1.<調査の目的>
長崎県内病院の育児・介護休業制度等の両立支援策の取組状況や認知度の実態調査を行う。また、調査結果を、Webサイトやメールマガジンを通して情報発信を行うことで、個人や組織に働きやすい職場環境づくりを推奨する。
2.<対象と方法>
実施日:2024年6月
調査対象:長崎県内143病院
調査方法:調査票を郵送し、同封の返信用封筒やメールで回収。
質問内容:常勤・非常勤医師数、子育て中の医師数、育児休業・介護休業を取得した医師数、両立支援施設の設置など。
調査票:医師の両立支援状況調査
3.<結果と考察>
配付と回答数(回答率):配付143病院 回答102病院(71%)
結果:【集計抜粋グラフ】
①対象の県内病院は2013年度の156病院から漸減しており、調査中に1病院が破産したため、今年度の調査対象は143病院となり、うち102病院から回答を得た(回答率71%)。
②回答した病院に勤務する女性医師の割合は23%で、これまでと著変なし。非常勤医師の割合は、男性15%、女性30%で、男性<女性の結果も例年通りであった。
③子育て中(小学6年生までの子がいる)の男性医師は459人で男性医師全体の24%、女性医師は156人で、女性医師全体の27%で、これまでと著変なし。
④調査の回答を得た102病院のうち、男性医師は102病院全てに常勤しているが、女性医師が常勤しているのは69病院であった。
⑤子育て中の医師は、男性・女性ともに、すべての医療圏に勤務している。医療圏ごとの子育て中の女性医師の割合は、壱岐100%、五島50%、県南38%と高率であり、次いで長崎30%、佐世保・県北28%、上五島22%、県央16%、対馬14%。佐世保・県北、県南では過去最多となった。
⑥2023年度に育児休業を取得した医師は、男性が17人で2022年度より1人増加。17人のうち10人は長崎大学病院で、他は各1人、7病院(長崎みなとメディカルセンター、上戸町病院、長崎記念病院、長崎労災病院、佐世保中央病院、長崎医療センター、北川病院)での取得であった。女性は34人、うち19人は長崎大学病院、次いで長崎医療センターに5人、他は各1人(長崎市5病院、佐世保市2病院、諫早市2病院、五島市1病院)の取得であった。
2023年度に介護休業を取得した医師は、長崎大学病院の女性2人のみである。
※育児休業を取得した男性医師数17人は過去最多、男性医師の育休取得実績のある病院数8病院も過去最多であり、今後ますますの増加を期待します。女性医師においては、2023年度のマタニティウェア利用者は12人(長崎大学病院以外6人)であり、県内で妊娠した女性医師が日々快適に働けるように、貸出事業の周知を強化します。
⑦院内に保育施設があるのは32病院で、閉鎖した病院もあった。院内に病児・病後児保育施設があるのは6病院であった。
※近年の認可保育園充実に伴い、必ずしも院内に保育施設が必要ではない病院もあると考えられます。病児・病後児保育施設については、子育て中の医師がいる病院には、ぜひ院内設置を検討していただきたいと思います。
⑧2022年度の育児介護休業法の改正に伴い、制度の認知度を図る設問を2つ、3年間に渡り経年変化をみるために調査した。
1.「育休を取得しやすい環境整備・個別の周知・取得意向確認・有期労働者の育休取得条件の緩和が課されることを知らない」11病院→6病院→4病院(4%)
2.「出生時育児休業(産後パパ育休)の創設、男性は最大4回の分割育休取得が可能になることを知らない」21病院→10病院→8病院(8%)
※育休制度の認知度も上がってきましたが、今年度「知らない」と回答した病院の中には、新・鳴滝塾に加盟する研修先病院(研修医含め若い医師が勤務している)が3病院も含まれており、該当病院の医師含め職員の環境整備の遅れが危惧されたため、各病院長へ状況確認を行いました。
⑨医療圏別の女性医師分布図など
d89758386867a60b8ea3b294356ec47b⑩2024年度から始まった「医師の働き方改革」について、自由記載の意見を集約し紹介する。
<主に取り組んでいること>労働時間管理、タスクシフト・タスクシェア含め勤務負担軽減、休暇取得促進、医療DX導入など
<課題に感じること>労働時間管理に苦慮している、医師不足や高齢化、ICT導入コストの捻出など
県内の病院数は11年間で13病院減りましたが、勤務する医師の男女比は著変ありません。女性医師数に対する常勤率は2016年調査と比較すると、55%から70%に増加し、非常勤率は45%から30%に減少しています。男性育休は制度改正によって取得する人数・病院数が明らかに増加しており、さらに常態化していくことを願います。今年度から始まった「医師の働き方改革」についての取り組みと課題を記載いただきましたが、この改革によって医師のワークライフバランスがどう変わったかは、次年度詳しく調査したいと思います。
調査の貴重なデータは、長崎県の医療のために活用いたします。ご協力いただきました病院の皆様、ありがとうございました。