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メディカル・ワークライフバランスセミナー~仕事と介護の両立を考える~を開催しました

2013.09.11

2013年9月11日(水)長崎大学医学部良順会館2階 ボードインホールで、メディカル・ワークライフバランスセミナー~仕事と介護の両立を考える~を開催しました。
長崎大学、病院関連の方約40名と地域病院等学外の方約20名の総数約60名の来場がありました。
ご参加いただきました皆様、お忙しい中大変ありがとうございました!!

はじめに、主催者である中外製薬より情報提供がありました。
健康寿命(介護や支援を必要としない)と平均寿命について、平成16年度と平成22年度の調査比較をし、近年は平均寿命は延びたが、健康寿命は短くなっているとのことでした。健康な体を維持して長生きできることが理想ですね。
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講演Ⅰ 「高齢者の転倒」
講師: 青栁 潔先生  長崎大学大学院医歯薬学総合研究科公衆衛生学分野教授

<ご講演の主な内容>
●日本人に大腿骨頸部骨折が少ない原因は転倒頻度が低いこと
●転倒の原因について(リスクチェック表)
●転倒の予防としてのロコトレ・歩き方のポイント

<会場での質疑応答>
Q:大腿骨近位部骨折が海外では減ってきているが、日本ではむしろ増加しているのはなぜですか?
A:欧米では健診率が高くなり、転倒予防対策が浸透してきている。また、薬剤の導入が進んでいる。(日本では5年遅れの導入)一方ではきちんと投薬が継続されていないことが懸念されています。

Q:転倒頻度が白人に比べて日本人は低いようですが、足が短いからという根拠はありますか?
A:白人の下肢長を測り、横軸を足の長さ、縦軸を骨量として調べたら、同じ人種であっても足の短い方が骨折しないというデータがある。よって、大腿骨頸部骨折は足が短い方が有利であると思います。

<参加者アンケートより感想抜粋>
・大腿骨骨折の予防法があるという興味深い内容でした。(30歳代)
・転倒の原因、歩き方のポイント等役立ちました。(60歳代)

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講演Ⅱ 「仕事と介護の両立のために~事前の心構えと働き方改革が重要~」
講師: 佐藤 博樹先生  東京大学大学院情報学環教授

<ご講演の主な内容>
●介護と仕事の両立のポイントは、①事前の心構え②自分で直接介護をせずに、介護サービスのマネジメントに注力することが基本③両立を最優先し、両立を容認する職場環境づくりを。一人で抱え込まず、社内・外の専門家に相談すること④40歳、65歳、75歳の節目で、親子(兄弟姉妹や配偶者)で話し合う機会を設ける

<会場での質疑応答>
Q:要介護になったら子供や嫁が看てくれる、介護サービスは受けたくないという親の考えだった場合、どのように働きかけたらよいですか?
A:生活の質を理解することは大切です。親御さんが元気なうちにお互いの希望を話し合うこと。例えば、素人が入浴介助するよりも専門家が安心であるとか、第三者、ケアマネージャーを介して話し合うことも必要です。女性に負担がかかりやすく、看護職の方の親は仕事柄慣れているだろうと期待も高いようです。そのため離職される方も多いと聞きます。再就職も比較的可能でしょうが、離職して介護に専念するのはもっと大変です。

Q:講演の中で「自分で直接介護に携わるのではなく、社会的サービスや制度をどう利用するか、マネジメントすることに力を入れなさい」という予想していなかったポイントが参考になりました。仕事と介護の両立をしている方の1週間のタイムスケジュール(配布資料16P)一例で、親と在宅している時間が長いように見受けられますが、この時間帯は主体的に自分が介護している時間になるのでしょうか?
A:自分がインタビューしてケアプランを作成していないので、具体的な介助内容までは不明ですが、夜間のトイレ補助などもあるだろうし、全く介護に携わらない、関わらないということではないです。

Q:介助にはまってなんでもしてしまう人もいれば、客観的にサポートできる人等もいて、心理的な自分のコントロールが必要になってくると思いますが、何かアドバイスをもらえますか?
A:難しい問題ですが、介護の問題を抱えている方同志で情報交換し、共感共有するなどされるとよいと思います。

Q:長崎大学では、子育て支援については目立ってアピールしているが、介護についても同様にしてほしいと思います。
A:介護を大事な課題として理解し、取り上げられ出したのが、ここ数年。厚労省が出している資料などを医者版にアレンジして、大学が職員に配るなどするとよいかもしれません。伊東先生がこのセミナーを開いたことに意義があったと思われます。
センター長:昨年、介護に関するアンケートを病院職員に実施してみて、介護に直面したら現在の働き方のままでは両立できないと思っている方が多いにも関わらず、介護サービスに関しては知識のない方がほとんどでした。そのため佐藤先生をお招きして、ぜひお話しいただきたいとセミナーを開催しました。また、計画中ですが、大学の制度も含めた介護準備ハンドブックの制作を検討しています。今後ともセンターに期待していただけたらと思います。

<参加者アンケートより感想抜粋>
・場合によっては離職しようかな・・・と考えていましたが、今一度考え直そうと思いました。(50歳代・介護中)
・介護休業の活用の仕方を教えていただけたのが、すごく参考になりました。(30歳代)
・非常に勉強になりました。(30歳代)
・今の自分にタイムリーでした。(50歳代・介護中)
・ぜひスポットや2~3日急に年休を取ることが可能な環境を作ってほしい。長期の介護休業も取りやすい環境を作ってほしい。早急に!(40歳代・介護可能性あり)
・両立の体験者のお話も聞いてみたいです。(50歳代・介護可能性あり)
・介護保険についてはとても有用でした。親について考える機会をいただきました。センターに大変期待しています。(40歳代)
・仕事と介護の両立について考え方がよくわかりました。今後もこのようなセミナーを開いてほしい。(40歳代)
・自身は65歳ですが、子は子育て中で親の面倒をみる段じゃない様子。育児と介護を同時に背負わされている家族の実態を知りたい。(60歳代・介護可能性あり)
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写真左:佐藤博樹先生 中央:センター長 右:青栁潔先生

<伊東センター長より>
私たちのセンターが設置されてから1年半が経過しました。育児と仕事の両立でセンターに相談に来られる方はいらっしゃいましたが、介護の問題で相談に来られた方はいませんでした。ですが、今年の3月に管理職の方で介護を理由に離職された方が数人いらっしゃると伺い、衝撃を受けました。それで今年は仕事と介護の両立について取り組んでいます。なかなか難しい問題ですが、みなさんのお力をお借りしながら職場の雰囲気づくりから取り組みたいと思いますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。