アカデミック キャリアアップへのアドバイス
長崎大学病院で臨床に携わる医師の女性教員比率は、20%を超えています。しかし、その多くは「助教」であり、「教授」「准教授」「講師」の女性は依然として少ないままです。
2019年6月、長崎大学病院に在籍する女性教員のうち、「准教授」と「講師」の先生に、キャリアアップへのアドバイスとして【やる気をもって挑む必須項目】【女性教員比率を上げるために必要なこと】【おすすめ本】を伺いました。
「教授」の先生には、キャリアアップを目指す【後輩へのメッセージ】をいただきました。
2023年5月、新たに教授に就任された1名の先生のメッセージを追加しました(ページ下部7.)。
やる気をもって挑む必須項目とは
◆業績や実績を上げる!まず「論文作成(英文・和文)」や「科研費の獲得」
◆学位や専門医を取得する!
他には、
◆上司の理解:ダイバーシティマネジメントの重要性を理解し、強いリーダーシップで後押ししてもらう
◆同僚の理解
◆家族の理解:「働くことで、仕事か家事の一方が疎かになるのではなく、仕事により私自身が楽しく輝けることは、家族にも良い影響を与える」「職場や社会から必要とされている人材である」ことを家族、特にパートナーに理解してもらい、協力をお願いする
◆時間制約がある自身への心構え:「公共サービスや職場のサポートを調べて利用する」「自分ができることを探して、役立つ仕事を引き受ける」「職場でカバーして助けてくれている周囲への感謝の気持ちを持つ」
今後、女性教員比率を上げるために必要なことは
◆決定権を持つ上層部に女性が在籍する
◆多面的な評価、採用基準、勤務形態(勤務時間など)の見直し
◆職務(臨床・研究・教育・組織運営など多岐にわたる)の見直し、分担、効率化
◆学生の頃からの教育
◆各個人が、臨床の第一線から外れないように、サポートを利用しながらキャリアを継続して自信を持つ
女性教員おすすめ本 以下①と②の本は、センターより無料で貸し出し可能です。
① 「LEAN IN 女性、仕事、リーダーへの意欲」 シェリル・サンドバーグ(著)
② 「サード・メトリック しなやかにつかみとる持続可能な成功」 アリアナ・ハフィントン(著)
③ 「なぜ女は男のように自信を持てないのか」 キャティー・ケイ&クレア・シップマン(著)
今回アドバイスをくださったほとんどの女性教員のみなさんは、女性活躍を阻む原因といわれる「ガラスの天井」はなかった、男性が優遇されているという印象も感じていない、という結果でした。長崎大学では、「国立大学法人長崎大学 女性活躍推進のための行動計画」に基づき、女性活躍推進に向けた取組を強化しています。特に、ダイバーシティ推進センターでは、「女性研究者サポートプログラム」などを準備して、様々な研究支援をしています。必要な業績や環境を整えて、ぜひキャリアアップへ挑戦してください。
セミナーDVDの貸し出し
メディカル・ワークライフバランスセンターでは、復職&リフレッシュトレーニングやキャリアアップセミナーのDVDを無料で貸し出しします。
後輩へのメッセージ 寄稿順
「教授」になられた先生に、キャリアアップを目指す先生への応援メッセージをいただきました。
4.赤澤 祐子 先生 医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 生命医科学講座 組織細胞生物学 教授 長崎大学医学部卒業:2000年(平成12年) 、教授在職期間:2022年~現職 Q. アカデミック・キャリアアップに関して、最も大事だと思うことはなんですか。 |
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A. 目の前にあることに真摯に取り組むこと。自分に向いているものを見極めていくこと。先輩・後輩に関わらず、助言をしてくれる周りの人を大切にすること。 | ![]() |
私は好きなことをしていたら、いつの間にかここまで来ました。たとえ、今好きなことが分からなくても、目の前にあることに真摯に取り組むこと、自分に向いているものを見極めていくこと、その積み重ねがキャリアアップにつながるのだと思います。働き方に関しては海外留学で学んだことがあります。長時間労働をするよりも適度な睡眠・休養を取ったほうが、サステナブルな仕事ができるということです。当たり前ですが、なかなか忘れがちですね。アカデミックな仕事は一緒に働くダイバースな人々との“集合知能”によって発展していくものと考えます。先輩・後輩に関わらず、助言をしてくれる周りの人を大切にすることが大事だと思います。(2022年9月 寄稿) |
5.松島 加代子 先生 長崎大学病院 医療教育開発センター 医科卒後研修部門 医師育成キャリア支援室 キャリア支援室長 教授 長崎大学医学部卒業:2003年(平成15年) 、教授在職期間:2021年~現職 Q. アカデミック・キャリアアップに関して、最も大事だと思うことはなんですか。 |
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A. 「共育」のこころ | ![]() |
「共育を愉しむ,ALL長崎でつながる」 これは、私自身が教授職に就いたときに掲げたモットーです。医療・医学に関わる皆さんは、どんなに年齢・経験を重ねてもなお、日々、学びがあります。教えている学修者や患者さんから教わることも多々あります。学ぶ姿勢を持ち続けていれば、視野が拡がり、他者とのつながりが強固となり、お互いを尊重する心と楽しい雰囲気が生まれます。また、このページに書いていらっしゃる各先生のお言葉は、私もまさに感じてきたことです。自分が信じた道を突き進むだけでなく、予定外の方向に向かったとしても必ず自身の糧になると思ってしなやかに対応することを心がけています。周囲の方が自分のことをより客観的に見てくださり導いてもらったなと振り返ることもあります。何事も、どんな状況をも、共に学び、愉しんでください。(2022年10月 寄稿) |
6.福島 千鶴 先生 長崎大学病院 臨床研究センター 副センター長 教授 高知医科大学(現:高知大学医学部)卒業:1989年(平成元年) 、教授在職期間:2022年~現職 Q. アカデミック・キャリアアップに関して、最も大事だと思うことはなんですか。 |
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A. 自信を持てるよう努力すること。周囲の意見に耳を傾けること。 | ![]() |
私は、臨床能力、臨床と臨床研究センターの業務の両立に自信が持てず、上司から「上を目指せ」と言われても、「無理だ」と言い続けていました。決心がついたのは、臨床研究センターで10年以上働くうちに、院内にいる医師の中で、臨床研究に関する指針を読んだ回数は自分が一番多いはず、臨床研究で生じる問題は私が一番知っているはず、と思えるようになったからです。努力を続けていれば、必ず自信につながります。また、自分の狭い視野を先輩・上司が広げてくれます。「無理です」と意固地にならずアドバイスを聴くことも大事だと自身の反省も込めてお伝えします。頑張ってキャリアアップする若い人たちが増えているのを嬉しく思うと同時に、私も決心して良かったと思っている今日この頃です。(2022年10月 寄稿) |
7.中道 聖子 先生 長崎大学 保健センター長 教授 長崎大学医学部卒業:1994年(平成6年) 、教授在職期間:2023年~現職 Q. アカデミック・キャリアアップに関して、最も大事だと思うことはなんですか。 |
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A. オープンマインド。小さな努力を重ね、楽しみを見つけながら、歩き続けること。 | ![]() |
目標を見定めてひたすらに努力することは大切ですが、時代の変化がめまぐるしい昨今では、自分の考えにとらわれ過ぎず、周りの人たちの話をよく聴き、オープンマインドでいることもまた、大切なことだと思います。新しい人との出会い、偶然の出来事の中に、思いがけないヒントが見つかることもあります。任された仕事が希望するものと違っても、一生懸命取り組んでみることで新しい興味に出会えることは少なくありません。「面白い!」と感じることは、何よりパワーになります。女性は特にライフイベントの影響を受けやすいかもしれませんが、人と比べず自分をジャッジせず、ゆっくりでも歩き続けることで、自分らしい場所にたどり着ける気がします。(2023年5月 寄稿) |