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2025年度 医師の両立支援状況調査結果のご報告

2025.07.04

1.<調査の目的>
長崎県内病院の育児・介護休業制度など、両立支援策の取り組み状況や働き方改革の取り組みについて実態調査を行う。また、調査結果を、Webサイトやメールマガジンを通して情報発信を行うことで、個人や組織に働きやすい職場環境づくりを推奨する。

2.<対象と方法>
実施日:2025年6月
調査対象:長崎県内141病院
調査方法:調査票を郵送し、同封の返信用封筒やメールで回収。
質問内容:常勤・非常勤医師数、子育て中の医師数、育児休業・介護休業を取得した医師数、両立支援施設の設置など。
調査票:医師の両立支援状況調査

3.<結果と考察>
配付と回答数(回答率):配付141病院 回答109病院(77%)
結果:【集計抜粋グラフ

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①対象の病院数は、調査を開始した2013年度の156病院から漸減しており、今年度の調査対象は141病院、うち109病院から回答を得た(回答率過去最多77%)。8医療圏別にみると、上五島と対馬医療圏は回答率100%、県南医療圏の回答率が最も低く53%。その他5医療圏は75%以上の回答率であった。

女性医師の割合は23%で、これまでと著変なし。非常勤医師の割合は、男性15%、女性27%で、女性の非常勤割合は、2016年度調査(10年前)から過去最少

③回答109病院のうち、常勤医師は男性107病院、女性65病院に勤務。女性医師が常勤する65病院のうち10人以上が勤務する9病院は、すべて新鳴滝塾に加盟する研修病院であった。

④2016年度調査(10年前)から、離島・へき地(県南・五島・上五島・壱岐・対馬医療圏)の病院に勤務する女性医師は25人→35人前後へと増加している。

⑤子育て中(小学6年生までの子がいる)の男性医師は461人で、男性医師全体の25%、女性医師は145人で、女性医師全体の26%となり、これまでと著変なし。

⑥子育て中の医師は、男性・女性ともに、8医療圏すべてに勤務している。医療圏ごとの女性医師数に占める子育て中の女性医師の割合(子育て人数)は、壱岐100%(1人)、五島40%(4人)と高率であり、次いで長崎30%(95人)、県南29%(2人)、上五島25%(2人)、佐世保・県北21%(21人)、県央18%(19人)、対馬11%(1人)であった。

⑦2024年度に育児休業を取得した男性医師は13人。勤務先の内訳は、長崎大学病院10人、対馬病院2人、上五島病院では初めて1人取得した。女性医師は29人で、長崎大学病院18人、その他9病院で1~2人の取得。2024年度に介護休業を取得した医師は、いなかった。

★2024年度にセンターが貸出したマタニティウェアの利用者は13人であり、本調査で判明した育児休業取得女性医師は29人のため、利用は半数以下であると推察できた。県内で妊娠した女性医師が日々快適に働けるように、貸出事業の周知に努めたい。

⑧病院内に保育施設があるのは29病院で、閉鎖や休止した病院があり2013年度調査から過去最少。院内に病児・病後児保育施設があるのは5病院(うち新鳴滝塾に加盟する4研修病院)で、増加は見られない。

⑨今年度は初めて管理職の男女割合を調査した。女性管理職の割合は、院長5人(4.6%)、副院長9人(6.8%)、部長・課長等86人(15・8%)であった。

★2025年5月時点、長崎大学の女性教員割合は、26.8%と過去最多、全国屈指の割合です。また、女性教員在籍割合において、教授・准教授はいずれも20%以上、そのうち長崎大学病院では、教授3人(14%)、准教授3人(19%)です。県内の病院においても、さらに女性医師の管理職への登用が増えて、多様性のある考え方、働き方ができる組織にしてほしいと思います。

医療圏別の女性医師分布図など

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⑪2024年4月より「医師の働き方改革」の新制度が施行して1年が経過したため、取り組み状況を集約し紹介する。

★県内の病院数は減少傾向で、勤務する医師の男女比は著変ないですが、女性医師の常勤率は2016年度調査(10年前)と比較すると、55%から過去最多の73%に増加し、非常勤率は45%から過去最少の27%に減少。女性医師が常勤の勤務形態を維持して働きやすい環境になってきていると考えます。そのうえで「院内病児保育」があると助かるという声は、病院管理職には実現不可能と判断されるため、施設数が増加しません。子育て中の医師が多く勤務する新鳴滝塾に加盟する17研修病院での開設を増やすことが、今後の医師の両立支援の課題だと考えております。
「医師の働き方改革」は2年目となり、病院特有の業務である「当直」の負担をいかに軽減するかについて、各病院で様々な工夫が行われていましたので、是非、参考にしていただきたいと思います。

調査の貴重なデータは、長崎県の医療のために活用いたします。ご協力いただきました病院の皆様、ありがとうございました。