私たちのワークライフバランス実践術 No.21-①
男性の育児休業取得編(5)
長崎大学病院 消化器内科(医員) 長田 和義 先生(30代)
<専業主婦のパートナーと3人のお子さん(3歳、2歳、0歳)>
『第3子の生後すぐに5日間取得』
2019年10月19日インタビュー
Q1. 男性でも育児休業が取得できるということを、いつ頃からご存知でしたか。
A1. 一般的な話として知っていましたが、これまであまり自分事として意識はしていませんでした。ですが、昨年育休を取得した心臓血管外科の谷川陽彦先生(男性の育児休業取得編(4)参照)は大学の部活の同期、谷川先生の奥さんとは消化器内科の職場の同期で、身近に取得した医師が出てきました。
谷川陽彦先生が「育休取ったよ」「心臓血管外科で取れたから、消化器内科も取れるんじゃない?」という話をしてくれたので、育休を取ろうと思うきっかけにはなりました。
Q2. 育児休業取得の期間は。
A2. 育児休業5日、リフレッシュ休暇3日、土日祝6日を合わせて、きっかり2週間休みました。3歳児と2歳児と今回生まれた子どもを連れて、妻がどちらかの実家に滞在することは難しい状況だったので、出産後は自宅に帰ることを決めていました。
3人目を妊娠中から、私が家事と育児をする範囲を広げていましたので、妻1人で家事と怪獣2人と赤ちゃんのお世話をするのは無理だと見当がつきました。
幸い、大学病院には医師が多く休みやすい環境もあったので、「自分が休もう」と妻の妊娠中に決めました。今の消化器内科はチーム制、拘束も当番制になっており、働きやすい体制ができていてありがたいです。
Q3. ご家族の反応はいかがでしたか。
A3. 必要だから休むことにしたので、反応は特に無いです。
Q4. 周囲(他の医局員、他の診療科の医師など)から反応はありましたか。
A4. まず、チームリーダーの原口雅史先生(私たちのワークライフバランス実践術 NO.20参照)に相談し、二つ返事で「いいよ、休みなさい」と言ってくださいました。
実務の上司や医局長も快く応援してくれました。周りから、特別視されることはありませんでした。
Q5. 休業前の仕事の調整は大変でしたか。
A5. 病院での業務や外勤の調整は、事情を周囲に伝えて緊急の場合でもいつでも抜けられるように、日々の連絡で連携を図りました。
外勤の急な交替があることも、関係する先生に根回しをしておきました。妻が出産入院中は、上2人の子は私の実家に数日間預け、私はその期間出勤し、自身の育休期間の業務調整を行いました。
Q6. 休業中の家事と育児の役割・パートナーとの分担はどのようにされていましたか。
A6. 赤ちゃんのお世話も含めて基本的に全ての家事と育児は私がやるようにしていましたが、赤ちゃんの沐浴は下手なので妻にやってもらいました。
また料理は苦手なので、妻の指示通り作ったり、双方の親にご飯を作り置きしてもらったりしました。妻は身体をあまり動かさなくていいように、夜の授乳以外は、できるだけ私がやりました。
予想はしていましたが、結構大変でしたね。
Q7. 育児休業を取得して良かったと思いますか。
A7. 良かったですね。もう少し長く休めたら、妻の体調を回復させるには良かったかもしれませんが、医局のスケジュールや周囲への影響を考えて、2週間くらいが許される範囲で自分なりに妥当かなぁと思いました。
Q8. 育児休業を取得して感じるプラス面・マイナス面はどんなことですか。
A8. マイナス面はないですね。プラス面として、私は今回、妻の身体を休ませる事が目的だったので、育休取得は一つの手段でしたが、目的を果たせて良かったです。
Q9. 育児休業取得の経験は、今後の生活・仕事面に生かされると思いますか。
A9. 生活面では、産前から産後の期間に家事や育児をする範囲を広げたので、今も同じようにやることができますね。やらないと、家庭が回らないんですけどね。
仕事面では、子どもの病気時や通院等で休暇を取ることへの抵抗感が薄れてきました。これまでは、自分や妻の体調不良でも休みにくいと思っていました。状況が許せば、いまは必要なときには休むように考えています。
Q10. 他の診療科にもお勧めしたいですか。また、育児休業取得に関心のある男性に、アドバイスできることはどんなことですか。
A10. 取得できる職場環境と、パートナー(妻)の希望があれば、取得をお勧めします。家庭によっては、夫の育休取得を希望しないケースもあるようなので…。
妻の友人は「絶対嫌だ」と言っていました。いちいち指示を出したりするのも嫌でしょうし、やったらやったで「やったよ」って言われるのも…。私はやり残していること、次にやることはだいたい見たらわかるので、自宅にいる時間は次々やってる感じです。
Q11. 今後、長崎大学病院の中で、男性の育休取得が普及し、常態化していくには、何が必要だと思いますか。
A11. 『身近にいる男性医師が育休を取得している』と、自分も取ろうかなと考えるきっかけになると思いますね。私は必ずしも取得する必要はないと思うんですけど、取りたい人が、取れることが当たり前になるためには、『上司や管理職から働きかけてもらえる』と良いですね。
<パートナーにお尋ねします>
Q1. 父親の育児休業取得は、いかがでしたか。
A1. 良かった!私たちにとって今回が最後の出産計画なので、夫は新生児と長く触れ合える良い機会になりました。(第1子・第2子の時は、転勤等が重なり一緒に過ごせなかったので。)
Q2. パートナーの育児休業取得にあたり、何か心配なことはありましたか。
A2. 夫の仕事の調整。他の先生方のご負担が増えることになるので。
早めに育児休業取得の意向を上司やチームの先生方にお伝えしたことは良かったと思いますが、外勤の交代等でご迷惑をおかけしたことを申し訳なく思っています。
Q3. 日頃の家事や育児で苦労されていること、工夫されていることはどんなことですか。
A3. 『日々の生活をルーティン化する』こと。そうすることで、3歳児や2歳児でも、次に何をするのかがわかるので、物事が割とスムーズに進む。例外を作らないようにする。
Q4. 育児休業後のパートナーの家事や育児への関わり方には満足されていますか。
A4. 満足しています。男性の育児休業取得者が少ない環境にも関わらず、取得を決断してくれたこと、とても感謝しています。今は頼りすぎているので、あまり負担にならないように頼っていきたいです。
Q5. 今後、日本社会で、男性の育児休業取得者が増え、家庭への参画を進めていくためには、どのような男女の意識変革が必要だと思われますか。
A5. 『男性が育児や家事に対して、当事者意識を持つ』こと。『男性が家庭参画するにあたり、女性がパートナーに対して、申し訳ないと思わない』こと。
<センターより>
家事も育児も夫婦で分担する30代の長田先生は、育休取得に向けて仕事の調整は用意周到に、連絡をきちんと行うなど、周りに配慮した姿勢が素晴らしいです。
家族を愛する、素敵な大人の男性医師が、これからもどんどん増えていくといいですね。