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メディカル・ワークライフバランスセミナー2014~仕事と介護の両立を考える~を開催しました

2014.10.31

2014年10月29日(水)長崎大学医学部良順会館2階 ボードインホールで、メディカル・ワークライフバランスセミナー2014~仕事と介護の両立を考える~を開催しました。
昨年も好評でしたが、今年は、長崎大学内の方26名と地域病院など学外の方55名の総数81名の来場がありました。
ご参加いただきました皆様、お忙しい中大変ありがとうございました!!

はじめに、主催者である第一三共株式会社より「メマリーの最近の話題について」の情報提供がありました。
認知症の治療にあたり、薬物療法により効果を実感しやすい12症状について、該当する様子をチェックして、ご本人とご家族から医師へ伝えることができる、便利なチェックシートを紹介されました。周囲を気にすることなく症状を医療関係者へ伝えることができる有効な手段だと思いました。
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《特別講演Ⅰ》
座長/春回会長崎北病院 病院長 佐藤 聡先生
「アルツハイマー型認知症患者の周辺症状と介護負担度-認知症治療薬(NMDA受容体拮抗薬)の効果-」
講師/医療法人厚生会 道ノ尾病院 副院長 芹田 巧先生

<ご講演の主な内容>
道ノ尾病院では、従来の精神神経疾患に加えて、近年認知症患者さんの入院が増加しているということです。Neurocognitive disorder と表されることもある認知症ですが、85歳以上の3割は認知症、日本で800万人の認知症患者さんが存在するという現実をお話しされました。早期発見のバイオマーカーはまだなく、症状が出現したら早期に治療を開始し、積極的に介入することで、症状の進行を遅らせることができるそうです。悪化してしまうと、周囲とのコミュニケーションがとれず、介護者の負担が増します。道ノ尾病院での臨床研究の結果を示され、症状の改善は介護者の負担の軽減につながるため、薬物療法と、非薬物療法を組み合わせて、治療をしていくことが大事であることを話されました。

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《特別講演Ⅱ》
座長/長崎大学病院メディカル・ワークライフバランスセンター 教授 伊東 昌子センター長
「仕事と介護の両立のために ~事前の心構えと両立マネジメントの基本~」
講師/中央大学大学院 戦略経営研究科 教授 佐藤 博樹先生

<ご講演の主な内容>
・子育てと違って、介護は誰でも直面する課題であるため、地震への心構えと同じように事前の心構えをしておくことが大事。
・仕事と両立するには、情報を入手して活用し、両立できるようにマネジメントをすることが鍵。
・職場で相談できる環境があるか、職場の介護休業のとり方をしっているか、休業中に仕事がカバーされる仕組みか・・など、子育てと同じように職場の環境整備も両立には大事。しかし、子育てよりパターンは複雑であり、要介護者とその家族の状況を把握してくれる良いケアマネージャーさんを探すことも大事。
・遠距離介護、見守りはマネジメント次第で可能なので、介護のために仕事を辞めないでもよい。
・介護休業を取得して、本人が介護にどっぷり携わるのではなく、休業後も仕事と両立できるよう、介護サービス運用のマネジメントをする。介護の素人がやるより、介護専門のヘルパーさんにお願いするほうが良いのでは?という考え方もできる。
・「介護離職をしない!」ために、まず、きっかけづくりとして、ご両親の介護保険被保険者証を見せてもらいましょう。

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<参加者アンケートより感想抜粋>
介護についてまったく考え及んでいなかった方や、介護中である方、将来の不安を少し感じてこられた方など、いろんな立場の方からの感想をいただきました。

・長崎大学文教地区から参加しました。現在親の介護、子どもたちの育児、そして仕事を両立中です。ぜひ文教地区にも広げていただければと思います。(介護と仕事の両立支援について強く望んでいます)。(30歳代男性・介護中)
・ケアマネージャーを変えたいと思っても、難しいです。自分で調べたり、他人に聞いて良いという人も、以前のケアマネより、自分たち家族に合わないということもあります。ケアマネのランク付けなど、表に分かるようにしてもらいたいと思っています。(50歳代女性・技術職員)
・仕事しながらの介護中ですが、ある程度両立できているかな…と、確認と自信につながりました。(50歳代女性・看護師)
・子育て支援のためのWLB対策への視点が中心になっていましたが、介護と仕事の両立支援対策も今後重要だと思いました。ありがとうございました。(50歳代女性・看護師)
・来年両親ともに65歳になります。まだまだ介護は先の話だと思っていましたが、親が65歳になったら、話し合いをする良いタイミングと知り(コミュニケーションは充分取れてはいますが)今一度、親・きょうだいと相談し、事前の心構えを共有しておく必要があると思いました。また、介護保険制度について全くといっていいほど知識がなかったので、概要を知る良い機会となりました。(20歳代女性・事務職員)
・ケアマネージャーとは、今までは介護のプロとして、プランなど従ってきましたが、状況によっては、かかわりを密に取り、こちらからリードしていくことも大事だと知りました。遠距離介護、直接介護している姉妹とのかかわり方など、またお話を聞くことができたら嬉しいです。(60歳代女性・技術職員)
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<伊東センター長より>

昨年度好評であった佐藤博樹先生の「仕事と介護の両立セミナー」を、今年度も是非実現させたいと思っていましたが、私どもの希望を叶えてくださり、長崎ですばらしいご講演をいただけました。
聴衆のみなさんは、昨年とは異なるため比較はできませんが、アンケートの結果では、今年度の参加者で(親などの)介護に対する備えができている人の割合が高いことがわかりました。また介護が必要になった場合、”仕事と両立できる”、”状況次第では可能”と考えている人は昨年度60%だったのが、今年度は72%でした。
「よりよい仕事と介護の両立」を目指している人の参加が増えたのでしょうが、介護をしながらでも仕事を継続することに対しての意識が高まってきたのかもしれません。
職場の制度を整えることも重要ですが、それをうまく利用していける風土作りは重要ですし、いざというときを乗り越えるために、介護への備えの必要性を再確認しました。
できれば大学で介護者になりそうだと心配している職員、まさに直面している職員に対して、支援できる仕組みを作っていきたいと考えています。