新着情報・コラム

  • 私たちのWLB実践術

『パートナーの復職をサポート』鈴木 悠 先生

2016.06.22

私たちのワークライフバランス実践術 No.11
長崎大学病院 医療教育開発センター初期臨床研修医(2年次) 鈴木 悠 先生(30代)

<保健師のパートナーと1歳9ヶ月のお子さん>
『パートナーの復職をサポート』
2016年6月22日インタビュー

<略歴>
● 青山学院大学卒業
● 長崎大学医学部に学士編入
● 長崎大学病院にて初期臨床研修開始、2年次の4月~5月に1か月半の休暇取得

Q1-①. 育児のための休暇を取得されたことについて(お子さんが1歳を過ぎた年齢のため、正式な父親の育児休業制度適用にはならず、有給休暇と欠勤で対処)お聞きします。
休暇を取ろうと思った時期やきっかけは?

A1-①. 子どもが生まれて数か月たった頃、妻は平成28年4月に復職することが決まっていたため、保育所の選択や復職後のことなどをよく話し合っていました。その中で、復職直後の妻をサポートするために育休を取ってみようかと思うようになりました。
自分が医学部に学士編入する際に、妻にたくさん支えてもらったので、妻が困るような時には自分が支えるのが、夫婦としての筋の通し方だろうと思っていました。関東での友人を含め、周りに男性で育児休業を取得した人はいませんでした。

Q1-②. ご家族の反応は?

A1-②. 妻は素直に、「嬉しい」と喜んでくれました。僕の父親は家事をよくするタイプなので、両親の理解は良好でした。「すんなり休暇を認めてくれるような職場でよかったね」という言葉ももらいました。妻の両親や妻の弟夫婦からは少し驚きながらも、「いいね!」と言ってもらいました。

Q1-③. 職場の反応と理解は?

A1-③.研修医の同期で、直接育休を取る事を伝えた人は多くないですが、一様に「へぇ〜」とか「いいなぁ〜」といった反応でしたね。上の先生方は、30代の男性医師、特に既婚の方からは「偉いなぁ」と言われることが多かったです。

研修2年目以降のお話しをする機会のあった40代以降の先生からは「へえ〜っ!?」「そういうことできるんだぁ…」といった反応が多く、コメントに困らせてしまっているかもしれないと気をもんでいました。「医療教育開発センターは許してくれるの?」とも聞かれましたね。
上司の濵田久之先生(センター長・教授)からは「面白いね!かっこいいよ!」と快く賛成していただき、背中を押してもらいました。

Q1-④. 休暇中の家事・育児の分担と、現在の分担は

A1-④. 休暇中は、僕が10割、家事も育児もしていました。今は、平日だと8割が妻、2割が僕ですね。どうしても僕が朝早く出て、夜遅く帰るので。

Q1-⑤. 得意な料理はありますか

A1-⑤. 得意料理は特にないですけど、冷蔵庫の残り物からその日の八百屋の買い物を決め、食材をしりとりしながら和洋中のテイストで飽きないような食卓にし、食材を絶対無駄にしないのが得意というか、料理で心がけている事です。

Q1-⑥. お子さんと過ごした時間で楽しかったことは

A1-⑥. 慣らし保育(午前中+αのみ登園)の期間を割と長くとったので、保育所帰りに2人きりで水辺の森公園や出島ワーフ、長崎シビックホール(メットライフ生命保険株式会社のオフィスビルに併設されている、子育て支援の場)に行って遊んだのは最高でした。そして夕方には2人で車に乗って妻を迎えに行ったのも思い出深いです。

休暇中の鈴木先生

Q1-⑦. 印象に残るエピソードは

A1-⑦. 子どもと2人だけで、僕の実家に1週間くらい帰省したことですね。父子2人で飛行機に乗って、バスに乗って・・・とてもいい思い出になりましたね。

実家では、両親はいますが、親としてちゃんと娘をみなければと、少し気が張っていたので、1人で子どもに対して全責任を負う事のプレッシャーを少し知ることができました。

こういう感じで、初めての子育てに不安を抱えながら、妻も育児をしているのだとわかったことは、印象的でしたね。

Q1-⑧. 休暇を取ってから感じるプラス面・マイナス面は

A1-⑧. やりたいことを実現できたので、僕の人生という観点ではプラスしかありません。研修を1か月休んだ分、他の研修医から遅れを取っているので、優秀な研修医、そしてより早く一人前になるという観点で見れば、休暇はマイナス面があると言えるでしょうか。

Q2. 現在の「ワーク」と「ライフ」のバランスは

A2. ワーク中心です。娘の寝顔を見る毎日です。

Q3. 休暇中に論文を読む時間や、勉強する時間は

A3. 4月中旬に内科の学会で発表する予定があったので、慣らし保育で預けている間に準備したり、予演会などの時には長崎市ファミリーサポートセンター(ファミサポ)に依頼したりしました。
午後2時までの保育所利用の時だったので、サポーターさんに保育所へ迎えに行ってもらい、そのままサポーターさん宅で預かってもらい、夕方まで準備をしていましたね。

ファミサポは今でもよく利用していて、助かっています。担当のサポーターさんが良い方で、急な連絡でもサポート可能な時もあって助かります。保育所のお迎え時間に間に合わないとわかっている日は、前もって連絡してお迎え・預かりをお願いしています。

Q4. 育児・家事の時間短縮のコツ・おすすめしたいことは

A4. ためらわずにお惣菜に頼ったり、作り置きを冷凍しておくなどの一般的工夫は、ネットにたくさんいいアイディアが転がっているので貪欲に取り入れて損はないです。

料理も洗濯も家事全般はやればやるほど習熟してスピードアップ→時間短縮するので、必要なのは「ガッツ」なのかとも思います。夫婦二人が家事育児のどのタスクもこなせるようになっていると、気づいたほうがドシドシこなしていけばいいので、タスクの滞りが起きずに結果的に時短になります。ここも必要なのは「ガッツ」でしょうか。

Q5. 子育てから学んだことは

A5. 他人の子も含め、子どもが“超かわいい”と思えるようになりました。以前は、子どもがあまり好きじゃないと思っていて、バスや公共の場所で子どもの声がすると、うるさいと感じていたのですが、自分の子どもが生まれたら、それがかわいく感じるようになったことが、一番の変化ですね。

Q6. 夫婦で子ども抜きのデートはしますか

A6. ないです。もともと外食飲酒大好き夫婦なので、部屋の作りこみと、ちょっと贅沢なお酒購入での晩酌で対応しています。でも、この先、夜に2人で映画を見に行ったりしたいので、ファミサポさんとかに頼んでみようかと企んでいます。

Q7. ストレス解消法は?

A7. 妻娘が寝た後に、ベランダで景色を見ながらイヤホンで好きな音楽を大音量で聞きながらのアルコールかコーヒーは、唯一のストレス解消法かもしれません。仕事のストレスは妻に愚痴るのが一番効きます。

Q8. 今後の人生設計は

A8. 仕事の面では、修練医からは麻酔科に入る予定なので、まずは手術麻酔を一人前にかけられるようになることですね。これまでの人生は、あまり詳細なライフプランをたてずに、その場その時を懸命に、とやってきたので、今後もそうなるかと思います。生活の面では、長崎はとても暮らしやすいので、医局人事以外では長崎を離れないと思います。妻もずっと働き続けたいと思っていますので。

Q9. これから仕事と子育てを両立する皆さんへ、応援のメッセージをお願いします。

A9. 育児のために休暇を取ると、家族の絆は強くなり、信頼感はとても高まると思います。いろいろ難しく考えずに、育休取っちゃう!といいと思います。育休を取ろかなぁ…と思った時に、周りの人に話してみると、「いいんじゃない♪」「ありだと思います!」と、思ったより肯定する意見をもらえて背中を押してもらいました。

また理解してくれそうな上司に、ちらっと話してみるのもいいと思います。
長崎大学には、理解してくれる人がわりと多そうな印象があります。
高校→医学部→医師となった人たちはメインストリームから外れる人生を選ぶことに抵抗が強い人も多いかと思います。僕自身は、紆余曲折が多く、1か月仕事を休むことがそんなに高いハードルではなかったです。主夫として過ごした子どもと妻との3人生活は、本当に本当に代え難い時間だったので、心理的なハードルを越えることをぜひおすすめしたいです。

休暇中のスケジュール

<センターより>
医学部に学士編入された鈴木先生は、文系の学部を卒業して社会人になり、その後に医師を目指して勉強され、関東から長崎へ来られました。いろんな経験をされており、引き出しがたくさんあって、すべてを開けて見せていただく時間がなく残念でした。

非常に柔らかな考え方をされ、ご家族のことを大切にされていました。
現在イクメン、将来はイクボスとなって、職場を柔らかい雰囲気にすることができると思います。鈴木先生は休暇をとりパートナーの復職の時期をサポートしたことで、家族の絆が強固となったそうです。
パートナーが大変な時にどれだけ助け合えるか、どれだけ家族が協力できるかは、とても大切で大事だということを認識しました。

主夫経験のある医師は、まだまだ少ないと思いますが、これからもその経験を仕事にも生活にも生かしてください!

<補足情報>
復職の目途を立て、こまめに情報収集しておくことも大切です。産育休に入る前や復帰時期の検討の際は、当センターへご相談ください。

厚生労働省は、平成29年1月1日から育児・介護休業法の改定を行う方針です。今後は非常勤職員である研修医・医員の先生でも1年→1年6か月までの育児休業が取得できるようになる可能性が出てきました。国も子育てがしやすい環境整備を少しずつ拡充しています。

男性育児休業促進ポスター