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『共働き子育て経験のある教授』江石 清行 先生

2019.11.08

私たちのワークライフバランス実践術 No.19-①
共働きの上司が勧める「育児の共有」
長崎大学病院 心臓血管外科(教授) 江石 清行 先生(60代)

<皮膚科医のパートナーと成人したお子さん1人>
『共働き子育て経験のある教授』
2019年11月8日インタビュー

令和元年度(2019年度)に長崎大学病院で育児休業を取得した男性職員は、過去最多の6名です!
そのうち、医師2名は同じ診療科ということで、教授・医局長・育児休業を取得した男性医師へ緊急インタビューを行いました。

Q1. 男性でも育児休業が取得できるということを、いつ頃からご存知でしたか。

A1. 2〜3年前に、メディカル・ワークライフバランスセンターからのパンフレットなどで、「男性の育児休業」のことを知りました。以前から、共働きの医師についての記事もいくつか読んでいて、男性が育児も一緒にするという話は知っていました。

Q2. 秋に2名の医局員が時期をずらして2週間程度の育児休業を取得されたそうですが、なぜ育児休業取得の促進を考えられたのですか。

A2. 「男性の育児休業」を知った時に、うちの科でも取得させたいと思っていました。
「働き方改革」の推進を考えて、医局員には、「計画的にもっと休んでいいよ、週末は交替で休んで家族と過ごすといいよ。」と言うのですが、実際は、休日も出勤する人が多く、仕事を休むことに抵抗を感じる人もいます。

そこで、医局長の三浦先生が考えて、制度利用の話を持ってきました。この「育児休業」は法律で定められた制度なので、抵抗を感じないできちんと休んでもらえると思って、「ぜひやろう!」と言いました。

Q3. 実際に医局員が取得してみて、先生の感想はいかがですか。

A3. 実際、いつ取得するのかは意識していなかったので、手術の時に、いつもと違うメンバーだと気付き、育児休業中だということを知りました。

私はいつも、手術は少人数でできるほうが良いと言っています。昔から、心臓の手術は大変だといって、4〜5名の医師で行うのですが、慣れてくると2〜3名の医師でもできると思います。
いろいろなメンバーと、少人数での手術を経験できる良い機会だと思いました。

Q4. 育児休業を取得した男性の先生に、変化がありましたか

A4. 育休から復職して戻ってくると、笑顔が普通に見られるようになっていました。笑みをたたえた人間の表情はこんな顔で、私が普段見ていた医局員の顔は、疲れてストレスを抱えた顔だったんだと気づきました。2週間休んで、やる気を持って帰ってきてくれたのだと思います。

Q5. 他の診療科にもお勧めしたいですか。

A5. 個人的には、まとまった時間で育児に関わっていないと、たまに夕方早く帰って「手伝ってよ」と言われても、何をしていいか、わからないと思います。
育休の時に、オムツを替えたり、夜泣きの対応をしたり、お風呂に入れたりすることに慣れれば、育休が終わっても一緒に子育てに参加できるし、非常に必要なことだと思います。

男性の育休は、育児参加のきっかけとなり、夫婦の生涯にわたって影響することですから、夫婦関係にも違いが出ると思いますよ。共働きで、子育ての苦労を共有することは、大事ですね。

Q6. 今後、長崎大学病院の中で、男性の育児休業取得が普及し、常態化していくには、何が必要だと思いますか

A6. やはり意識改革が必要だと思います。長く病院にいて、長く手術に入って、一生懸命仕事をしないといけないという意識が強いですよね。

また、昔は大学の医局には医師が多く、若い医師がたくさんいました。
今は、医師の数も少ないので、若い医師が、必要な仕事に専念できる環境にしていかないといけないと思います。

例えば、カルテ記載は若い医師の勉強にはなりますが、クラークを活用することができます。業務を効率よく、良い体調で仕事を行えるように、業務内容を見直す必要があります。

Q7. 妻の産休中に夫が休業した場合、夫は2度目の育児休業が取得できますが、どう思われますか。(長崎大学規則集-常勤教職員の場合)

A7. もう1回、2週間くらい取得してもいいと思いますよ。連続して1か月だと、外科医は、手術の感覚が離れてしまうけど、でもその場合は、短期留学したと思えばいいですね。(出産時の2週間と、間をあけて、妻の復職時に再び2週間という取得の仕方は、)パートナーは、夫の助けを再び得ることができて、夫の存在価値が高まるでしょうから、本人にとってもいいでしょうね。

<センターより>
2019年、心臓血管外科の男性医師2名が育児休業を取得されました。長崎大学病院では、男性医師の育児休業取得は、2010年に1名取得してから9年ぶり、男性職員の育児休業取得は2016年に3名取得してから3年ぶりとなりました。

なぜ、超多忙な診療科で、男性医師の育児休業取得が実現したのかを探るため、インタビューをお願いしました。わかったことは、教授・医局長に、「育児の共有に対する理解がある」ことでした。若い世代の考えは柔軟でも、職場の雰囲気や管理職の意識は変わらず、現場でのギャップに戸惑うという声も耳にします。

本院の心臓血管外科は、管理職がしっかりとした男女共同参画の意識をもって、日常的に忙しい医局員に、ライフイベントに合わせて休暇を取るように推進されていました。そして、育児の共有を経験した2名の男性医師は、育休取得はプラスでしかないと、断言しています。

パートナーも、育休を取ってくれて良かった、周囲に感謝したいというお気持ちです。 育休制度を利用すると、素晴らしいワーク・ライフ・シナジー(相互作用)が生まれるようです。
ぜひ、男性の育休取得を職場内で推進してください!

●共働き家庭で育ち、現在共働き子育て中の医局長 三浦崇先生インタビュー

●第2子が生後2週のときに2週間取得 北村哲生先生インタビュー

●第1子が生後6週のときに2週間取得 谷川陽彦先生インタビュー