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『復帰医の選択』芦田 美輪 先生

2016.04.20

私たちのワークライフバランス実践術 No.10
長崎大学病院 皮膚科・アレルギー科(復帰医) 芦田 美輪 先生(40代)

<内科医のパートナーと中1・小5・年中のお子さん>
『復帰医の選択』
2016年4月20日インタビュー

<略歴>
● 医学部卒業、皮膚科入局
● 研修・関連病院勤務
● 5年目に結婚、翌年第1子出産(6年目)
● 産後退職、半年間休職
● 大学病院フルタイマー医員(当直なし、母医師3名がチーム主治医制で病棟担当)
● 皮膚科専門医取得(8年目)
● 県内関連病院勤務(月3回当直)
● 第2子出産(9年目)
● 退職、半年間休職
● 県内関連病院勤務(月2回当直)
● 第3子出産(14年目、妊娠中当直免除)
● 退職、1年半休職の後に大学病院復帰医となる(H29年度まで利用可能)

Q1. 現在の「ワーク」と「ライフ」のバランスは?復帰医を選択した理由は?

A1. 今はライフ>ワークです。3人目出産後に、どうしようかと迷っている間に1年半休職して、そろそろ仕事をしたいと思い、医局長に相談しました。そのときすでに復帰医制度を利用している女性医師がいて、私にも勧められました。

私も、大学病院は自宅から近くて通いやすく、時短で勤務できるということで、復帰医となりました。今は大学病院で16時間勤務、外勤1回で働いています。
子どもが就学前まで利用できる制度で、3人目の子どもの年齢で制度を利用しているのですが、実のところ、上2人の子どもとの時間をとるために時短を選んだ感じです。子どもが保育所のときは、学校に通うようになると楽になると思っていましたが、実際小学校へ行くようになると、習い事や部活動など、親が関わることが保育所のときよりも多くなりました。

親の言うことも聞かなくなるし、時間をかけないといけないと思いました。
「子どもが保育所の時期にしっかり働くほうがいい!」というのは、私の経験からのお勧めです。

でも、仕事と生活の時間のバランスは難しいですよね。子どもをほったらかしにすると、大変なことになりそうなので。子どもとの時間をとって、仕事をしないことに負い目を感じるか、子どもとの時間をとって無いことに負い目を感じるか、悩みますね。そこで人それぞれ選択するのでしょうね。

Q2. 論文を読む時間や、勉強する時間はいつですか

A2. 仕事の無い日に論文を読んだり、書いたりしています。

Q3. 育児・家事の時間短縮のコツやおすすめしたいことは?

A3. 保育所の準備や学校の準備を、子どもに教えて自分でできるようにすることですね。でも、教えるのが大変で、結局私がやってしまって、できてないですけど。

それと、アイロンがけを省いて、クリーニングに出すのは時短ですね。アイロンは数年かけていませんね。

Q4. 今まで一番ピンチだったことは何ですか

A4. 以前勤務していた病院の話ですが、夫が当直で留守の朝に、子どもと起きて、朝ごはんを食べて、保育所へ預けて出勤してみると10時になっていて、起きた時刻がすでに1時間遅かったようです。
でも、患者さんが、温かい目で、にこにこして待っていてくれて、大変なのだろうなあと、思っていてくれたようです。看護師さんからの連絡も無く、きっと何かあったのだと思っていたようですね。

Q5. 子育てから学んだことは何ですか

A5. 人に対して、優しく接することができるようになりましたね。子どもは苦手だったのですけど、自分が子どもを産んで育ててみて、皮膚科にたくさん来る子どもの患者さんの診療に幅ができてよかったです。実体験からわかること、たとえば授乳中のお母さんへの配慮ができて役立っています。

Q6. 夫婦で子ども抜きのデートはしますか

A6. 時々、映画に行ったり、お茶したりしています。子どもは夫の両親が預かってくれます。

Q7. ストレス解消法を教えてください

A7. 読書です。ノンフィクションを読みます。

Q8. ロールモデルはどなたかいらっしゃいますか?

A8. 今、大学病院に非常勤で来られている、西本勝太郎先生の皮膚科医としての生き方を尊敬しています。もう70歳過ぎておられますが、今でも現役で、大学病院では若い医師と一緒に仕事して、飲み会にも全参加して楽しまれています。
仕事を楽しくなされているところが好きですね。楽しんで仕事ができると、長く続けられるのだなあと最近思います。

私は、若い頃は結果を出そうと思って、頑張りすぎていて、楽しめていませんでした。
私の世代から皮膚科でも子どもを産んで働く医師が増えてきましたが、上の世代は肩身の狭い思いをして働いている感じだったので、ロールモデルがいませんでした。

それと、皮膚科は開業することが多いので、子どもを持つ女性の勤務医としてのロールモデルがいませんね。

Q9. 今後の人生設計について、どのようにお考えですか?

A9. 復帰医制度を利用できるのはあと2年ですが、その間に少しずつワークの時間を増やしていきたいと思っています。今は大学病院で膠原病の専門外来をしていますが、その分野をもっと極めるか、市中の関連病院に勤務するか、どちらも考えていて、まだ悩んでいます。

今までは、やりなさいと言われたことをしてきましたが、今は自分でやることを決める、やる気次第だという状況で、何がしたいのか描けていません・・・。でも、ずっと勤務医として働いていたいですね。

Q10. これから仕事と子育てを両立する皆さんへ、応援のメッセージをお願いします

A10. 楽しむことがポイントでしょうか。頑張りすぎないように!

勤務時の芦田先生

<センターより>
パートナーのご両親の協力のもと、常勤のときは当直も行い勤務されてきました。子どもさんは、転勤に伴いあちこちの保育所に通わせたそうです。

ご両親は、「勤務する病院に迷惑をかけないように」という気持ちで、子どもが病気のときや当直のときは、お子さんを迎えに来てくれて世話をしてくださり、芦田先生は本当に感謝しているそうです。

パートナーは、夫婦共に常勤のときは家事も育児も半分ずつ分担していたそうです。非常に恵まれた環境で仕事を続けてこられて、でも卒後15年以上経過してからお子さんとの時間を長くするために、初めて非常勤勤務となり、大学病院で復帰医制度(週16時間まで、社会保障の無い非常勤雇用で未就学児のいる期間)を利用しています。

すでに専門領域のキャリア形成はほぼ終わった頃に非常勤になることは、気持ちに余裕を持って仕事の時間調整ができるようです。この先、いつかは常勤へ戻ることも考えながら、今はお子さんとの時間を確保しておられます。
どんな勤務形態であっても、「医師としての仕事を続ける」姿勢が素晴らしいと思います。