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長崎労災病院

2014.09.02

平成26年9月2日、県北地区での現状を確認するため、長崎労災病院の福崎誠院長、育休4か月で復帰し、現在は常勤短時間勤務のリハビリテーション科 田中奈津美先生、小学生と保育園児の3人の子育てと両立している麻酔科 後藤志乃先生、相田由紀看護部長、西川静男事務局長の5名にお伺いしました。

●リハビリテーション科で活躍する女性医師、田中奈津美先生インタビュー

●病院全体のワークライフバランス推進状況について、福崎誠院長インタビュー

●3人のお子さんを育てている麻酔科の医師、後藤志乃先生インタビュー

●看護師のワークライフバランスについて、相田由紀看護部長インタビュー

●ワークライフバランスの取り組みの効果などについて、西川静男事務局長インタビュー

  

  

院長はじめ病院幹部の方々、女性医師の皆さんにお集まりいただき、ワークライフバランス実現向けた取り組みや、職場環境などについてお尋ねしました。

  

リハビリステーション科で活躍する女性医師、田中奈津美先生にお話をお伺いしました。

  

常勤扱いの短時間勤務です。平成26年8月末までは、定時の朝8時15分から始まって、15時30分までの勤務でした。この9月から16時までに延ばしています。もともとは整形外科医。平成14年卒で、12年目になります。現在はリハビリテーション科の仕事に加えて、整形外科に関しても、臨床の仕事に携わらせてもらっています。手術・執刀をしていて、患者さんも持たせてもらっています。

子どもは今年10月で3歳になりますが、今は院内保育所に預けています。生後4カ月の時、非常勤で仕事に復帰しました。当初は月水金の午前中勤務。生後半年の時に、常勤扱いで8時15分~15時30分までの勤務になりました。待機や当直は免除してもらっているので、大変助かっています。

そうですね。他の先生方に随分カバーしてもらっています。手術も、私の症例が先に終わるように先に入れてもらっています。

デメリットはほとんどないですね。来年の4月から、社会人大学院生のお話もいただいています。こちらに所属して、週に1度くらい大学院に行く形。
夫は同じ病院の放射線技師で、家庭の方も何とかやれています。整形外科は大学医局からの人事になるので、関係者の皆さんにはいろいろ配慮していただいています。

私ぐらいの年ですと、これだけ長く同じ病院にいさせてもらうことは少ないです。子どものことなど考えていただいて、その結果こちらで長く働かせてもらっています。

すでに優遇していただいているので、特に工夫は必要ない状況ですね。夫も協力的です。

医者になって5年目に、労災病院に転勤になりました。その次に佐世保総合病院に行き、その時に結婚・妊娠・出産しました。総合病院は産休後に退職。それから復帰をどうしようという時に、労災病院のリハビリテーション科の枠で、まずはアルバイト的にどうか、という話をいただきました。

あまり長く臨床から離れたくないという気持ちはありました。何もしないと不安で、自分が下手になっていないか、新しいことについていけないのではないかと思いましたね。

最近は病院所属で、医局に所属する人が少なくなっています。デメリットもあるかもしれませんが、もし協力的な医局や病院に出合えたら、助けてもらえることが非常にたくさんあると思っています。初めから毛嫌いせずに、そうした医局を探して選んでみるのもいいのではないでしょうか。

  

福崎誠院長に、病院全体のワークライフバランス推進状況をお尋ねしました。

  

介護支援については、今のところあまり実績がないのですが、育児支援に関しては、ワークライフバランス施策の一環で、時間短縮制度などを通じて積極的に支援しているところです。ホスピレート(働きやすい病院評価)審査を受けたのも、地方の急性期病院の医師が減少している中で、女性医師の皆さんに、なるべく常勤に近い形で働いてもらいたいという思いがあったからです。時間短縮で当直時間等を免除しながら、常勤に近い形でキャリアを継続してもらえればと考えています。

ホスピレートに関しては、運よく働きかけがあり、「病院全体で取り組もう」ということで審査を受けることにしました。働きやすい環境という点では、もともとそのような土壌がありましたので、特に新しく変えたことはありません。

ええ、もちろん期待しています。まだ効果としては、十分ではありませんが。私も4月に就任して、いま医師集めに一生懸命になっているところです。各大学、医局に医師の派遣をお願いして回っていますが、色よい返事がもらえず苦慮しています。
やはり、今回のホスピレート認証や働きやすい職場環境をもっと売りにして、ホームページも十分に活用しながらアピールしていきたいと思っています。

そうですね。もっと情報を発信していかないといけませんね。

医師の把握、医師派遣も含めてですが、潜在化している女性医師の情報が、なかなかこちらに伝わってこない状況が事実としてあります。外で働きたくても、なかなか働けない人がいると思いますし、そういう人たちの情報を発信していただければ、大変助かります。

私たちの病院には充実した制度やホスピレート認証の実績もあるので、人材情報を活用しながら宣伝して、ぜひ多くの人に来ていただければと考えています。

そうしていただければ、大変ありがたいです。

  

3人のお子さんを育てている麻酔科の医師、後藤志乃先生にお話を伺いました。

  

8時30分から17時までの勤務です。オンコールはありません。上2人が小学生、下が保育園児で、家の近くの認可外保育園に通わせています。小学生の2人は、夏休みなどの長期休暇だけ、学童保育に行っています。

<院長>
1日6時間以上ということで、常勤雇用になります。後藤先生の場合、あまり時間短縮にはなっていませんが(笑)、その代わり時間外と当直はしないということで、日勤帯に仕事をしてもらっています。

当直も待機も免除していただいているので、できるだけ時間内にぎゅっと凝縮して、仕事ができればと思っています。

当直・待機がないので助かっています。朝は本来ならカンファレンスがあるのですが、そちらも甘えさせてもらっています。小学生の子どもたちに、毎朝家の鍵をかけて登校させるのはかわいそうかなと思って。

<院長>
子どもさんの発熱など、病児保育が大変なのでは?

<後藤先生>
そうですね。上の2人は、本来なら対象年齢から外れているのですが、そばに頼れる人がいないため、無理を言って近くの小児科の先生に特別に受け入れてもらったことがあります。
あと、小学生ということでのデメリットは授業参観ですね。今のところ2回ほど欠席しています。

宅配材料にして、買い物に出るのは最小限にしています。できるだけ、小さいうちから、いろんな家事を任せていくことにしています。少しずつ、少しずつですが。

麻酔科専門医と指導医の資格を取っています。大学院には行っていません。指導医をキープするのはその時の環境にもよるので、少なくとも専門医の方はキープしていきたいと思っています。

今までの病院では、週4回勤務という形が多かったのですが、週5回勤務に慣れてしまえば、それでも別に構わなくなりました。週あたりの勤務日数が短縮されるより、帰る時間が早い方が助かりますね。例えば週4回で8時半~17時の勤務より、労災病院のように週5回で9時~15時あるいは16時のようにできるのであれば、そちらの方がいいですね。

育児をしながら働いていると、周りからいろんな声が聞こえてくるかもしれません。同じ女性医師であったり、男性医師だったり。同じように時短で働いている者同士の働き方が気になることもあります。自分がここまでで、向こうはあんなにやっている…という風に。

いろいろあるけれど、やはり「鈍感力」も必要だと思っています。「私は私なんだ」というものがないといけないんじゃないでしょうか。やりたいことを何とか続けて、多少セーブしてでも続けていくことが大事なのかなと思います。「継続」と「鈍感力」ですね。

  

相田由紀看護部長に、看護部のワークライフバランスについてお伺いしました。

  

復職前によく話をすると、「自分のキャリアのことも考えれば、夜勤も少しはしたいけれど、月8日まではできない」という人もいるわけです。お互いの約束の範囲内で工夫して、少し負担を軽減するなど、100%とまではいきませんが、話をしながら可能な限り、夜勤に入ってもらうようにしています。

施設があるとしても、まず利用されないようですね。佐世保出身の人が多く、ご家族が同居していたり、近所にいたりするので、夜勤の時は家族に預けた方が安心ということで、24時間保育のニーズまでには至っていないようです。

そうですね、足りていないということはないですね。ただ昨年は、育児休業者が30人と非常に多かったので、調整が結構大変でした。今年の取得者は20人。10人違えば、シフトもずいぶん違ってきます。復職者もちゃんといますので。

育休取得は1年と、その年度末まで良いので、場合によっては2年近く取得する場合もあります。最大限取りたい場合は年度初めからの復職。上のお子さんの保育所の関係で前倒しする例もありますが、大体皆さん1年は休業しています。

はい、あまりいないですね。去年の離職率が7.96%でした。長崎県は全国的に低いですが、当院はさらに低い水準です。育児短時間勤務も78%が取得しています。子の看護休暇を取得する人も多いですね。介護休暇を取得している人も1人います。

そうです。時短は3歳未満まで、夜勤免除は就学前までが対象です。対象年齢でも、もしできる状況であればやってもらっています。時短勤務だけど夜勤はするという人もいます。

当院の場合は、ルールはきちんと決まっているのですが、決まっているがゆえに、さまざまな雇用形態やシフト勤務が、医師の先生方のように柔軟にはできない状況です。そういった面はもう少し工夫できればと思っています。他の病院で、もっと工夫されているところはたくさんあるのではないかと思います。ただ、他の病院を経験した職員の皆さんからは、労災病院の福利厚生が一番いいと言ってもらっています。

  

西川静男事務局長に、ワークライフバランスの取り組みの効果などについてお尋ねしました。

  

全国の労災病院(34施設)を考えても、全体的に減少傾向にあります。病院によっては、医師不足のために病院経営が圧迫されている状況もあるようです。

そうかもしれませんね。ただこれからは、家庭に入っている女性医師の先生方にも、再び表に出て勤務していただくような働きかけをしていかないと、経営的にも難しくなってくるのではという気がしています。

対象者はほとんど取得して復職しています。年度によって、ばらつきがありますが、ほとんどの人が取得するので、年々増える傾向にはありますね。その分、人員の手当てをしないといけないので、大変な面はあります。

労災病院を運営する「独立行政法人労働者健康福祉機構」(厚生労働省所管)は、もともと「労働福祉事業団」という組織で、旧労働省の外郭団体でした。そういう経緯もあり、職員の福利厚生に関しては、かなり厳しく制度が作られています。

もともと土壌が出来上がっているので、なるべく多くの人に制度を利用してもらうように務め、対象者が「知らなかった」ということがないようにしています。まずは所属長に相談ということになりますが、ルールの詳細に関しては、窓口の総務課に相談してもらい、一番いい条件を提示するようにしています。

労災病院は、サポート制度もきちんとできていますし、環境もきちんと整っているので、実際に来ていただければ、魅力を感じてもらえると思います。

-お忙しい中、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

独立行政法人労働者健康安全機構 長崎労災病院

地域就労支援病院

<副センター長の感想>
全国統一の立派な福利厚生が整った病院であることは、勤務先を考える時の魅力の一つだと思います。ホームページなどでのアピールを働きかけたところ、早速紹介ページを新設してくださり、私たちも大変嬉しかったです。働きやすい環境など、病院の魅力をオープンにすることで、たくさんの人材が集まるといいですね。