
私たちのワークライフバランス実践術 No.29
男性の育児休業取得編(11)
長崎大学病院 事務部総務課(専門職員)大嶽 有史さん(40代)
<事務部のパートナー(育児休業中)とお子さん(8か月)>
『働き方改革の専門職員が7か月の育休を取ってみた!』
2025年5月26日インタビュー
※2025年7月から長崎大学 政策企画部政策企画課(主査)
Q1. 男性も育児休業が取得できることを、いつ頃からご存知でしたか。
A1. 私は、人事に携わる仕事をずっとやってきています。長崎大学に2005年に採用された当初からなので、かれこれ20年前から制度があることは知っていました。当時はまだ男性が取得するケースは本当に稀で、大学病院内での取得者はいなかったので「実際に取る人がいるのかな?」と思っていました。
Q2. 育休取得の期間ときっかけは。
A2. 子ども(第一子)が生まれた時から、7か月間取得して、今月復職しました。妻はまだ育休中で、子どもが1歳になる頃に、職場に復帰する予定です。取得については、まず妻の希望がありました。取得期間は、子どもの定期健診やワクチン接種などが落ち着く半年前後が、ちょうどよい区切りだと考えました。
Q3. ご家族の反応はいかがでしたか。
A3. 妻は「当然取るでしょう?ちゃんと取ってくださいね…」という感じでした。
Q4. 周囲(同じ職場など)から反応はありましたか。
A4. 妻が妊娠して安定期に入った頃から「育児休業を取ります」という話を課内で公表はしていて、それに向けて仕事の調整を進めていました。「長崎大学長が『男性育休100%宣言』されていますし、取らせてください!」とアピールしました。
当時の上司、池野静香課長からは「育児を頑張ってください!」と激励していただきました。他の課の方からは「お前、すごいな!そんなに(長く)取るの!?」って言われたりしました。男性の取得者は、これまで長くても2か月くらいで、7か月は前例が無いため驚かれました。
Q5. 育休前の仕事の調整は大変でしたか。
A5. 想定通り、やはり大変でした。「医師の働き方改革」の専門職員というポジションは、部下がいない主査みたいな感じなのですが、2024年度から始まった「医師の働き方改革」を推し進めている最中だったので…。
私が投げ出す形になった仕事は、業務に関する質問などを、電話やメールでやり取りしながら池野課長や他の専門職員や主査が代わりにやってくださいました。本当に感謝しかないですね。
Q6. 育休中の家事と育児の役割・パートナーとの分担はどのようにされていましたか。
A6. 100%私が担当することは、子どもをお風呂に入れることですね。復職した今でも、早く帰って入れています。寝かしつけは、母親じゃないと嫌だって、子どもがめちゃくちゃ泣くんですよ。なので、そこは母親に任せてしまっていますが、どうしても腕とか腰が痛くなるので、外出する時は、私が常に抱っこしていました。
大体、夫婦でうまく分担できていました。もともと家事は、お互いできます。私が子どものためにと変わった事といえば、食器洗いが丁寧になり、床に落ちている小さなゴミも、飲み込んだら大変!と見逃さずに拾うようになりました。
Q7. 印象に残るエピソードはありますか。
A7. 生まれてすぐの頃は、おとなしく泣き声も小さくて心配でしたが、生後2か月頃のワクチン接種の時に、注射を打った瞬間、すごく大きな声で泣いたんです。それ以降、声も大きくなって成長を実感できましたが、その声には、本当に驚きましたね。
Q8. 育休を7か月取得して良かったと思いますか。
A8. 育休の取得期間を決めるのは、人それぞれだと思います。働いているほうが正直、自由で融通が利くところもあると思います。育休の時は子ども主体、仕事の時は自分主体と考えていますが、子ども相手に長期間過ごすことがきつい人、大変な人もいると思います。
私は、子どもの成長が著しいこの時期に、育児に専念できた事が、すごくありがたかったですね。

Q9. 育休を取得して感じるプラス面・マイナス面はどんなことですか。
A9. マイナス面は、復職して戻ってきたら、病院の組織改編が進み状況が変わっていましたし、関わる周りの先生方も変わっていたので、そのあたりの感覚を掴む必要がありました。新しい組織がどういうふうに機能しているか、自分がいない間に決まったルールなど…探り探りで、過去を振り返って調べたり、間違ったところはないか確認しながら業務を進めていますね。
そのため、前ほどスピード感を持って突っ走ることはないですね。
プラス面では、改めて「自分の両親に感謝したい」という気持ちになりました。子どもって勝手に育つわけじゃなく、親が大切に苦労しながら世話をして育てていくからこそ、大人になっていくんだと、改めて感じています。
Q10. 育児取得の経験は、今後の生活・仕事面に生かされると思いますか。
A10. 生活面では、家事の分担ができると、お互いに本当に助け合えるようになると思います。
仕事面では、当然、育休を取った大変さがわかるので、経験者として語れる、親身になって育休を取る人に対して寄り添えるんじゃないかと考えています。
仕事の調整、復帰後のこと、保育所の申請や手続きの面なども含めて、大変ですよねって。実際に体験して痛感することもあるので、アドバイスできるかなって思います。また、定時退勤を意識して、濃密に仕事をこなして帰宅。子どものお世話時間を確保し、メリハリをつけて頑張っています。
育休中には、子どもと一緒に保育園の園庭開放に参加して情報収集したり、各地域の子育て支援センターが主催するイベントもたくさんあって参加しました。長崎市主催の「すくすく学級 パパデイ」では、親子遊びやおはなし会があり、同じ月齢の子ども同士で成長を促すのではないかと感じました。
初めての子を持つ父親が、育児に関する情報交換や仲間づくりの機会として開催されていて、こういう経験を男性職員にも伝えていければいいですね。
Q11. 育休取得に関心のある男性にお勧めしたいですか。アドバイスできることはどんなことですか。
A11. 是非とも、育休ガンガン取ってほしいですね。今の時代だからこそ、遠慮なく取ってほしいです。多分、皆さんは周りに遠慮して2-3か月くらいが目安と思われるでしょうが、あまり短い期間だと、代わりの人を雇えなかったりするんですよ。
事務部のケースになりますが、むしろまとまった期間の方が、代替職員を雇用しやすい面があります。私が不在の半年程度は、非常勤のフルタイマーが雇用されていました。中間管理職のポジションだと大変さもあるでしょうが、若い世代は男性育休が主流になるように、どんどんどん取っていいと思います。事前に取得予定であることを、勇気を持って上司に話して、それを調整するのが管理職の仕事なので、若い世代は全然気にする必要はないんです。
パートナーが妊娠して安定期に入ったら、育休の計画を立てましょう!父親の育児休業の申請は、育児休業を開始しようとする日の1か月前までに申し出ることが必要です。本学では、配偶者の出産前後の特別休暇(有給休暇)の制度も使えます。
詳しくは、本院総務課から毎月初めに部長・課長・科長・医局長などのメーリングリストで案内している「産休・育休前説明会」(基本毎月第3水曜に開催)に参加してください!
育児休業給付金に関しては、私の年齢が高いこともあると思いますが、基本給と、あまり変わりませんでした。本来、基本給の67%相当額(180日経過後は50%相当額)ですが、通常給与から引かれる掛け金などが免除されるため、手取り額はあまり変わりませんでした。
ただ1点注意が必要なのは、本学の事務局経由で2か月分まとめて振り込まれるのですが、手続きを早めにきちんとしていても、2か月くらい遅れます!1-2月分が4月に振り込まれたりして、時間差があるので注意が必要です。
Q12. 今後、長崎大学病院の中で、男性の育休取得が普及し、常態化していくには、何が必要だと思いますか。
A12. 職場の風土づくりですね。取りづらい雰囲気をどう変えていくか、自分が前例になり、取得しやすいきっかけになれたらと思います。責任感が強い人ほど、取りづらいと思うかもしれませんが、中間管理職が数か月の育休を取得しても、どうにかなるのだから、自分が取ってもいいよね、と思ってほしいです。職場の雰囲気づくりは必須ですね。
それと、今の時代より前に子育てをしてきた管理職の方々の理解度は、とても大事だと思います。
ただ、どうしても皆さん欠員補充を気にするので、究極的には、病院の財政が良くて、どの職種でも人手不足が生じれば、雇用を増やして速やかに解消できる…ような盤石な病院経営の基盤づくりが、実は一番大事だったりすると思います。
<センターより>
総務課の大嶽専門職員(担当:医師の働き方改革)とは、長崎大学ダイバーシティ推進センターが2017年に設置した「働き方見直し委員会」の委員として、私どもと一緒に活動した時からのご縁があります。
2019年~2020年には、大嶽さんの部下2名に本インタビュー(男性の育児休業取得編(6・7))を行い、上司の立場としてコメントをいただきました。その当時から、ご自身も育休を取りたいと宣言されていた通り、有言実行で育休取得を実現されました。しかも、7か月という長めの期間を利用し、共働きで子育てをする土台づくりをしっかり固め、家族3人で大変充実した生活を送られたようです。
男性職員の皆さん、育休について気になることがあれば、まるで専門職員のように詳しい大嶽さんにお話しを聞いてみてください!