新着情報・コラム

  • 調査報告

2020年度 医師の両立支援状況調査結果のご報告

2020.07.20

1.<調査の目的>
病院経営者・管理者のワークライフバランス施策に対する認識を把握し、長崎県内病院の育児・介護休業制度等の両立支援策の取組状況の実態調査を行う。また、調査結果を、Webサイトやメールマガジンを通して情報発信を行うことで、働きやすい職場環境づくりを推奨する。

2.<対象と方法>
実施月:2020年6月
調査対象:長崎県内149病院
調査方法:調査票を郵送し、同封の返信用封筒やメールで回収。
質問内容:常勤・非常勤医師数、子育て中の医師数、育児休業・介護休業を取得した医師数、両立支援策の取組状況、ワークライフバランス施策の認識についてなど。
調査票:医師の両立支援状況調査

3.<結果と考察>
配付と回答数(回答率):配付149病院 回答111病院(74.4%)
結果:集計グラフはこちらをご覧ください。
【集計抜粋グラフ】

★2020年度医師の両立支援状況調査-病院の集計表グラフ)

【111病院の調査結果】
長崎県内の111病院に勤務する女性医師の割合は、過去5年間は23%前後で推移しており、2020年度は22%であった。勤務形態を常勤対非常勤の割合で比較すると、女性医師は、70%対30%となり、過去4年間は約6:4であったため、2020年度は常勤で働く女性医師が増加している。男性医師は、86%対14%、過去4年間は約8:2であったため、男性医師も常勤で働く割合が増加している。常勤医師割合の男女差(男性>女性)は、過去4年間は20%台であったが、2020年は16%に縮小している。
センターが把握している情報では、育休取得後に、離職や長期休職をする女性医師は減少しています。育休取得後も当たり前に現職復帰する女性医師が増えたことで、常勤割合が増加傾向となっている可能性があります。スムーズな復職の流れを止めないように、病院や医局の意識改革をお願いします。

子育て中(小学6年生までの子がいる)の女性医師は144人。女性医師全体の27%、医師全体では6%で、過去3年間と比較して著変ない。女性医師が勤務しているのは81病院、そのうち、子育て中の女性医師は36病院(2019年度と同数)に集中して勤務している。

2019年度に、県内の病院で育児休業を取得した女性医師は33人(うち長崎大学病院12人)、男性医師は2人(いずれも長崎大学病院)であった。また、2019年度に、県内の病院で介護休業を取得した医師は0人であった。
育児休業は、父母共に取得できます。妻の産休中に夫が取得した場合、夫は2度目も取得できます。配偶者が専業主婦(夫)でも休業できます。核家族化した現代の生活様式に積極的に取り入れて、新しい家族が増えた幸せで大変な時期に家族の絆を深める時間として確保し、子育てを共有してほしいと思います。

「両立支援制度・施設の整備」について、短時間正規雇用制度を導入している病院は42%、病院内に保育施設がある病院は33%、病院内に病児・病後児保育施設がある病院は5%で、低調なままである。
研修医を含め若い世代の医師が多く勤務する「新・鳴滝塾」16病院に対象を絞ると、短時間正規雇用制度は9病院、病院内の保育施設は13病院、病院内の病児・病後児保育施設は4病院(長崎大学病院、佐世保共済病院、佐世保中央病院、長崎県対馬病院)のみです。若い世代の医師が、長崎県内の病院で研修-専攻-研究-キャリア形成の期間を過ごしたいと思えるように、子育てや介護等のために時間制約があっても、就労が継続できるように、今後さらに環境整備を進め、導入する病院が増えてほしいと思います。

「両立支援に関する取組状況」について、B「育児休業の取得や復帰体制の周知・対応」、D「介護休業の取得や復帰体制の周知・対応」は、どちらも77%の病院で取り組まれている。しかし、A「男性が育児休業を取得しやすい職場の風土作り」は25%、C.「過去3年間に男性職員の育児休業取得実績がある病院」は15%と低調。
男性の育児参加については、日本全体の課題です。「労働環境の改善」「男性の育児を容認する社会づくり」「男性自身の意識改革」等に、病院管理職の方が率先して取り組むことによって、速やかに課題は解決できると思います。育児休業を取得した男性の満足度は高く、家庭は円満となり、働く意欲が増加するようです(私たちのワークライフバランス実践術 男性の育児休業取得編)。ぜひ、取り組んでください。

【病院経営者・管理者のワークライフバランス施策に対する認識の経年推移グラフ】

ワークライフバランス施策に対する認識推移(2013・2015・2020)

「ワークライフバランス施策に対する病院経営者・管理者の認識」については、調査開始時の2013年、5年前の2015年、今年度の2020年を経年比較した。
<基本的スタンス・姿勢について>の設問a-d項目は、すべての割合が経年的に上昇し、施策の理解が深まっている。
<メリットについて>の設問e-m項目では、明らかな上昇傾向はなく一定の割合を維持している。ワークライフバランス施策の目に見えるメリットを実感するには、まだ時間がかかると思われる。
<デメリットについて>の設問項目のうち、n「病院にとって負担が大きい」と答えた割合は、明らかな減少は見られないが、o-r項目は、経年的に減少し、施策取組に不利益はないとの意識改革は順調に進んでいると思われる。
新型コロナウイルス感染症の流行により、県内病院の取組姿勢に変化があるかを調べたところ、「従来の働き方やワークライフバランスの改善をより一層取り組む必要があるか」の設問では、「そう思う」と回答した割合は25%、「ややそう思う」は52%で、77%の病院が働き方やワークライフバランス改善に拍車をかける必要性を感じていました。密閉・密集・密接を避けるために、オンラインによる診療・会議を活用する、医療従事者の子どもの預け先が確保できない事態に備えて病院内保育施設を整備する、病院内で一時保育を開設する、というような多様化・細分化された柔軟な対応が、今後さらに必要になりそうです。

【医療圏別の女性医師について】

111病院に勤務する女性医師538人のうち、子育て中の女性医師は144人(144/538=27%)であった。医療圏別に見ると、長崎医療圏の女性医師は最多の319人(319/538=59%)が勤務し、そのうち子育て中の女性医師も89人と最多。子育て中の女性医師の62%(89/144=62%)は、長崎医療圏で勤務している。
続いて、県央医療圏に103人の女性医師、うち子育て中の女性医師は28人(28/103=27%)、3番目に多いのは佐世保・県北医療圏86人の女性医師、うち子育て中の女性医師は17人(17/86=20%)であった。3医療圏(長崎、県央、佐世保・県北)に勤務する女性医師が94%を占めるが、すべての医療圏の病院に女性医師および子育て中の女性医師が勤務している。
長崎県内の医師の仕事と子育ての両立を応援する「長崎医師保育サポートシステム」の対象地域は、長崎・県央医療圏、「地域病院における長崎医師保育サポートシステム」は、その他の医療圏を対象としています。長崎・県央医療圏と佐世保医療圏のシステム導入病院では、利用中の医師からご好評を得ています。「地域病院における長崎医師保育サポートシステム」は、病院単位で導入前のニーズ調査、導入後の調整等にご協力いただければ、どの医療圏の病院でもセンターがサポートしますので、利用することが可能です。特に、病院内や近隣に病児・病後児保育施設が整備されていない病院での導入をお勧めします。「働きやすい病院」としての評価は、子育て世代の医師の「働きたい病院」として選ばれることはもちろん、患者さんに「豊かな医療を提供できる病院」になると思います。みなさんの職場環境づくりにご活用ください。

長崎県内の医師が、イキイキと仕事と生活の両立ができるように、センターが推進する「あじさいプロジェクト」活動をご支援ください。

医師と子育て女性医師の分布図-2020

調査の貴重なデータは、長崎県の医療のために活用いたします。ご協力いただきました病院の皆様、ありがとうございました。