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とびだせ!ジャパン編-(1)『働き方・休み方は、日本とドイツの中間位がいいかも?!』森 由紀子 先生

2026.05.22

私たちのワークライフバランス実践術 No.31
とびだせ!ジャパン編(1)
家庭医診療所 内科・家庭医 森 由紀子 先生(50代)

〈ドイツ人のパートナー〉
『働き方・休み方は、日本とドイツの中間位がいいかも?!』
2026年4月10日インタビュー

<略歴>
●他県出身、長崎大学医学部卒業後、出身県の大学病院内科へ入局
●大学病院、公立病院、私立病院で内科医としての研鑽を積み、総合内科専門医、腎臓内科専門医として病院勤務
●卒後16年目、結婚してパートナーに伴い渡独、パートナーの勤務地デュッセルドルフに在住
●渡独後2年目ドイツ語医学専門用語試験(Fachsprachprüfung)合格後、制限付き就労許可(Berufserlaubnis)を取得し、現在の家庭医の診療所に勤務を始める
●渡独後4年目にドイツの医師免許(Approbation)取得
●家庭医専門医(Facharzt für Allgemeinmedizin)の研修のため2年間家庭医診療所、1年間一般外科病院勤務を経て家庭医専門医を取得して、家庭医の診療所に勤務中

Q1. 普段の生活、1日のスケジュールはどのようにお過ごしですか?

A1. 朝4時半に起床して、いろいろ準備しながら、朝食は夫婦それぞれで食べます。6時に出勤して、7時前に職場に到着。7時半から勤務開始で、13-14時頃まで外来を行い、その後15時まで書類作成等を行い退勤。自宅に帰り、夕食は私が作って、夫婦で一緒に食べます。就寝は22時です。

食事は私が全部担当していて、和食中心です。米飯、味噌汁、焼き魚など、お箸で食べる料理がメインで、ナイフとフォークはほとんど使いません! デュッセルドルフには日本人がドイツ国内最多の約7-8,000人住んでいて(ヨーロッパではロンドン・パリに次いで3番目に多い)、日本人街「リトル東京」があり、日本食のお店もあるし、日本の食材はいろいろ手に入ります。

Q2. 日本の医師・医療体制との相違点を感じますか?

A2. 日本では病院勤務で、病棟は1人主治医制だったので、24時間365日病院と繋がっている感じがしていました。ドイツで病院勤務もしましたが、チーム主治医制で、担当の時間が終わると後は当直に任せて帰ることができます。そこは、ずいぶん違いがあります。

ドイツでは病院勤務の場合、医師の給与体系は経験年数と研修医、専門医、指導医などの立場で決まります。どこで働いてもほぼ同じ基本給で、当直回数分だけ、多く稼ぐことができます。ドイツ人の医師は、スイスやオーストリアなどのドイツ語圏で自国より給与の高い国に流出しており、そのためドイツは医師不足の状況になっています。その分、外国籍の医師が増加しています。

私の同僚には、ギリシャ、ロシア、ウクライナ、ジョージア、中国から来た医師がいました。看護師なども多国籍でトルコ、セルビア、アゼルバイジャン、モロッコ出身のスタッフと一緒に働きました。当直回数は週1-2回が常態化しており、医師の疲弊も問題になっています。当直翌日はフリーですけど。

勤務形態は、若い医師の45%位は、パートタイムで働いているそうです。そうなると、子どもがいても働きやすいですね。男性医師は育休を半年間など長期で取るのが一般的です。しかし、実働人数はその分減ってしまうので、医師不足の状況が生まれます。

救急外来は病棟医が兼任するので、病棟で緊急事態があれば、救急外来はストップします。24時間で対応していますが、2-3時間待ちは当たり前で、5-6時間待ちのこともあります。

ドイツの医師は、自身が病気の時、子どもが病気の時は、迷わず休みますね。その場合、残りの医師で仕事がこなせているかというと、そうでもないのですが、職場の状況にかまわず休むところが、日本人医師の感覚とは違いますね。

私は現在診療所で働いていますが、医師1人の時もあるので、自分の体調が少々悪くても休めない、休みたくないのが日本人気質でしょうか。働き方・休み方は、「日本とドイツの中間位がいいのかなあ」と思います。

年間の休暇は週5日勤務のフルタイムの場合、30日間あり、必ず取得しないといけません(※日本企業の義務は5日間)。私の職場では、毎年11月末には、翌年の休暇の希望を職員ですり合わせて、業務に支障がないように計画します。長くて2週間は休めるので、1-2年に1回は日本に帰国していますが、両親とゆっくり過ごすことができています。

日本の医療レベルとドイツの医療レベルは同じ程度だと思いますが、日本の看護師のレベルはかなり高かった、よく教育を受けて医療知識も経験も豊富だった印象があります。日本人らしい気配りもあると思いますが、日本で働いていた時は看護師さんに助けてもらうこともあり、安心感がありました。ドイツでは、医師も看護師も患者さんも、いろんな国の人がいる状況なので、基本の考え方が同じ、ということがなく、働いていて難しさも感じました。

Q3. 滞在国でのやりがい・大変なことは、どんな所ですか?

A3. 現在の診療所では、来院される99%は日本人で、在留日本人を対象に診察や企業の駐在員の職場健診などを行っています。ドイツ国内や、ヨーロッパ各国から、いろんな不安を抱えて受診されます。

この診療所では日本と同じような医療が受けられる、日本人医師に日本語で相談できる安心感を与えられていることに、やりがいを感じています。アドバイスもしますし、患者さんを他院へ紹介して、戻ってくるドイツ語のお返事の内容を、患者さんに日本語で説明しています。

今の働き方を目指してきたわけではなかったのですが、いろんな出会いに恵まれて、社会の役に立つことができて良かったと思っています。家庭内では、ほぼドイツ語で話し、職場では日本語を使って仕事をしている状況ですが、言葉の壁は、やはり今でも大変なことではあります。

Q4. これまで一番悩んだ時期は?

A4. やはり、ドイツに行く決断をした時ですね。何とかなるだろうという気持ちはありましたが、もともと「海外で働きたい!」と思っていたわけではなかったので、悩みました。

Q5. ストレス解消法を教えてください。

A5. 体を動かすことですね。学生時代は医学部バドミントン部でした♪ドイツでは、日曜日はほとんどの店が閉まります。最初は「つまんないなぁ」と思いましたが、だんだん慣れてきて、休みの日には、自宅から2-3分の所にある森を散歩したり、サイクリングしたり、ハイキングしたりしています。

私は、発酵食品を作るのが大好きで、お味噌を作ったり、麴を使っていろいろな調味料を作ったり、キムチ、納豆なども自分で作ります。キッチンは実験室のような感じで、発酵によって食材が変化するのを観察するのが楽しいです。

Q6. 日本のもので、恋しいものといえば、なんですか?

A6.日本の桜並木ですね。桜の木はドイツにもあるのですが、美しい桜並木はありません。

Q7. 今後の人生設計について、どのようにお考えですか?

A7. ドイツで医師として必要とされる間は、働きたいと思っています。リタイアした後は、最終的には夫婦で日本に戻ろうかと話しています。

Q8. これから海外において、仕事とライフイベントを両立する皆さんへ、応援のメッセージをお願いします。

A8. 海外へ出ることで視野は必ず広がり、それが医師としてだけではなく、ひとりの人間としてより人生を豊かにしてくれます。興味があるなら計画的に、でも恐れずに飛び込んでほしいです。    

ドイツで働くためには、様々書類が必要になりますが、日本にいるうちに、できる準備をしっかりしておくことをお勧めします。大学のシラバスは大事で、渡独の際には、長崎大学の事務の方にとても丁寧に対応していただき、大変お世話になりました。

それでも外科系と心療内科の時間が不足していると判断されて、日本の医師免許をドイツの医師免許に書き換えてもらえず、試験を受けなければいけませんでした。大学で何を勉強したか、をきちんと伝えられる書類だと良いようです。

また、その国の語学も日本にいる時からしっかり勉強しておくと良いと思います。「留学」は英語でほぼ通用するので、飛び込んでいいいと思いますが、「在留」するのであれば、目的と準備も必要です。

ドイツに興味がある方がいらっしゃいましたら、私ができるお手伝いはさせていただきたいと思います。メディカル・ワークライフバランスセンターを経由して、メールでご連絡ください。

<センターより>
日本で15年間の実務経験から、悩みながらも海外移住された森由紀子先生。すでにドイツに10年住んで、日本語で診療をする医師という新たな実績を作られておりました。日本ではずっと病院勤務だったので、ドイツでは病棟患者さんを担当しない診療所勤務をしたいと思い、今の道を選ばれたそうです。

日本の病院勤務医師の働き方は、2024年から始まった「医師の働き方改革」によって、変わってきていることも多いと実感しますが、今よりもっと有給消化日数が増え、フルタイムではない働き方が増えて、ドイツの働き方に近づくと、日本の「働きやすさ」がさらにアップすると思います。患者さんのために…と頑張る日本人気質に、海外の良い体制を取り入れて、働きやすい日本になるといいと思いました。