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とびだせ!ジャパン編-(3)『オンライン診療は子育ての味方!!』荒木 貴子 先生

2026.05.22

私たちのワークライフバランス実践術 No.33
とびだせ!ジャパン編(3)
ミネソタ大学 荒木 貴子 先生(50代)

〈小学生の双子の子どもと、長崎大学出身のオーペア・ナニー〉
『オンライン診療は子育ての味方!!』
2026年4月30日インタビュー

<略歴>※もっと詳しい経歴は「輝く卒業生Vol.9」(2017年)をご覧ください。
●長崎県出身、医学部卒業後、関東の病院で臨床研修と勤務
●医師6年目より、アメリカ・ニューヨーク州の病院で内科研修
●渡米7年目より、カリフォルニア州の病院の内分泌科・下垂体研究室で4年間研究
●渡米11年目より、ミネソタ大学糖尿病・内分泌部門 Assistant Professorとして勤務(臨床85%・研究15%)
●渡米12年目、「輝く卒業生」インタビュー
●渡米13年目、双子を緊急帝王切開で出産
●渡米14年目、NIHグラント獲得を機に臨床重視から研究重視へ変更(臨床50%・研究50%)して、自身の研究室を運営、渡米20年目の現在は Associate Professorとして勤務

Q1. 普段の生活、1日のスケジュールはどのようにお過ごしですか?

A1. 朝は6時頃に起きて、まず1日の自分と子どものスケジュールを全部確認します。朝食は必ず和食(米飯・味噌汁・納豆・卵など)で、大学に行く日は、おにぎりをもって6時半に出勤、それから研究・教育に関する会議が5~10件ある日もあり、夕方18時頃には終わりますが、グラント獲得の書類準備がある時には、20時位まで仕事をして帰ります。

帰宅すると、子どもはナニーさんと夕食を済ませているので、私は10分で夕食を食べて、子どもに本の飲み聞かせをしながら一緒に寝ます。23時頃に起きて仕事をすることもあります。週2.5日は大学病院で朝7時半~外来診療です。隔週オンライン診療で、朝から夕方まで自宅にいて診療をしています。

この「家外来」の時は、朝食を子どもと一緒に食べられるので良いですね~。コロナ渦でロックダウンした2週間後に急に始まって、最初は機械の操作に慣れなかった患者さんも、今では皆さん上手です。下垂体のMRI画像や、患者さんから送られてきた血糖値データを画面共有しながら説明します。

初診の患者さんは対面診察ですが、大学病院から遠距離に住む患者さんには、本当に便利ですし、内分泌・代謝内科の医師は女性が8割で、子育て中の人も多いので大喜びです。私は離乳食を子どもに食べさせたりする時期だったので、本当に助かりました。

週末2日間は、ナニーさんは完全にお休みなので、私が食事を作り、子どもと遊んだりしますが、仕事がある時は、現地のパートのシッターさんにお願いします。 ナニーさんは、実は長崎大学の学生さんに1年間の期限付きで募集をかけて、今年で3年目、3人目の方が来ています。

オーペア制度(※)を利用して、我が家に住み込みで、専用の車があります。子どもの朝の登校までと放課後のお世話をしてもらいます。食事の準備や、習い事の送迎、くもんの学習プリントをしながら学習習慣をつけてもらい、本当に助かっています。

私も日本人の若い方と接するのは楽しいですし、子どもには、血のつながっていないお姉さんみたいで、とても楽しそうです。毎年新しい方が来られて、新しい風を感じて、子どもが成長できます。長崎大学の教育学部と留学支援課の方には、とてもよく対応していただいて、毎年本当に良い方が来てくれて、感謝しています。

※オーペア制度:派遣会社を通して海外の家庭に住み込みで滞在し、子どもの世話や家事を行う代わりに語学や文化交流を体験する制度、ビザ、健康保険が支給される

Q2. 日本の医師・医療体制との相違点を感じますか?

A2. アメリカの医療スタッフも患者さんも、寛容で優しいですね。職場にユーモアがあふれています。仕事をしながらも、ちょっと笑える冗談を言って、雰囲気づくりが上手ですね。そして、いろんな緊急事態の時にも、Flexible(柔軟)で、協力してカバーしてくれます。

多国籍のスタッフなので、母国の親が病気で急遽2か月間の休暇を取るとか、自身の病気で休んでも、どうにかカバーします。私も、子どもの急なイベントで診療開始が遅れる時がありましたが、患者さんから、「待っているから大丈夫だよ」と優しい声をかけてもらいました。

最近も、新しいナニーさんが運転に慣れるまでの1か月間、外来診療を全部オンラインにしたのですが、患者さんがみんな「いいよ~」と言ってくれました。

Q3. 滞在国でのやりがい・大変なことは、どんな所ですか?

A3. 大変なのは、お金のことを考えて仕事をしないといけないことですね。アメリカの医師は、経営の感覚が必要で、シビアです。臨床では、外来診療の売上の目標値を決めさせられて、患者数・売上高と目標達成率が毎月公表されます。
日本では、ちゃんと診療をして患者さんを助ければ良し、的なところがまだあるかも知れませんが、アメリカでは、「助けながら売上にも貢献しなさい」という感じです。

研究するには、グラントを確保し続けないといけません。しかも、目標と計画を立て、研究費をいくら確保できたのかが数字で開示されます。自分がやりたいこと、学生さんの未来を支える教育、論文作成など、何をするにも、研究費を確保しないといけません。研究費獲得の競争は近年激化していて、採択率は急速に低下しています。

研究費獲得ばかりやっていると論文投稿が少なくなるし…時々心が折れそうになるのですが、周りも同じように必死にやっているし、子どもたちが「ママはDoctorで、Teacherで、Scientistなのよ♪」と嬉しそうに言っていると聞き、頑張り続けようと思いました。

その時々の予算の中で研究のやり方や研究室のスタッフの働き方をマネジメントする必要があります。家の中でも、2人の子どもと、ナニーさん、パートのシッターさん、私で、負担が偏らないように、幸せにやっていけるようにマネジメントしています。

研究室と家と、最初はどちらも大変でしたが、だんだん慣れてきて、得意になってきましたね。うまくマネジメントできることに、やりがいを感じます。大きなグラントを取ってやりたい研究もしたいですが、費用対効果を考えて、少ない資金で、うまく研究すること、長く続くサスティナブルな研究をすることも考えています。細く長くやっていくことを考えるのも、最近の生きがいです。

Q4. これまで一番大変だった時期は?

A4. 高齢出産で手術後にICU入室になった時ですね。その経験から、自分がやりたいこと=研究をやっていこうと思いました。

Q5. ストレス解消法を教えてください。

A5. 運動です。ジムに行き、自宅でも日本のオンラインのレッスンを週2回受けていて、同じ年代の方と一緒に、楽しんでいます。

Q6. 子育てと仕事を両立するときの、家事の時間短縮策はありますか?

A6.食事は、週2回はミールキットを使用しています。アメリカのミールキットなので、メニューはハンバーガーやパスタなど。週1回は、在留日本人の大先輩が作ってくれるお惣菜を食べます。

あとは、簡単に冷凍食品を利用します。今日は「家外来」だったので自分で唐揚げを作りました。同僚は、食料品を含めた買い物をすべて、オンラインにしている人もいます。

Q7. 子育てから学んだことはなんですか?

A7. Flexibility(柔軟性)ですね。予期せぬ事態にも動じなくなり、しょうがない、こんなものかと思って、めげなくなりました。落ちついて、優先順位を考えて対応できるようになりました。それは、仕事でも役に立っていて、突発的なことも、冷静になって考えることができます。

息子は公立学校の特別支援プログラムに、家の前まで来るスクールバスで通っています。ドラムと水泳が好きで、算数が得意です。私は、初めて知った自閉症の世界をともに歩み、楽しく学んでいます。

娘は、別の学校で、ナニーさんが車で送って通っています。ラクロスを頑張っています。私は2人の子育てを楽しんでいて、最近はアメリカ人の女性医師からもよく子育てについて相談を受けます。

マウント・ラシュモアへドライブ旅行

Q8. 日本のもので、恋しいものといえば、なんですか?

A8. 美味しい和菓子ですね。

Q9. 今後の人生設計について、どのようにお考えですか?

A9. ミネソタ大学には定年退職はありませんので、なんと、90歳代の方も働いています。余生をゆっくり過ごしたい人も、死ぬまで仕事をしたいという人もいて、私は後者です。健康で、死ぬ前日まで仕事をしたいですね。

Q10. これから海外において、仕事とライフイベントを両立しようとする皆さんへ、応援のメッセージをお願いします。

A10. 海外で働きたいと思ったら、挑戦してください。道は開けます。諦めないで頑張ってみてください。ミネソタに来てくれたら、私が若い世代への協力・未来のサポートを惜しみなく頑張りますよ!

<センターより>
荒木貴子先生から、「オーペア制度で来てくれる長崎大学の学生さんがいないでしょうか?」というメールをいただいた時に、希望者がいるのか、アメリカでお子さんの世話をしながらの生活がうまくいくのかと、心配でなりませんでしたが、今年でもう3人目となり、良い環境ができているということに驚きました。ご自身のやりたい研究生活と双子の子育て生活を、アメリカ流で頑張っておられて感動しました。

オンライン診療が普通に行われている状況、どんな理由でも休みやすい環境など、まだまだ日本は変われると思いました。その分、医師にも経営感覚が必要というシビアな面はありますが、そこも日本の医療に必要なことかもしれません。