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輝く卒業生インタビュー 北村 理子 先生

2018.12.06

VOL.11
北村 理子 先生
・大村市医師会 理事
・北村理子クリニック皮ふ形成外科 院長
・大村看護高等専修学校 非常勤講師

<略歴>
2001年(平成13年)3月 長崎大学医学部卒業
2001年(平成13年)4月 形成外科に入局し同附属病院で研修
2002年 国立長崎医療センター
2004年 周南記念病院
2005年 大分厚生連鶴見病院
2006年 国立病院機構長崎医療センター、結婚
2009年 開業前の修行のため関西へ単身赴任、カリスクリニック勤務(大阪)
2011年 鈴木形成外科勤務(京都)
2012年(平成24年)9月〜 北村理子クリニック皮ふ形成外科 開院
2016年〜 大村市医師会理事(現在2期目)
2017年6月 第1子出産

<所属学会>
日本形成外科学会(専門医)
日本美容外科学会(正会員)
日本美容皮膚科学会
日本抗加齢美容医療学会(理事)

医師を志した時期や理由をお聞かせください。

子どもの時から5歳上の兄と一緒に、パソコンや電気回路などをいじって遊んでいて、自然と理系を目指していました。その兄は理工系の研究職に就きました。
私も同じように、理工学部に行こうと思っていましたが、高校3年生のとき、ふと進路を変えました。

「ある分野を追究するために集中してずっと研究室にいる姿は私には似合わないかもしれない、人と話すことが好きなので、人と接する仕事がしたい」と考え直して、それなら理系では医師だろうと、医学部を受験しました。

どのような医師を目指しましたか?ロールモデルとなった方はいらっしゃいます

医学部では、女子学生が約4割いる学年でした。たくさんの素敵な同級生や尊敬できる先輩女性医師とのご縁をいただいて、ある1人の先生を目指すのではなく、いろんな先生の良いところを学んでいきたいと、いつも思っています。

診療科を選ぶときは、漠然と外科系とは決まっていました。いろんな人と接していきたいという気持ちから、赤ちゃんからお年寄まで、性別も関係なく幅広く診る分野と考えて候補を絞り、形成外科に決めました。

形成外科は、見た目を良くすることができますし、結果がわかりやすく、患者さんの望む結果を求められて大変なところもありますが、モノを創りだす(=乳房や耳などを形成する)ことのできるクリエイティブな外科ということに魅力を感じました。

これまで、一番つらかったことはどのようなことでしょうか?

その時々で、つらかったことや悩んだことはありましたが、嫌なことはすぐ忘れるようにしているので、あまり重たく考えていることはありません。

一つだけ衝撃的な出来事として忘れられないことは、当時小学生の患者さんに言われたひと言です。
全身の60%以上という重症の広範囲熱傷の男の子でした。形成外科医として3年目になったばかりだった私は、彼の命を助けたい一心で、毎日何度も救命病棟の個室に足を運び、尿量や検査データ、バイタルの数値とにらめっこをしていました。

ある時、データをチェックして部屋を出ようとした私に、鎮静で眠っているとばかり思っていた彼が、「ぼくのところに来たんだから、ぼくと話をしていって…。」とささやきました。

まさに「病気を診て人を見ず」で、あやうく頭でっかちの医者になってしまうところを、彼から救ってもらいました。その後、元気になって成人した彼と偶然再会した際に御礼を伝えましたが、「おぼえとらんよ・・・。」とちょっと照れくさそうでした。

院長や医師会の理事という立場には、どのような経緯でなられたのでしょう

医師になって3年目に夫と知り合い、医局人事で他県に転勤している間は遠距離恋愛で、6年目に長崎県内に戻ってから結婚しました。

入局時から形成外科は、県外の転勤が多いことは分かっていましたが、当時は「楽しそう!」と楽観視していました。いざ結婚してみると転勤は難しくなりました。仕事はずっと続けたいと思っていたので、自分で働く場所を見つけるしかないと考え、自営業をしている夫の仕事の拠点である大村市で開業することにしました。

医師会の理事は、現在2期目、3年目になります。開業して3年目に会長の朝長昭光先生より直接お電話をいただき、「若手の声が聞きたい、女性に入ってほしい。」というお考えを聴きました。開業当時、私は長崎県内で一番若い医師会A会員だったそうです。

1期目は、いろいろ勉強したいという思いもあり、お引き受けしました。
2期目は、子どもを産んだ後で、夜の会合などに出られないかもしれないとお伝えしましたが、ありがたいことに「女性としての意見、出産後という状況も含めて、声を挙げてほしい。」とおっしゃっていただき、継続しました。

院長や医師会の理事になって、考え方が変わったことはあります

院長としては、なるべく診療を休まないようにと考えています。私の出産前後の時期は、長崎医療センターの形成外科部長 藤岡正樹先生のご配慮で、代診の医師を派遣してもらい休まず診療できました。

開業医は、時間を自由に裁量できますが、1日休むと赤字ですし、スタッフを養う責任もあります。今回、私が医師になってから一番長い休みが産後休暇の2週間で、赤ちゃん連れでクリニックに復職しました。

医師会の理事としての役割は、若手の担当部署である福利厚生委員会で、医師会内の旅行や親睦会の幹事をしています。また、医師会活動の一環として、大村看護高等専修学校(准看護師の養成学校)の運営や講師も担当しています。

2012年に開業してからの3~4年は、自分のクリニックを運営していくだけで精一杯でしたが、2016年から医師会の理事として活動することで、視野が広がり、地域医療について考えるようになりました。
そこから、保険制度のことや国とのつながりなど、知らないことがたくさんあり、学びの場になっています。

私から医師会長に、開業医の看護師不足の改善に向けて、潜在看護師さん(資格を持っていても、働いていない方)が現場に復職する場合に、不安を減らすための研修をすることや、職場を探す時に医師会を介して紹介できないか、と提案したことがあります。

看護師サイドの女性目線で思いついたことだったのですが、医師会長に「面白い」と言っていただき、現在研修プログラムの話が進んでいます。

院長や理事になってよかったと思われることはどのようなことでしょうか

自分の仕事場を作れたことが一番ですね。
自分が仕事をしやすい環境で、一生仕事を続けられることが、一番安心できます。

産前は陣痛がくるまで仕事をして、産後はクリニック内の託児室に保育士を採用して我が子を預けることで、仕事復帰ができました。

妊娠がわかってから周辺の保育施設を調べると、希望に沿った保育園が見つかりませんでした。
仕事を続けるためには、自分でどうにかするしかなく、処置室の1つを託児室にして、患者さんも利用できるようにしました。

自分が親になって初めて、お母さんが受診する間に小さい子どもを短時間でも預かってくれる、さらに資格を持つ保育士さんがみてくれるとなれば、安心してクリニックに来てもらえるだろうということに、気がつきました。
患者さんのニーズに合わせて、自分のアイデアを形にしていくことができるのも、院長としてすごく面白いことだと思っています。

また、医師会理事に女性がいることは自然なことと思いますので、「女性の声を届けるんだ!」なんて気概があるわけではありませんが、私が親になって気づいた些細なことも役に立つことがあるのではないかと思います。もっと女性理事が増えることで、医師会が変わるといいですね。

大変なことはどのようなことでした

子どもができてからは、夫とのスケジュール調整ですね。医師会の理事会は月2回、それ以外に大村看護高等専修学校に関する会議などがあります。学会やセミナーにも行きたい。専門医も維持しなきゃいけないし、引きこもってはいられません。

夫とは、前の月に翌月のスケジュールの優先順位をお互いに考えながら、外出の予定、子どもをみる当番を決めていきます。夫は、とても子ども好きで、おむつ替えも抵抗ないですし、夜中のミルク当番は交代でしてくれて、産後でも一日おきに夜ぐっすり眠ることができたので、大変助かりました。

医師会の会議を進行する方には、長びくことがないように時間の管理をしてもらえると助かります。主婦は会議の後にすることがたくさんあるのだけど…と思うことがありますね(笑)。

また、最近は所属学会で託児ができるようになり大変助かっています。東京・大阪・福岡などの出張の際に夫のスケジュールが空いていない時は、ネットのベビーシッターマッチングサービスもよく利用しています。滞在先のホテルに現地のシッターさんに来てもらい、子どもを預かってもらいます。
クレジットカード払いもできて、簡単便利でいいですよ。

これからやりたいこと、今後の予定や夢などはございますか?

今は子育てが主軸になっていますので、まずは子どもを健康に育てたいです。

仕事については、外科医として目と手が動く限りは手術をたくさん続けていきたいですね。そしてライフワークと思っている赤ちゃんのあざのレーザー治療(保険適用)です。
安全で効果の高いレーザー治療について、お悩みの患者さん、お母さんたちにもっと情報を知っていただきたいと思っています。

開業前にご縁があって勤務させていただいた京都の鈴木形成外科では、レーザー治療をいち早く取り入れられていました。そこで、あざは放っておいても自然には消えないものが多く、より早い時期に治療を開始することできれいになって、喜んでもらえるということを知り、私の一生の仕事として続けていきたいと思いました。

長崎県内全域や大学病院からも患者さんを紹介していただいており、県外からもインターネットで調べて多くの患者さんが来院されます。

リラックスするための方法や趣味はお持ちですか

もともと、演劇やミュージカルを観ることが大好きです。
落語も好きで、関西にいるときは、しょっちゅう行っていましたし、長崎に戻ってからも、休診日に東京まで行ってお芝居を観たり、落語の寄席のために日帰りしたりしていました。

子どもができてからは行けていませんが、今は休日はゆっくり子どもと過ごして、一日中絵本を読まされています。そういった時間も楽しいですね。
ドライブ中のBGMとして、子どもにも落語「寿限無」などを聞かせていますよ。将来は一緒に観劇に行きたいですね。

毎日子連れで出勤。昼休みは子どもと過ごせる貴重な時間。

女性医師、若い医師へのメッセージをお願いいたします。

医師は、やりがいのある仕事なので、仕事をしないことはもったいないと思います。
スタッフには、「私たちの仕事は、間近で患者さんの病気や怪我が良くなる経過に立ち合い、喜んでもらって、ありがとうと言ってもらえて。患者さんと幸せを分かち合い、そしてお金までいただける。こんなに恵まれた仕事はない。良い仕事をさせてもらっているのだから、楽しみましょう。

また、患者さん、一緒に働くスタッフ、支えてくれる家族に感謝する気持ちを忘れないでね。」と、折に触れて話しています。

私が若い頃は、「女性の先生が手術するの?」と、不安そうに言われたこともありましたが、近頃は「女性の先生で良かった!」と言われることの方が多いと感じます。
女性というのも、むしろ強みになると思いますよ。

<インタビューを終えて>

昨年ご出産されて、お子さんはクリニック内の託児室で保育士さんに預けておられます。
親になった視点を生かし、クリニック内はお子さん連れの方に必要な施設整備や心配りのサービスが行き届いています。
あまり考え過ぎずに、前向きにさらっと、その時、その時に最善のことを選んで実行されているように感じました。

凛としたお写真と、ご家族の楽しいコスプレ写真は、仕事も生活も楽しんでおられる北村先生を象徴していて、一番若い理事に抜擢される理由がわかるようです。

「医学部で良い教育を受けたことで、医師として仕事ができているのだから、社会に恩返ししないといけない」「医師として働かないことはもったいない」と考えておられ、仕事を続けること、仕事が大事であること、という軸はぶれません。

形成外科医として「赤ちゃんのあざの治療」を一生の仕事と位置づけられており、これからのご活躍を本当に楽しみにしております。
(平成30年9月インタビュー)