新着情報・コラム

  • 学生キャリア講習会
  • キャリアサポート

長崎大学医学部3年生『医と社会』授業で、学生キャリア講習会を行いました

2015.07.31

平成27年7月17日(金)8:50から16:10まで、長崎大学医学部3年生(男性86名女性42名 合計128名)の「医と社会」教育の一環で、『ワークライフバランス』について講義を担当しました。1時限から4時限までの丸1日をかけて、”医師としてのキャリア継続のため、ワークライフバランスの考え方を知るとともに、医師としての多様な生き方があることを学ぶ”ことを目的として取り組みました。


講義風景

午前は、伊東昌子センター長が「医師にとってのワークライフバランス」と題して講義を行いました。

伊東センター長

次に長崎県福祉保健部医療政策課から行政医師である宗陽子先生にお越しいただき、長崎県が制作した、ライフプランにおける妊娠出産パンフレット「すてきなあなたへ~自分らしく輝く人生をチョイスするために~」を配布。内容を説明しながら、「晩婚化している現在、不妊治療をしたら妊娠するものではない」ことを学生に説明されました。

長崎県福祉保健部医療政策課 宗陽子先生

今回のグループワークでは、5月の5年生学生キャリア講習会と同様の「~もしも医師同士で結婚したら~」と想定された事例を4ケース挙げ、医師夫婦の仕事と生活の両立について、問題点、解決策、結論をランチを交えながら討論を行いました。解決策の発表を、ロールプレイング形式にし、夫婦とその親、職場の医師などのキャスティングを考えて決めてもらい、寸劇で発表してもらいました。時間が少々長くなりましたが、なかなか面白く仕上がっており、観る方も演じる方も、楽しめたのではないでしょうか?!
また、医師夫婦以外の同僚・上司・先輩・後輩役を演じることで、違う立場になった場合の考え方や対応を学ぶ機会になり、将来どこかで役立つのではないかと思いました。

<グループ討論 >
仕事と育児の両立を目指す医師夫婦が抱える問題を、10グループに分かれて討論しました。参考資料として当センターが制作した【出産・育児のイロハ】を配布しました。学生たちが近い将来に起こりうる岐路をイメージし、ある程度の想定を立ててキャリア形成を考えていく必要があることを感じてもらえたかと思います。
 
グループワーク          南副センター長が各グループ訪問

午後は、本日のランチをご提供くださった長崎県医師会瀬戸牧子常任理事より、日本医師会の「ドクタラーゼ」”医学生がこれからの医療を考えるための情報誌”(リンク許諾済)の紹介がありました。

その後、現役でご活躍の院内の医師5名に加わっていただきました。グループワークの結果発表に対して、ご自身の経験から貴重なご意見、アドバイスをいただきました。

<事例ケース1>
子どもが病気になったときの対応ですが、発表グループには、理解のある上司(今で言うイクボス?)がいて、朝から妻が病児保育施設に連れて行き、遅れて出勤、夕方は夫が早く仕事を切り上げてお迎えに行く。という結論でした。夫の職場で仕事をカバーすることになった同僚・後輩の医師が、「え~っ!」という発言まで考えてありました。参加医師からは、年に1回くらい、感染症の流行時期には長崎市内の病児保育施設が定員いっぱいで預けられないことがある、というシビアな現実を教えていただきました。

~上司に早く帰宅してよいか交渉中~
<事例ケース2>
後期研修の選択ですが、忙しい診療科であっても、やりたいことはあきらめず、夫の実家に近い病院で、夫の両親が孫の面倒を見るという結論でした。参加医師から、やりたい診療科をあきらめない姿勢を評価されました。

~夫婦で相談し、夫の両親に子育ての協力を依頼しようか検討中~
<事例ケース3>
妻の長期国内研修についての検討では、子どもが「母親と一緒がいい」という意見を尊重して、母子で国内留学という結論でした。Skypeを使って遠距離でも家族のコミュニケーションをとれるようにしたらどうか、との対策が挙がりました。

~子どもにパパとママとどちらと一緒に暮らしたいか確認中~
<事例ケース4>
長崎大学の医師をモデルにした映画「風に立つライオン」(2015年3月14日公開)からイメージして設定しました。夫のアフリカ留学と妻の資格試験受験等についての検討では、結局、アフリカへは行かないという結論でした。途中、嫁と姑の確執もありました。結局、夫が希望していた留学が叶わなくなったことに対して、参加医師より、将来、喧嘩の火種とならないか?と心配する意見がありました。

~上司からアフリカ留学を打診されている様子~

学生の発表に対して、先輩医師のアドバイスがありました。
 
第一内科 原口愛先生       第二内科北村峰昭先生
  
小児科 北村温子先生       医療教育開発センター 松島加代子先生

続いて、ロールモデル医師として2名の先生からご講演をいただきました。


講演1:感染制御教育センター・安全管理部 栗原慎太郎先生
テーマ:「No risk No life」
栗原先生の含蓄のあるお言葉は、男子学生さんの胸に響いたことでしょう。

講演2:臨床研究センター・移植消化器外科 崎村千香先生
テーマ:「女性外科医の希望と展望~まだまだ未熟な医師経験の中で~」
仕事も子育てもどっちも楽しい!という崎村先生の明るく前向きな姿勢は素晴らしいと思いました。

特別講演として、東京女子医科大学 心臓血管外科 冨澤康子先生をお招きしました。

特別講演:東京女子医科大学 心臓血管外科 冨澤康子先生
テーマ:「ロールモデルの役割とワークライフバランスの重要性」

女性医師の歴史、ロールモデルがいなくてもやる気があればどうにかなること、組織のトップに向かって発言していく必要があることなど、パワフルな講義で、活力をいただきました。

そのほか、講義前後アンケート、キャリア&ライフ未来年表、医学生のWLB意識調査など盛りだくさんの内容でした。学生の皆さん、夏休み目前でしたが、記憶に残る授業になったでしょうか。

~学生講義を終えて~
◎講義前後アンケートの集計結果抜粋
講義前アンケートでは、「男女共同参画」について聞いたことがない割合は9%、「ワークライフバランス」については、34%が聞いたことがないという結果で、昨年度の3年生、今年5月の5年生での結果と比較して、言葉の浸透度は一番高い結果でした。また、言葉も内容も知っているという割合もこれまでで一番高かったです。「男女共同参画」は小・中・高の授業で知り、「ワークライフバランス」は、2年前の平成25年度の1年次に伊東センター長から「ワークライフバランスとダイバーシティ」という講義を受けていたため、耳に残り、記憶していたようです。まだまだ周知する必要はありますが、認知度はあっという間に上がってきているようです。

講義後のアンケートの感想欄には、「将来を考えるよいきっかけとなった」「たくさんの医師からの話を聴くことができて、参考になった」「面白かった」「有意義であった」という意見をたくさんいただきました。また、「自分の将来に不安があるか」の回答は、講義前が「はい」の不安があるが48%から34%へ減少し、「いいえ」の不安がないは、22%から37%へ増加し、講義によって不安が解消された学生がいました。

◎学内協力医師よりコメントをいただきました
●第一内科 原口愛先生
学生さんがいろいろな視点を持っていて、勉強になりました。学生時代からワークライフバランスについて考えていくことで、医師として働き始めたときに、いろいろな選択肢を考えられると思います。
●第二内科 北村峰昭先生
ワークライフバランスについて、自分自身かなり家族に迷惑をかけているなと感じました。反省です。学生のころから考えることは大切なことと思いました。
●医療教育開発センター 松島加代子先生
はじめてロールプレイを取り入れた回でしたが、みなさんの演技力に楽しみながら参加させてもらいました。 男女が交代していた(男性が女性役をしていた)グループなどあり、学生時代ならではの柔軟な発想に驚きましたし、演技をしてみることで相手の立場を考えるきっかけになったのではないかと思います。 将来、社会人になったみなさんと一緒に、ワークライフバランスを考えていけたら、もっと新しい視点で発展していけるのではないかと思いました。楽しみに待っています!!
●小児科 北村温子先生
学生の頃からワークライフバランス、男女共同参画等を講義で習うことは素晴らしいことだと思います。 学外から見学参加された熊本大学の後藤理英子先生がアドバイスされていましたが、「ぜひ、自分のやりたい道を選択してほしい。そうでない道を選択したとき、後々何かあったときに「こんなはずじゃなかった」と後悔するかもしれない。」と話されましたが、本当にそうだと思います。 やりたい道に進めば、きっとなんとかなるのではないかと思います。柔軟に、臨機応変に。学生さんたちが、自分が進みたい進路を選んでくれることを願っております。

◎学外からのご見学・ご協力いただいた皆さまよりコメントをいただきました
●長崎県医師会常任理事 瀬戸牧子先生
楽しい機会を与えてくださってありがとうございました。 何よりリアルなロールプレイができる学生さんがたくさんいる事に驚き!ました。私が学生の時にはとてもできなかったと思います。楽しませてもらいました。 いろんな立場に自分の身を置いてみて、その立場で考えるというのは、限りなく世界を広げていく事ができますよね。面白い試みだと思います。 いっぱいの経験をして欲しいし、足りないところは更にたくさんの本も読んだり、話しを聞いたり、世界を知って欲しいと感じました。
●長崎県医療政策課 宗陽子先生
学生の頃から、医師としてのライフプランを考える機会を持てることは素晴らしいことだと思いました。 どのような医師になりたいのかしっかり考えて将来の見通しを持つことが、選択しなければならない、いろんな分岐点で役に立つと思います。 今回、妊娠・出産には適齢期があることをお伝えしましたが、そのことも、ライフプランを考える上で意識していただけると嬉しく思います。 メディカルワークライフバランスセンターの皆さまのご尽力に感謝します。
●久留米大学 守屋普久子先生
とても有意義な時間を過ごさせていただき、誠にありがとうございました。とても勉強になりました。
●熊本大学 後藤理英子先生
学生さんたちが真剣に考えて作り上げていらっしゃって、今後ぜひ当大学でも取り入れたいと感じました。
●神戸大学 橋本富美子様
長崎大学の学生さんは素直で講義に熱心に取り組まれておられました。とてもいい講座で多くの学びを頂きました。

●冨澤先生、崎村先生と、伊東センター長は、偶然にも、同じ雑誌のシリーズ「研修医通信」のインタビュー企画「キラキラ輝く女性医師」に取材された実績のある先生方で、若手医師のみなさんのキャリア形成のお手本になることと思います。(転載許諾済)