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男性の育児休業取得編-(4)『第1子が生後6週のときに2週間取得』 谷川 陽彦 先生

2019.11.25

私たちのワークライフバランス実践術 No.19-④
男性の育児休業取得編(4)
長崎大学病院 心臓血管外科(助教) 谷川 陽彦 先生(30代)

<消化器内科医のパートナー(育児休業中)と2か月のお子さん>
『第1子が生後6週のときに2週間取得』
2019年11月25日インタビュー

令和元年度(2019年度)に長崎大学病院で育児休業を取得した男性職員は、過去最多の6名です!
そのうち、医師2名は同じ診療科ということで、教授・医局長・育児休業を取得した男性医師へ緊急インタビューを行いました。

Q1. 男性でも育児休業が取得できるということを、いつ頃からご存知でしたか。

A1. 言葉は以前から知っていましたし、自分が取得して良いこともわかってはいましたが、暗黙の了解として「取るという選択肢はないのでは?」と思っていました。
今の職場で取得できるとわかったのは、三浦医局長、江石教授から勧められて、初めて「あっ、取っていいんだ。」と思えました。

Q2. 育児休業取得のタイミングと期間は。

A2. 第1子が生後6週で、妻が里帰りした実家から自宅に戻るタイミングに2週間取得しました。

Q3. 産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合、再度、育児休業取得が認められています。江石教授や三浦医局長は、理解を示されていましたが、再取得されたいですか。
(長崎大学規則集-常勤教職員の場合)

A3. 知らなかったです!ぜひ、取得したいです。

Q4. ご家族の反応はいかがでしたか。

A4. 出産前、妻に育休が取れることを告げた時は、「そうなの~?!」と言っていました。初めてのことなので、産後の大変さは想像できていませんでしたが、夫婦で一緒に育児ができて、感謝していました。

Q5. 周囲(他の医局員、他の診療科の医師など)から反応はありましたか

A5. 同じ診療科の先生からは「いなかった時は大変だった。」と言われましたが、快くカバーしてくれました。 私の父親は、なんか勘違いして、「平日休んでいるんだったら、一緒に釣りに行こう。」と誘ってきました。行っていませんけどね。

でも、「子どもの世話をちゃんとしているのは、すごいね。」と言われましたし、自分たちの時代とは違うと思っていたようです。

Q6. 休業中の家事と育児の役割・パートナーとの分担はどのようにされていましたか

A6. 私は、哺乳瓶での授乳や、料理、掃除、洗濯のほか、妻は外に出られないので買い物などをしていました。入浴は連携プレイで、妻が子どもを洗って、私が着替えを準備して着せていました。

育休後の今は、買い物はまとめて週末にしたり、ネットで買ったりしています。掃除や洗濯は妻が日中にしています。お風呂掃除は今も私がしていて、食事の準備は、週末などできる時にはやっています。
料理は得意です。皿洗いは、妻より早いです!家事の分担は、子どもが生まれる前と、ほぼ同じですね。

Q7. 印象に残るエピソードはありますか

A7. 平日の昼間に、子どもを抱っこして外に出かけることが、新鮮でした。公園に連れて行ったり、お宮参りにも行くことができて、「こんな世界があるのか!」と思いました。

Q8. 育児休業を取得して良かったと思いますか。

A8. 良かったですね。

Q9. 育児休業を取得して感じるプラス面・マイナス面はどんなことですか

A9. 一日を通して、妻がひとりでどれだけの育児をしているのか、よくわかりました。仕事をしていると、日中の大変さがわからないと思います。経済的な問題はありませんでした。

マイナス面は、子どもが可愛くて仕事に行きたくなくなってしまうことと、私が休むことで周りの人が、カバーが大変になることですね。

Q10. 育児休業取得の経験は、今後の生活・仕事面に生かされると思いますか

A10. 思います!

Q11. 他の診療科にもお勧めしたいですか。

A11. はい。同じような立場の人がいたら、育休取得を勧めます。
他の診療科の先生からは、「心臓血管外科で取得できたのなら、どこの科でも可能だろう。」と言われました。良い先例になったと思います。

Q12. 育児休業取得に関心のある男性に、アドバイスできることはどんなことですか

A12.周囲の協力が不可欠なので、外堀から埋めて行くと良いと思います。
産後2週間で、実家から戻った妻がすぐに1人で、一日中家事・育児をするのは大変だと思いますので、夫の育休取得は、妻が自宅に戻るタイミングをお勧めします!

Q13. 今後、長崎大学病院の中で、男性の育児休業取得が普及し、常態化していくには、何が必要だと思いますか。

A13.難しいかもしれませんが、『義務化』してみたらどうでしょうか。

  

<パートナーにお尋ねします>

Q1. 父親の育児休業取得は、いかがでしたか

A1. 良かった!具体的には、実際に育児の大変な部分を体験、経験してもらえた、家事をしてくれた、おむつ替えの抵抗感がなくなった 等。私的には、初めての子どものお世話で、話し相手がいるだけでも『精神安定剤』になりました。

Q2. パートナーの育児休業取得にあたり、何か心配なことはありましたか

A2. 職場の方への業務負担が心配でした。同時期に同僚の方も取得されていたので、「持ちつ持たれつ」ということで取得しやすい状況でしたが、育休前後の仕事は大変だったようです。

Q3. 日頃の家事や育児で苦労されていること、工夫されていることはどんなことですか

A3. 赤ちゃんがお布団に寝てくれず、一日中抱っこしている状態で、隙間時間に食事や家事をしないといけないのが大変です。肩こり、寝不足、腰が痛いです。

宅配をフル活用していて、おむつ、おしりふき等のベビー用品や日用品は、ほぼ通販ですが、段ボールの処分が大変です。

夫は育休生活が終わると帰宅が遅いので、負担をかけないように私が家事も育児も完璧に!と根を詰めましたが、慣れもあるのか要領を得て、今では、できることだけやる!と思えるようになりました。 夫が当直の時は、母に来てもらい、手伝ってもらいます。

Q4. 育児休業後のパートナーの家事や育児への関わり方には満足されていますか

A4. 帰宅後は疲れてすぐ寝てしまい、夜の子どもの寝かしつけも私しかダメになってきました。そのため家事や育児に関わる時間が少なくなるのは仕方なく、「やや満足」といった感じです。
でも自分の趣味の時間は確保していて、それはうらやましい。私にも1日休み頂戴って思います(笑)。

Q5. 今後、日本社会で、男性の育児休業取得者が増え、家庭への参画を進めていくためには、どのような男女の意識変革が必要だと思われますか。

A5. 育休を取る方もその周りの方も『取得するのが当たり前』という職場の環境が一番だと思います。また、忘れてはいけないことは『感謝の気持ち』で、夫や支えていただいている夫の職場の心臓血管外科の先生方、私の職場の消化器内科の先生方に、本当に感謝しています。私たち夫婦は大変恵まれていました。こういった家庭が少しでも増えたらいいですね。

Q6. 他にご意見などございましたら、お知らせください。

A6. 出産する前は、社会に出て仕事をしている人が一番偉いと思っていましたが、毎日子どもと向き合ってきちんと育児も家事もしている世のお母さんたちは、もっと評価されるべきと感じました。

育休と聞いて、休みで楽をしていると思う方がいるかもしれませんが、実際は全くそうではありませんでした。様々なサポートを受けやすい環境がないと、仕事と育児の両立は到底無理だと実感しましたので、これからどう復帰していくかを考えたいと思います。

また、夫の育休2週間は、やはり短かったです。しかし、心臓血管外科医が育休を取れるなんて思っていなかったので驚きでした。一時的なものではなく、毎日の働き方がもう少し変われば、ストレスなく仕事ができて、家庭内も充実すると思います。

最後に、これは国の制度の問題ですが、育児休業給付金の要件は重要ポイントです。 就職して1年以上経たないと育児休業給付金が出ないとのことで、医局人事で異動が多い医師は、注意が必要です。

その前もきちんと別の病院で働いていたのに、給付金が出ないのは間違っていると思いますし、損した気になります。要件を知っていたら、もう少し出産の時期を考えたかもしれません。

<センターより>
2019年、心臓血管外科の男性医師2名が育児休業を取得されました。長崎大学病院では、男性医師の育児休業取得は、2010年に1名取得してから9年ぶり、男性職員の育児休業取得は2016年に3名取得してから3年ぶりとなりました。

なぜ、超多忙な診療科で、男性医師の育児休業取得が実現したのかを探るため、インタビューをお願いしました。わかったことは、教授・医局長に、「育児の共有に対する理解がある」ことでした。若い世代の考えは柔軟でも、職場の雰囲気や管理職の意識は変わらず、現場でのギャップに戸惑うという声も耳にします。

本院の心臓血管外科は、管理職がしっかりとした男女共同参画の意識をもって、日常的に忙しい医局員に、ライフイベントに合わせて休暇を取るように推進されていました。そして、育児の共有を経験した2名の男性医師は、育休取得はプラスでしかないと、断言しています。

パートナーも、育休を取ってくれて良かった、周囲に感謝したいというお気持ちです。 育休制度を利用すると、素晴らしいワーク・ライフ・シナジー(相互作用)が生まれるようです。
ぜひ、男性の育休取得を職場内で推進してください!

●共働き子育て経験のある教授 江石清行先生インタビュー

●共働き家庭で育ち、現在共働き子育て中の医局長 三浦崇先生インタビュー

●第2子が生後2週のときに2週間取得 北村哲生先生インタビュー