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『復帰医・パート医制度を利用して』 依田 彩文 先生

2015.02.19

私たちのワークライフバランス実践術 No.3
長崎大学病院 総合診療科(パート医) 依田 彩文 先生(30代)

<整形外科医のパートナーと4歳・2歳のお子さん>
『復帰医・パート医制度を利用して』
2015年2月インタビュー

<略歴>
●医学部(他県)卒業
●郷里の長崎市内で卒後研修
●医学部の時に知り合った夫が長崎大学整形外科に入局、結婚
●長崎大学総合診療科に入局
●1年後から夫の転勤と一緒に異動し、関連の医療機関に勤務
●大学院入学
●第一子出産
●復帰医として復職
●第二子出産
●復帰医として復職
●プライマリケア認定医・指導医取得
●パート医として現在週30時間勤務中

Q1. 現在の「ワーク」と「ライフ」のバランスは?

A1. 今は、1日6時間×週5日のパート医で仕事をしながら、家庭のことをするのが精一杯です。夫が、出身地も出身大学も違う長崎へ来てくれたので、夫のキャリアを優先してあげたいという思いもあり、現在のところは自分のキャリアアップの優先はしていません。

Q2. 論文を読む時間、勉強する時間は?

A2. 子どもが寝た後、夜泣きで起きるまでの時間にやっています。

Q3. 育児・家事の時間短縮のコツ・おすすめしたいことは?

A3. ネットスーパーや、週末の作りおき、便利な電化製品(食器洗浄機、洗濯乾燥機など)を利用することですね。

Q4. 子育てから学んだこは?

A4. まず、良くも悪くも図太くなりました。
フルタイムで働いていないことを引け目に感じるのは今も同じですが、最初のうちは「いつになったらちゃんと働くの?」とか、「子どもが小さいのに母親が働くなんて(子どもが)かわいそう」とか、他人からいろんな意見を言われるたびに、ぐらぐら気持ちが揺らいでいました。

でも、自分の中での優先順位をつけてみると、「やるべきこと」「やれること」は、はっきりしてくるということに気づきました。
私の場合、子どもが小さいうちは、子どもにとって何が良いかを重視したいので、その結果、今はこの状態でやっています。

全く同じ人間なんていませんから、「子どもにとって何が良いか」…についても、それぞれの子どもや家族で様々なはず。たとえ、同じ育児中の女性医師同士であっても、比べる必要はないと思います。

それから、周囲へ感謝するようになりました。
子どもができた途端、学会や研究会、試験などの時は、子どもは絶対に誰かのお世話にならないといけません。身軽な時代は自分勝手だったなぁと思ったりもします。

短気な私も、少し気が長くなったと思います。子どもはもちろん思い通りには動いてくれないし、育児は予想外の連続でした。なので、他人の立場や気持ち、背景を考えることが、以前よりできるようになった気がします。
何でも自分で経験してみないとわからないものですね。育児だけでなく、介護などでも同様でしょうか。こうした経験は、日常の診療に生かせていると思います。

育児のために仕事を制限することは、不安や焦りも大きいのは事実だと思います。
でも、自分の数年間を振り返ってみて、小さな仕事や経験の積み重ねでしたが、すべて無駄ではなかったと思います。与えられた時間を最大限に使って、全身で吸収していけば何でも糧になると思います。

Q5. 夫婦で子ども抜きのデートはしますか

A5. 記念日など、ごくたまにですね。

Q6. ピンチだったことは

A6. 2人目を妊娠・出産し、育児休業から復帰してしばらくの間ですね。家に「怪獣」が2人いて、夫もほとんど家におらず、焦りがすごかったです。夫が職場を異動して、少し時間に余裕ができるまでは、大変でした。

Q7. ストレス解消法は

A7. 録画したドラマを、夜中に見ることです。

Q8. 今後の人生設計は

A8. 「ワーク」のほうは、そろそろ大学院修了の時期なので、まずは修了して、家庭医療専門医資格の取得なども考えています。

「ライフ」では、子どもが大きくなるまでは、母親をそばに感じていてほしいので、ライフ優先で考えています。

Q9. 復帰医・パート医制度を利用して、いかがですか

A9. どうしてもキャリアアップが遅れてしまうという点で、病棟を持っている先生がまぶしく感じられることはあります。でも、この制度が利用できて(職場復帰へのハードルが下がり)ありがたかったです。

復帰医の時は、少しずつ勤務時間数を増やしていきました。パート医になると、社会保障もつくので助かりますし、周囲にも認められた気がします。

また、総合診療科は、外来診療で勝負が決まることも多い科なので、外来ができるだけでもスキルアップになるし、達成感もあります。女性にはおすすめですよ。診療科の大園教授も、この働き方を理解してくれていますし、女性医師の先輩も相談に乗ってくれます。

Q10. 両立応援のメッセージをお願いします

A10. 2000年以降は「育休世代」といわれていて、育休を取得し、時短で勤務する女性が増えてきたという記事を見ました。私の世代は過渡期にいるのかもしれないので、試行錯誤しながら進みたいと思います。育休取得後の復職は、浦島太郎状態になるのですが、仕事を続けていくうちに慣れていきます。本人が、「大丈夫」だと思えば、何でもできると思います。
どんな小さな仕事、経験でも必ず糧になるので頑張ってください。

勤務時の依田先生 

<センターより>
出身地でもなく、出身大学でもない場所で働く女性医師の不安を聞くことがありますが、依田先生夫妻の場合はパートナーがその環境のため、彩文先生が支えていく覚悟をされ、仕事の時間を調整されていました。

最近は、多くの病院で社会保障のある短時間常勤という枠を作っています。子育てや介護などで、家族との時間を多く取りたい時期には、勤務形態を変えながら、母として、妻として、医師としての役割を果たしていくのもおすすめです。

また、「週末に食事を作って冷凍保存」(冷凍食品の利用とはちょっと違いますね)は有効な手段ですし、「ネットスーパー」「便利な電化製品」は、ママドクターの強い味方です。ロボット掃除機も、割ときれいになります! まだこれからも、忙しいパートナーとお子さんたちのいる生活で、試行錯誤されるのかもしれませんが、ゆっくりでも、止まらなければ進みます。頑張ってください。