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『今は私が太く仕事をする時期、我が家の今の役割分担』 草野 智佳子 先生

2024.11.15

私たちのワークライフバランス実践術 No.27
長崎大学病院 小児科(医員) 草野 智佳子 先生(40代)

<医師のパートナーと小4、年長のお子さん>
『今は私が太く仕事をする時期、我が家の今の役割分担』
2024年10月18日インタビュー

<略歴>
●他県出身、防衛医科大学卒業、自衛隊病院に勤務と他院小児科での研修もあり
●研修医1年目に大学時代の長崎出身の同級生と結婚
●医師7年目に小児科専門医資格取得
●2019年~自衛隊佐世保病院で勤務
●2021年~長崎大学病院小児科医局に入局し、現在は小児循環器グループ

Q1. 現在の「ワーク」と「ライフ」のバランスは?

A1. 大学卒業後、9年間の自衛隊勤務の義務年限を果たし、その後も自衛隊佐世保病院に勤務していました。縁あって夫の出身地である長崎市で、小児科に入局して、長崎大学病院に勤務することになりました。初めての赴任先で「しっかり働きたい」という私の意気込みを汲み取り、夫が自身の勤務条件を16時までの短時間勤務・当直無しとしてくれ、家事・育児の時間を確保してくれました。

我が家の今の役割分担は、夫が食事づくりの9割、子どもの習い事の送迎、発熱など子どもの急な呼び出しへの対応もしてくれます。私は片付けや掃除を主にしています。
夫の両親も近くに住んでいるので、子どもが病気になった時には預かってもらえます。細く長くという働き方もありますが、私は今が、太く働く時期だと考えて、今までで一番「ワーク」に重点を置いています。

毎日帰宅は19時くらいですが、退勤直前でも救急患者さんが運ばれて来たら、夫の了解をもらい、病院に残ります。ちょうど当直の日であれば、時間を気にしないで仕事に没入できるので助かります。夫は、専門医を取得する頃までは、かなり忙しく働いていましたが、今は私が仕事に励むことを尊重してくれて、夫が家族を支えてくれています。いつも本当に感謝しています。
夫は食事づくりが得意なので、朝夕、美味しい料理が食べられます。
特に「豚の角煮」など煮込み系はとても美味しいです!

当直業務については、自衛隊佐世保病院では当直しており、2人目を出産後の当直時は、長崎に住む義父母が佐世保まで子どもの面倒を見に来てくれました。
当院で働くことになった時は、業務に早く慣れるため、また、収入面も考えて、夜間救急の外勤などもしておこうと思って当直をすることにしました。
当直では、いろんな経験ができるので、やっていて良かったと思っています。自衛隊佐世保病院の時より回数が多いですが、それでも、配慮してもらっています。

ちなみに、防衛医科大学出身ですが、運動神経はあまり関係ないと言われたので入学しました。学生は、みんな寮に入るので、食事以外の身の回りのことは自分でします。
夫は、食事づくりは昔から好きだったようですが、他の家事も何でもできるのは、寮生活の経験があったからかもしれません。
私が夫より得意な家事は、縫物かな…。子どもの発表会などで必要な時は、ここぞと頑張ります!

草野先生-自衛隊時代

Q2. 論文を読む時間や、勉強する時間はいつですか

A2. 外勤時の移動時間や、外来の空いた時間を使います。船酔いしない体質なので、五島市の病院まで船で行く時にも読んでいます。

Q3. 育児・家事の時間短縮のコツやおすすめしたいことは?

A3. 毎日朝から夫が朝食の準備をしている間に、クイックルワイパーで床掃除をします。大掃除が必要にならない程度に、こまめにササっと掃除することを心がけています。

Q4. 子育てから学んだことはなんですか

A4. 色々ありますが、子どもの特性がよくわかるようになりましたし、両親の気持ちに寄り添って発言できるようになって、診療の役に立つことが一番でしょうか。

Q5. 子育てしていてピンチだったことは?

A5. やっぱり、子どもが急に熱を出した時に、私も夫もすぐにお迎えに行けない、子どものイベントを忘れていたとか…。一番困ったのは、夫が出張でいない時に子どもが熱性けいれんで救急車を呼んだ時ですね。職業柄これは入院が必要だと判断できましたが、一人だと大変でした。

Q6. 夫婦で子ども抜きのデートはしますか?

A6. 夏休みに、子ども達を県外の私の実家に預けた時に、思いもよらずフリーな感じになって、子どもができてからは初めて?夫婦二人で飲みに行きました♪

Q7. ストレス解消法はなにかありますか?

A7. 実は、私は人見知りするタイプで、気心の知れた人に自分の考えを話して放出することは私のストレス発散になっています。アニメや漫画が好きで、共通の趣味の人との会話や、我が子と一緒に動画を見たり。そもそも小児科で働いていて、子ども達の顔を見て可愛いと感じることで、ストレス解消になっているかもしれません。

Q8. 今後の人生設計について、どのようにお考えですか?ワークとライフそれぞれについて教えてください。

A8. 仕事の面では、小児循環器の専門医が取りたいと思っています。この先、どこで働くにしても、専門医を持って、心エコーをある程度できるようになって、専門性を活かした働き方をしたいと思います。あとは、臨床遺伝にも興味があるので、難しそうですが専門医が取れるといいなと思っています。

生活の面では、私自身がもう少し上手に仕事の調整ができるようになって、家族と過ごす時間を作りたいと思っています。今は週末も当直や病棟の仕事で、丸一日も家にいない感じで、夫の負担が大きくなっています…。
でも、これは当直をしている医師の家庭はおそらく同じような状況で、私は長く家を空けないような外勤先に配慮してもらっているので有り難いのですが…。家族との時間がもうちょっと長くなればいいなと思っています。

Q9. これから仕事と子育てを両立する皆さんへ、応援のメッセージをお願いします。特に、当直を頑張るコツなどあれば教えて下さい。

A9. 我が家は、夫や義父母のおかげで、私が働くことができているので、心から感謝しています。周囲への感謝の気持ちを忘れず、夫婦お互いを思いやることを心がけています。夫がストレスをためすぎないように、一人で過ごす時間・趣味を楽しむ時間を確保できるようにもしています。

当直については、女性の看護師さんは子どもがいても夜勤をしているので、女性医師も環境がしっかり整えば可能かと思います。その環境調整が難しいので、断念する方も多いと思うのですが…。
結婚・出産・転勤などの節目節目で、どのように自分が働きたいかも変化すると思うので、その都度しっかり夫婦でよく話し合うのがいいと思います。

育児が一段落すれば仕事をもっと頑張りたい、という気持ちになる人もいると思いますので、仕事をしたいという気持ちをあきらめないでほしいです。
そのためにも家事、育児も、役割を夫婦間でキッチリ固定しすぎず、それぞれのタスクを「自分がファーストでやる」という考えでいるといいと思います。

私も夫がいない時は家事も育児も当然します! お互い何でもできる状態になるといいと思います。どちらかばかりを尊重しすぎないように、おろそかにしすぎないように、夫婦が対等な立場で、なんでも言い合って、コミュニケーションをとっていくといいと思います。言わないと、わかりません! 変わりません!

当院小児科は、女性医師の割合は多く、子育てしながらもとても働きやすい環境です。子育て中でも仕事やりたいと言えば、やれるよ! と言って頑張らせてくれる。難しそうな時は、別の方法を提案してもらえる。ライフスタイルに合わせた働き方を選ぶことができる、よい職場環境だと思います。
子どもがいて、働き方に制限があっても仲間外れにしない。したいのに、しなくていいよと言われると辛いですよね。どのような形で自分は勤務したいか・勤務可能か、周りに伝えていけるといいですね。

草野先生-ご家族

<センターより>
例年センターが行っている「女性医師実態調査」で、子育て中の女性医師が当直をしている人数を把握しています。当院には子育て中(0歳~小学生まで)の女性医師が62人いますが、当直業務を行っているのは16人です。
当直業務を行っている女性医師へ二次調査を行い、8人の回答を得ましたが、「母親が当直をしているときに家事・育児を担当しているのは誰ですか。」という質問で、2名は親の手伝いがあるものの、6名は家事・育児のすべてを夫がしている、という回答結果で驚きました。また、当直中は、学会発表や講義の準備などにまとまった時間を使えると、有効利用されていることもわかりました。

今回の草野先生は、当直業務を行っている16人のうちの一人で、インタビューをお願いしました。小児科の先生は、子どもの急な発熱に対応するため夜の救急外来のニーズも高いので、大変だと思います。体力自慢ではないとのことですが、自衛隊で心身のしっかりとした軸を築いてこられたのでしょう。

男性医師は子育て中でも当直をしていますが、どうしたら子育て中の女性医師も当直をして経験を積むことができるか…、草野先生と一緒に考えてみました。
それぞれの家庭環境、職場環境で異なるかもしれませんが、できる、やりたいという思いがあれば、その思いを周りが尊重して、支援する体制をつくれば、当直もできるのではないかと思います。

また、パートナーが短時間勤務をすることを、その職場が尊重してくれていることも大事で、素晴らしいことです。長崎医師保育サポートシステムでは、夜の保育も担当できるサポーターさんがおられますので、家族だけでは両立が難しい場合は、是非ご相談ください。
センターとしては、子育ては母親が専任ではないこと、子育てはみんなで共有することを念頭に、当直をしたい母親が当直できる体制の整備をすすめていきたいと思います。

※今回のインタビュー記事は、ChatGPT搭載AIボイスレコーダーを使い文字起こしをしました。音声データをテキスト化したい方は、画期的に業務効率を上げることができます。製品をご紹介くださった長崎大学ダイバシティ推進センターの矢内琴江准教授にこの場をお借りして御礼申し上げ、読者の皆様にご紹介いたします。