育児などとの両立が大変だと思いますが、無理せず続けられるような環境を探して、少しずつ頑張っていってもらえたらと思います。どうしても無理してしまうと、続けられなくなってしまいますので。

  

坂本先生の上司で、副院長兼内科主任部長の芦澤潔人先生にお話を伺いました。

  

写真左 副院長兼内科主任部長:芦澤潔人先生
写真右 久保山雅弘事務部長

育児休業から坂本先生が戻ってきてくれて安心しましたし、すぐに戦力になってくれて助かっています。月火木金の勤務で、水曜日いないということがあるので、できれば週初めの月曜日にたとえば、土日に入院して1~2日程度で帰られる入院患者さんを、担当に充てるようにするなど、多少の工夫はしています。週末も出てきてやってくれているので、金曜日入院の患者さんを完全に外すということはしていませんが、ちょっと少なめにするなどの配慮はしています。

保育所に子どもさんを預けているので、夕方までに帰らないといけないわけですから、午後4時半過ぎになって入院が決まったという患者さんは外してあげるなど、ちょっとしたことはやっています。
他にもご両親がご高齢で、介護中の先生もおられます。育児も介護も、ご家族の世話をするということでは状況は変わらないわけで、他の先生方とのバランスを考える必要があると思います。負担が偏らないように気をつけています。

  

澄川耕二院長に、病院のワークライフバランスに対する基本的な考え方などについてお伺いしました。

  

まずは男女雇用機会均等法や労働基準法などの法律に対するコンプライアンスを重視し、何か要望があれば、100%満たすよう努めています。仕事と育児・介護を両立する際に必要なのは次の3つです。

1つ目は病院の風土や意識の改善です。
制度を利用しやすい、働きやすい風土というのが基本にないといけません。

2つ目はフレックスタイムなどで労働時間を柔軟にするとともに、労働条件を明確にしたうえで、要望に応じた条件で働いてもらうことです。
同時に、急変時にカバーできる体制を常に持っておかないと、実際にはうまく回らず、絵に描いた餅になってしまいます。現在働いている女性医師は、子どもさんが急に熱を出しても、周囲でカバーできる体制にあります。

3つ目は院内保育所の整備です。当院では24時間保育が可能です。あとは、病児保育がこれからの課題ですね。

そうですね、それを当たり前にやっていければいいですね。それが病院としての文化・風土であるということで回って行けば、それでいいのではないかと思います。

そのあたりは載せた方がいいかもしれませんね。制約のある医師に関しては、自分の働ける範囲で力を発揮してもらうというのが基本的なコンセプトです。週1日でも働けるようになったら、どうぞ来てくださいと言っています。

 はい。そして、その辺をカバーしていく体制が必要ですね。

今は女性医師が4割に達していく時代。女性医師の力をいかに活用するかというのが、病院にとっては医師確保の観点から非常に重要なテーマになっています。

完全な形でしか働けないという病院は、生き残ることはできない、ということです。働ける条件をきちんと作っていって、それぞれの医師に合った形で力を発揮してもらう。
そのための体制を作っているわけです。これは経営にプラスになるだけでなく、病院を運営していく上で不可欠な考え方になっていると思います。

単純に女性医師を活用すれば、医師不足を解消できるか、と言えばそういうわけにはいかないと思います。特に地方などは難しいですね。

女性医師の場合は、家庭のこともあるから、ある程度働く場所も限定されると思います。そういう意味で、都市部の方が女性医師も働きやすいのではないかと思います。

長崎県下で言えば、離島もそうですが、離島に近い陸地もまた少ないですよね。どの地域にどのぐらい医師を配分するか。医局の配分力というのが低下しましたから、それを再配分するというのが、今のシステムでは非常に難しい面がありますね。

自由競争で、医師の流動化は市場原理が働いているので、市場原理に逆らって一つのパワーを働かせるのは、厚労省などの力しかないのかなとも思います。

医師不足の裏に、女性医師の増加があります。女性医師が増えれば、常に100%の戦力を出し続けられると考えることはできない。当直や夜間勤務に限界があることから、それが医師不足を感じる背景のひとつになっていると思います。

今まではワークライフバランス重視で当直免除しますということで良かったけれども、社会的使命として、医療提供体制そのものが不十分になる可能性がある、という懸念が一方でありますね。

  

浦上智恵美看護部長に、看護部での取り組みをお尋ねしました。

  

看護部としてもワークライフバランスは重視しています。24時間保育と、短時間正職員制度が主なものです。短時間正職員は育児支援が7人、介護支援が3人、合計10人います。あと夜勤免除の人もいて、看護師の1割以上が育児・介護に関する何らかの支援を受けています。

平成21年に、新病院としてこちらに移転してからですね。その時に体制も変わり、人材確保や離職防止の取り組みが進んでいます。看護師の数も100人ぐらい増えました。その分、働き方もさまざまになってきています。

全員取っています。特別な事情がない限り、ほとんどの人が、1年あまりで復職しています。

5年になります。私も、ワークライフバランスのためにこちらに来たと言ってもいいかもしれません(笑)。前職場で働いている時に私の母が倒れたのですが、当時は介護休暇を取るのも難しい状況でした。こちらでは介護休暇やフレックスタイムなども、希望に応じて取れます。

そうですね。以前は制度がなくても、家族の支援が得られたから何とかやることができました。でも今では核家族化で、家族の支援が受けられない人が多くいます。代わりに病院側が支援することで、職員にとっても優しい病院になることを目指しています。

やはり、支援を受けている人と、受けていない人とでは温度差があって、不公平感を抱かれることもありますね。それでも、家庭の事情で夜勤ができない、短時間しかできないという人には、面接をして、働き方を決めるようにしています。

それと学校行事や運動会、お遊戯会などがある時は、全員有休を使って出席しようということになっているんです。その辺はスタッフの理解があって、すごいなと思います。
同じ日にズラッと休むことも多いので、その分は他で補充してもらったりしています。

授業参観に行けなかったとか、運動会に行けなかったとか、そういうことがないわけです。
みんながよく頑張ってくれているなと感心しています。

います。希望があれば100%取得しています。介護が終わってしまったり、施設に預けるなど目処がたったら復帰していて、介護のために退職した人はいません。

また、短時間正職員で介護中の人もいます。短時間も5・6・7時間で、希望に応じて決めています。正職員なので、ボーナスや昇給もあるのが魅力だと思います。
フルで頑張っている人との兼ね合いもありますが、やはりそういう支援はしていかないといけないと思います。

そうですね。

私は、当院は職員に優しい病院だと思っています。子育て中の方もまた、即戦力になってくださる大事な人材。ぜひ一緒に働いていければと思っています。

  

久保山雅弘事務部長に、病院のワークライフバランス実現に向けた取り組みの状況などを伺いました。

  

移転前からすると、確実に増えています。新しくなってからは頭打ちですが、40人ぐらいの医師が在籍しています。前の病院では約30人でしたので、常勤では10人ほど増えていますね。女性医師数も増えています。

院長からも話がありましたが、今はドクターになる人の半数近くが女性。当院の研修医は現在4人ですが、内2人は女性です。女性の働きやすい環境なくしては、病院もやっていけません。女性に多い出産・育児の問題や、夜勤が難しいことなど、男性の先生方にも理解してもらって、お互いに補完しながらやっていくことが理想だと思います。

幸い、うちの病院は、周囲の先生方の理解やサポートがあります。女性医師採用の場面では、その先生が理想とする働き方について「週何日がいいですか、夜勤はどうですか」という形で、希望を伺って進めています。 結果として、坂本先生は週4日ですが入院も持っていただいたりして収益面でもプラスになっています。麻酔科でも週4日の先生がいますし、お互いにカバーしてもらって、男性の先生には昼間休んでいただくなど、いろんな形で貢献してもらっています。

院内託児所の様子

定員は20人ですが、今のところ12人入っています。月極めですと、看護師が9人、コメディカルが1人、事務系が2人。一時利用が月に10人ぐらいです。保育士は5人います。移転前から24時間保育に対応しています。前は、希望があればいつでもお預かりしていましたが、現在夜間保育は週2日で、曜日を決めて実施しています。

福利厚生も含めていろんなことをやりたいと思っています。ただ、どうしても財源が必要になってきますね。優先順位の高い託児所や職員食堂など、その辺は何とか維持していますが、経営環境的には厳しいので、段階的に取り組んでいきたいと思っています。
医療スタッフあっての病院ですので、「働きやすい病院とは何か」ということを考えながらやっていきたいと思っています。

全国の済生会の特色として、一番は、低所得者の方などの生活困窮者医療ということで、無料又は低額で医療を提供する制度があり、全国展開しています。全患者数に対して1割以上という規定があるのですが、窓口に社会福祉士がいますので、所得に関する証明書等を出してもらって審査しています。

長崎で独自にやっているのが、自治体による就学援助制度の証明書を学校から出してもらった世帯の方は、自己負担分を無料にするシステム。子どもさんだけでなく、ご家族も無料で対応させていただいております。

-大変貴重なお話、ありがとうございました。

社会福祉法人恩賜財団済生会支部 済生会長崎病院

地域就労支援病院

<副センター長の感想>
澄川病院長は、平成4年に長崎大学に着任された時から存じ上げておりました。それから20年あまりが経過しましたが、時代の流れをつかみ、医師社会の変容に対応され、すばらしいワークライフバランス管理職になられていると感じました。

済生会長崎病院の広報誌『ほほえみ』にもある「患者さんの権利と義務」についての表記は、澄川先生が長崎大学病院長時代に掲げたものを取り入れておられるそうです。済生会長崎病院においても、患者さんにもコンプライアンスを求め、病院全体のクオリティを高めるというすばらしい目標を掲げておられると感じました。

これからも、ワークライフバランス管理職としての指導的立場で、長崎県内の病院のワークライフバランスが向上するように、お力添えください。