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長崎大学医学部5年生「PBLチュートリアル」授業で、学生キャリア講習会を行いました

2015.05.20

平成27年5月11日(月)9:20から16:10まで、長崎大学医学部5年生(男性82名女性42名 合計124名)の「PBLチュートリアル」教育の一環で、「ワークライフバランス」について講義を担当しました。1時限から4時限までの丸1日をかけて、「医師としてのキャリア継続のため、ワークライフバランスの考え方を知るとともに、医師としての多様な生き方があることを学ぶ」ことを目的として取り組みました。


講義風景

午前は、伊東昌子センター長が「医師にとってのワークライフバランス」と題して講義を行いました。

伊東センター長

次に長崎県福祉保健部医療政策課から行政医師である宗陽子先生にお越しいただき、長崎県が制作した、ライフプランにおける妊娠出産パンフレット「すてきなあなたへ~自分らしく輝く人生をチョイスするために~」を配布。内容を説明しながら、「晩婚化している現在、妊娠出産には適齢期があることをきちんと認識して欲しい」ことを訴えられました。

長崎県福祉保健部医療政策課 宗陽子先生

今年のグループワーク「~もしも医師同士で結婚したら~」では、事例を4ケース挙げ、医師夫婦の仕事と生活の両立について、問題点、解決策、議論、結論をランチを交えながら行いました。

<グループ討論>
仕事と育児の両立を目指す医師夫婦が抱える問題を、14グループに分かれて討論しました。参考資料として当センターが制作した【出産・育児のイロハ】を配布しました。学生たちが近い将来に起こりうる岐路をイメージし、ある程度の想定を立ててキャリア形成を考えていく必要があることを感じてもらえたかと思います。
 
グループワーク          南副センター長が各グループ訪問

午後は、現役でご活躍の院内の医師7名に加わっていただきました。グループワークの結果発表に対して、ご自身の経験から貴重なご意見、アドバイスをいただきました。

<事例ケース1>
私は29歳女性、大学病院に勤務する放射線科医員です。夫も医師で、長崎原爆病院の整形外科に勤務しています。子どもは2歳の男の子がいて、浜口町の認可保育園に通っています。ある朝起きると、子どもがぐずるので、熱を計ると38.5度の発熱でした。そういえば、昨日の夕飯はあまり食べませんでした。夫婦2人とも通常通り勤務があります。近くに子どもを預けられる親戚はいません。さあ、どうしますか?
    ↓
<学生が出した結論抜粋>
・職場を休める場合は、他の先生に替わってもらう。休めない場合は、保育士さんに病院に連れて行ってもらう。ただ、病院内に預けられる施設があるのが理想。
・事前に緊急時のベビーシッターを雇っておく。長崎県医師会保育サポートシステムをご利用ください。
・まずは近くに病児保育をやっているところがないか調べる。もしない場合は、夫婦のうちより休めそうな勤務先の方が子供を病院に連れて行く。共働きの場合はこのような事態を想定して夫婦間で話し合っておくべきである。
・職場に頼み込み、両親どちらかが出勤前に病児保育か小児科に連れて行く!<長期的な展望>・事前に、医局のメンバーに、子供の発熱時どうするか話を通しておく。・(母が放射線科なので)在宅で画像診断できる環境を整えてもらう。・両親、親戚に近くに引っ越してきてもらう。せめて、母か姑だけでも。・同じ科の中でも、時間の融通のきく分野に変える(臨床から基礎寄りの職種に移るなど)。無理なら科を変える。
<まとめ>
事例ケース1は、子どもが病気になったときの対応ですが、今回14グループの中で、4つのグループから「病児保育」という言葉が挙がっていました。病児保育施設は、共働き家庭の頼みの綱です。当センターのあじさいプロジェクトホームページでも長崎県内の病児保育施設を紹介していますので、これから利用する可能性があるパパ、ママは、ぜひ一度ご覧ください。
事例ケース2は、県外出身の夫婦が、小さい子どもを抱えながら、後期研修に入るにあたり、進路選択をどうするか、でした。発表したグループは、自発的に学生同士で夫婦の配役を決め、臨場感のある楽しい会話を交えたロールプレイング形式で授業を盛り上げてくれました。
事例ケース3は、妻の長期国内研修についての検討でしたが、「パパが頑張るからママ行っておいで!」「夫の愛が重要!」「妻の夢が大切!」と、イクメン、イクボスの卵が見つかるグループがありました。
事例ケース4は、長崎大学の医師をモデルにした映画「風に立つライオン」(2015年3月14日公開)からイメージして設定しました。夫のアフリカ留学と、妻の資格試験受験などについての検討では、さまざまな意見がでました。学生にはありえない設定のように感じられたようですが、実際の医師夫婦には、現実味のある設定で、お互いのキャリア形成を尊重しつつ、相談して解決していかないといけません。
発表グループの解決策で随所に「実家の両親・親戚に協力してもらう」ということでしたが、両親も共働き中だったり、逆に親を介護しなければならない状況になっていたりするかもしれません。まずは、ご両親やご親戚など、自分の周囲にいる見込みをつけたサポートしてくれそうな方々へ、この機会に子育て協力意思を尋ねてみるように、学生たちへ勧めました。
 
<先輩医師のコメント>
・子どもの病気は突然で、なかなか予測できない
・親のサポートで助かっている
・親のサポートが望めなかった
・親の面倒をみることになった
・専門医資格と妊娠のタイミングは難しい
・国内留学に短期間だけ行くことが可能になり、非常に満足し、充実感があった


グループワーク結果発表


先輩医師のアドバイス

その後、ロールモデル医師として4名の先生からご講演をいただきました。


講演1:整形外科 黒木綾子先生「普通の子持ち女医生活」

講演2:感染免疫学講座 中垣岳大先生「基礎研究者の仕事と生活」

講演3:産婦人科 井上統夫先生「男性医師の育児休業」

講演4:臨床研究センター 福島千鶴先生「医師を続けるということ」

先生方のご講演の中で、医師としてのキャリア形成だけでなく、男性の育児参加や家事参加、男女の育児休業についてのお話しは、実体験を通して、芽生えた感情や家族・職場などの周囲の反応を知ることができ、学生には、将来像を描きやすい、興味のある内容がたくさんあったのではないでしょうか。

講義前のアンケートで、「男女共同参画」について聞いたことがない学生は、15%でしたが、「ワークライフバランス」という言葉自体、60%が聞いたことがない、という結果で、まだまだ浸透していないことがわかりました。
講義後のアンケートでは、結婚・子育てをするようになってからのライフスタイルとして、「仕事重視」「仕事と育児を両立」「子育て重視」「仕事を辞めて子育てに専念」という4つの選択肢から選んでもらいました。「仕事と育児を両立」を選んだ学生は、講義前後で75%から78%に若干増加しました。講義全体の感想は、「参考になった」「有意義であった」「今後のことを考えるよい機会・きっかけとなった」という意見が77%もあり、昨年の3年生では60%台だったので、本当に有意義な時間となったようです。また、男性の育児参加・育児休業についてのお話しは、男性学生から「夫の育休のことについて初めて知ったので選択肢の幅が広がった」「男性でも育休を取りやすい環境づくりを」などのコメントがあり、反響がありました。
最後に、「キャリア&ライフ未来年表」を作成し、授業は終了しました。未来年表には、45年先まで想定し、自分と親の年齢の推移や、”キャリア”、”ライフ”、”趣味その他”の3分野に、ライフイベントの参考キーワード(例:資格取得、留学、結婚など)を元に当てはめて作成してもらいました。学生の未来予想では、欲しい子どもの数は1~3人の記入が多く、今回のワークライフバランスに関する学生キャリア講習会は、きっと役立つのではないかと感じました。

ご多用の中、学生のためにご協力くださった先生方からは、下記のようなメッセージをいただきました。
・私の子育て時期と今では時代が異なりますが、両立の考え方は時代を超えて共通する部分があるのではないかと思っています
・自分が学生の頃、仕事と育児の両立や女性の社会進出について話しを聴く機会はありましたが、このように自分たちでディスカッションして考える機会はなかったように思います。私も結婚して子どもが生まれた時に、いかに何も考えていなかったかを思い知りました。まだ、子育てや仕事の実感が湧かない学生さんも多いと思いますが、将来、自分や同僚が子育てをするようになった時に今回の講義で得たものが活かされるのではないかと思います。
・他科の先生のお話しを聴くことができて、とても参考になりました。世の中では、女性の社会進出ばかり話題になりますが、男性の家庭進出も今後重要な課題だと考えさせられました。女性だけでなく、男性も家庭に関わることのできる環境が整っていくとよいと思います。
・自分の医師としての10数年を振り返ることができ、今後も医療に携わる者として、仕事に邁進していかねばと思いました。学生時代にこのような機会を与えていただけることのありがたさは、きっと社会人になって色々な問題に直面してから気づいてくれるかも、と思いました。また、自分の学生時代にこのような講義があったら本当によかったのに、と羨ましく思いました。

<アンケート集計結果抜粋>