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佐世保共済病院

2017.10.17

平成29年10月17日、佐世保・県北医療圏の基幹病院であり、魅力ある病院づくりを目指す佐世保共済病院で、井口東郎院長、井口恵美子看護部長、畑宏明事務部長、フルタイム勤務で子育て中の医師夫婦 産婦人科 二尾愛先生と腫瘍内科 二尾健太先生、ワークライフバランス推進員の麻酔科 木本文子先生の6名にお伺いしました。

●二尾愛先生・健太先生 家族で過ごす時間が増えた医師夫妻のインタビュー

●井口東郎院長インタビュー

●畑宏明事務部長インタビュー

●井口恵美子看護部長インタビュー

●ワークライフバランス推進員 木本文子先生インタビュー

  

  

  

地元福岡を離れて、安(院内の病児保育室で安心)近(職場から近い舎宅と保育園)の環境を選び、平成29年4月から赴任されてきた仁尾愛先生・仁尾健太先生ご夫妻に、働き方と子育てについてお伺いしました。

  

<二尾愛先生>
8時頃から17時30分までのフルタイム勤務です。当直は免除ですが、オンコールは金・土・日曜の週末1回を含む計6回です。お産で夜中に呼ばれることもあります。

<二尾健太先生>
他の内科医と同じように当直とオンコールが平等に回ってきます。オンコールの回数は妻の方が多いと思います。

<二尾愛先生>
産婦人科なので手術やお産のため定時を過ぎてしまい、よく夫に子どものお迎えをお願いしなければならないことです。

<二尾愛先生>
子どもを出産した時は福岡赤十字病院所属でした。
ただ、九州大学から、人手が足りないので産後6か月で復帰してほしいとの希望があり、当直免除で九州大学に復帰しました。

その後、福岡赤十字病院に戻ってからは当直もしていました。中途半端にはできず、なるべく周りの方々の負担を減らしたいという思いもありました。子どもが小さく熱を出しやすい時期だったので、両親に頻繁に保育園へお迎えを頼んでいましたね。

昨年度まで、夫と別々の病院で働いていて、夫は24時まで帰らず、私も20時まで保育園に子どもを預けて、当直も月3回ありました。こちらの病院に来てからは、精神的にもゆとりができました。

<二尾愛先生>
「病院の敷地内にある舎宅に住んでいる」というのが大きいですね。夫の異動が先に決まり、私がついてきた形で、最初はマンションに住むか迷いましたが、やはり職場に近いのが一番だと思い舎宅にしました。私が子どもを保育園へ迎えに行き、夫にバトンタッチして、すぐまた病院に戻ることができます。

<二尾健太先生>
移動距離が短く、交代がスムーズにできて、時間の調整がしやすいです。

<二尾愛先生>
あとは福岡の両親が月に1回、特に私がオンコールの時などに手伝いに来てくれるので、それが非常に助かっています。舎宅は両親も泊まれる広さがあります。

<二尾愛先生>
ハーフハーフですね。夫はイクメンだと思います。私があまりしない方なので…。

<二尾健太先生>
妻がオンコールで不在の時もなんとかやっています。親も共働きでしたので、分担するのは当たり前の感覚です。

<二尾愛先生>
人事が決まってすぐに保育園を探し始めました。保育園は車で行かないといけないところで10分位かかります。本当はもっと病院から近いところが希望でしたが、認可保育園に入れたのはよかったです。

<二尾健太先生>
事務の方や井口院長が色々と工面してくださいました。

<二尾愛先生>
院内に、病児保育室があるのですごく助かります。既に1度、2日間利用しました。

<二尾健太先生>
内科認定医と、がん薬物療法専門医という腫瘍内科の専門医と、消化器病専門医を取得しています。

<二尾愛先生>
産婦人科専門医は6年目で取得できるので、子どもを産む前に取りました。

<二尾愛先生>
私は婦人科ですが、専門医を取った後の、そこからの資格取得のハードルが高いですね。施設認定のいる資格は症例数などの点で、佐世保共済病院では取得が難しいので、子育てが落ち着いて福岡に帰ってからの取得を考えています。2人目の子どもの希望もあります。

<二尾健太先生>
妻には仕事を続けていってほしいと思います。生活面でお互いが協力しやすい体制や環境の整った病院で働くことができればと思っています。

<二尾健太先生>
やはり子どもが小さい時期は、周りの協力を得られることが非常に大事だなと思います。今の職場は内科の上司や同僚、部下に手伝ってもらいながら、勤務途中で子どもを迎えに行かせてもらえたりして感謝しています。ひとりで妻のサポートをすることは難しいと思います。

腫瘍内科の医師は、井口院長をはじめ3名ですが、こちらの病院の内科は診療科の垣根がないので、若手同士で協力して助け合ったりして支えられています。

<井口院長>
健太先生には今年4月に新設した腫瘍内科の礎を作ってもらいたいですし、愛先生には腹腔鏡手術を導入してもらわなくてはいけないので、今後、そういった役割を担っていってほしいと思っています。

  

井口東郎院長に、病院として両立支援の取り組みや考えなどについて伺いました。

  

女性医師が増えてきているので医師のリクルートを考えた時に、佐世保市は長崎市よりハンディキャップがあります。当然、福岡は一極集中でなかなか佐世保には来てもらえません。

女性医師、特に、子育て中の女性医師にも来てもらうためには、一つに託児所の問題があります。佐世保市では認可保育園に入れず待機児童になることは少ないため、病児保育室を5年程前から利用できるようにしています。

この病児保育室は、病院の財源で運営しています。
また、まだ利用者は少ないようですが、女性用の仮眠室を作りました。これからは、授乳室も備えた、女性医師がくつろげる部屋を作りたいと思っています。

また、敷地内の舎宅についても、室内はリフォームされていますが、建物自体は古いので、将来、病院の建て替えに伴って整備していく必要があります。

あとは、やはり女性医師のインセンティブですね。休職して復職してという中で、資格を維持していくためのバックアップが必要だと思っています。他にも、管理職を目指す女性医師を増やしていきたいと考えています。

<井口院長>
子どもを産んだ後、価値観が変わるのは仕方がないことですよね。なかなか産む前のように頑張れない方も多いと思います。その価値観や働き方の変化が計算できなくて難しいですね。志の問題かとは思いますが、やはり第一線に戻ってきてほしい、もったいないと思うんです。

<二尾愛先生>
私も出産した時にはガクンとモチベーションが落ちました。ただ、私は育児に向いていないと感じるほど、仕事をしている方が楽でしたね。まだ中途半端なモチベーションですが、仕事は続けていきたいという意欲はあります。

<二尾健太先生>
こちらの病院に勤務するようになってから、子どもと触れ合う時間が多くなって、むしろ私は嬉しいぐらいです。

<二尾愛先生>
“佐世保共済病院は共働きでも働きやすい”というのはアピールしていいと思います。

医師不足をどう立て直すか、そして、佐世保市の基幹病院の役割として、腫瘍内科・整形外科・婦人科を柱にして打ち立てていこうと思っています。

婦人科は今後、開業医も減り、正常分娩も担っていかなくてはいけませんし、助産師も確保していかなければいけません。
当院は、佐世保市総合医療センターの機能を補完する役割もありますので、やはり婦人科は柱の一つかと思います。また、腫瘍内科、がんの化学療法の分野を強化していきたいと思っています。

女性医師は今後ますます増えますので、ぜひ当院に来ていただきたいです。
給料面や勤務時間の短縮などで、不公平感が出ないように対処していきたいと思っています。
フレックスタイム制など、要望を言っていただければできるだけ対応していきます。

  

畑宏明事務部長に、病院のワークライフバランスらんす現実に向けた取り組みの状況をお伺いました。

  

<井口院長>
平成29年4月に医師7名を増員しました。佐世保市の寄附講座の予算に組んでいただけたので、九州大学から医師を派遣していただきました。

<畑事務部長>
平成21年頃から、スーパーローテート(平成16年度導入の新しい臨床研修制度。プライマリ・ケアを中心とした幅広い診療能力の習得を目的として、2年間の臨床研修を義務化。)の影響や、開業のために退職されたりして、急に内科を中心に医師不足になり、ずっとその流れが続いている状況でした。

今年増員できましたが、元々の人数まではあと少しというところです。しかし、以前は一般内科という考え方でしたが、今は専門別になっているので、前と同じ医師数で以前の患者数を診られるかというと、そうではないと思っています。女性医師数だけでみると、現在9名と増えてきています。

平成28年度の育休取得者は病院全体で21名で、医師はいません。
平成29年度には医師が1名、産休と育休を取得する予定です。ほぼ100%の方が復職されています。国家公務員共済連合会の病院の中では、育休の取得者は多い方だと思います。介護休暇を取得した職員はいません。

優秀な人材の獲得のためと、職員のモチベーションが上がっていけば、患者さんへのサービス向上にもつながると思っています。

国家公務員共済連合会は、国が作った制度を運用しますので、病院も連合会と同様の制度を利用できます。

部門間の垣根は低いですね。休みを取る場合も、周りの職員が非常に協力的で、理解してもらえる病院だと思います。

  

井口恵美子看護部長に、看護部の育児・介護支援に関する取り組みをお伺いしました。

  

医師のみが利用していた院内の病児保育室を、今年11月から看護師も利用できるように拡大する予定です。これまでは、OGの看護師が病気・病気回復中のお子さんを預かった時に、対応していましたが、利用頻度が安定しないので、他へ就職してしまいました。

そこで、専任で雇うのではなく、外来や再雇用といった院内スタッフで補填するようにしました。利用がない時には通常の業務が充足できます。また、小児科には保育士がいるので、双方で調整しながら協力し合っています。

<井口看護部長>
使用していない病室などを利用し、場所は十分確保できます。子育て中の職員の統計をとると、お子さんが病気の時でも預け先が確保できる職員も多くいました。意外にも1日に1〜3名程度が上限だったので、3~4室の準備があればよいことがわかりました。

<木本先生>
利用料金は2千円で、お弁当は持参になります。院内にあるメリットとして、休み時間に様子を見に行ったり、お子さんと一緒にお昼ご飯をとることもできます。

ほとんどの看護師が育児休業を取得して約1年で復帰しています。ご家族のサポートがない職員は夜勤の免除もしていますが、親御さんとの同居やご家族の支えにより夜勤ができる職員のほうが多いです。

<木本先生>
1人目を出産後復帰した時に、話の合う相談相手は、夜勤をする子育中の看護師さんでした。夜勤の時はパートナーがどのように子どものお世話をしているか、夜勤明けの過ごし方などを情報交換していました。

<二尾愛先生>
看護師さんが夜勤されているのをよく見かけますが、月何回位ですか。

<井口看護部長)>子育て中の看護師で月3回位に調整しています。月1回でも入ってもらえると現場も助かりますし、周囲への印象も良いです。

<木本先生>
夜勤をすると昼間の休みが取れるので、子どもの行事などに参加できるメリットがあるようです。眠らずに体力的にはしんどいみたいですが。

<南先生>
当直明けに医師は休みが取れないので、将来的に米国のホスピタリストのように交代勤務制で病棟を担うことができれば理想的ですが、ある程度の医師数が必要になるので、医師不足の日本で完全交代勤務制の導入は難しいかもしれません。当直明けに休みが取れるシフトが組めると女性医師の働き方も違ってくると思います。

<井口看護部長>
私自身、関東地区で5年勤めていたことから、都会と地方の違いを肌身で感じますが、この地は、職員のご家族の献身的なサポートで子育て中でも働きやすい病院であると思います。看護師の仕事に対して「尊敬」と「理解」を示してくださるので、有り難いことです。

専門看護師はいませんが、認定看護師は院内に11名います。全国に国家公務員共済組合の連合会グループ33病院があり、人材育成システムが確立されています。
このシステムを利用して、関東地区で認定看護師の資格を取得してきたのは、うち7名です。

看護師は専門職なのでキャリアアップが大事ですが、出産・育児などによって一旦キャリアが途切れたと感じる方も多いと思います。その後も仕事が継続できるように、パートからの復職がスタートでも構わないので、雇用形態を変えながら働き続けてほしいと思います。

現場の状況とご本人の意向を合わせて、人材育成システムに沿って仕事を継続できていければ、良い人材を育成することにつながり、大切なことだと思います。

  

佐世保共済病院に勤務して10年で、今年度からワークライフバランス推進員の木本文子先生に、麻酔科医の仕事と3人のお子さんの育児との両立についてお伺いしました。

  

この病院で産休を取得した数少ない女性医師だと思います。
3回の出産の後、産休のみ取得して現職復帰をしました。常勤の麻酔科医師は私を含めて3名で、昼間は非常勤の医師が多い時で3名、最大6名になります。オペ室は8部屋ありますが、17時以降の2~3例を常勤医師で対応し、21時過ぎの帰宅になることも多いです。

私は他職種のパートナーの親と同居しており、恵まれた環境なので、保育園へのお迎えも食事などの家事もほぼ全て甘えて、ワークに専念できます。

土日のオンコールは月に3〜5回ですが、佐世保市内に居ればよいので、子どもと近場で遊んだりして過ごします。小学生の子どもの授業参観は月1回ありますが、上司に配慮をいただき、数時間だけ抜けて非常勤の医師が退勤する前に病院に戻るよう調整して、できるだけ参加するようにしています。

二尾愛先生をはじめ、佐世保共済病院で働く女性医師はモチベーションが高いと感じます。環境が許せば働きたいという先生が多く、融通を利かせて多少の時間外勤務も苦とされずに働かれるので、周囲が逆に「まだいて大丈夫?」と声をかけるほどです。

極力仕事重視の姿勢で働く先生を見ると「助けてあげたい、応援したい」という気持ちになり、環境だけはではなく、モチベーションがあれば一生懸命働けるんだと気づかされます。
もちろん、各ご家庭の事情などもありますので、個人の働き方を尊重し、相談など私ができることであれば、お役に立ちたいです。

今は、二尾先生ご夫妻が新しいロールモデルになると期待しています。家族一緒の勤務先で、病院敷地内の舎宅に住み、仕事と子育ての両立がしやすく、働きがいがあることを二尾先生たちに実感してもらう、そして、その姿を見た現場の独身の若い先生たちが、家族を作って佐世保共済病院にまた戻って働きたいと思ってもらえるといいなと思います。

女性医師にはいろんな働き方を模索しながら、働き続けてほしいと思います。フルタイム復帰ではなくても、自分の中で子育てが一段落したと思うタイミングで、いざ復帰するときに自信がない!と焦らないように、土曜日の日直や日勤帯のオンコールに月1回入るなどスキルやモチベーションを維持することが大切だと思います。

教授や医局長などの管理職にイクボス・イクメンや共働きで子育てする方が増えるといいですね。
幼い子どもがいる男性医師を早く家に帰らせたり、子どもの発熱時の対応などに理解と配慮ができる上司がいると一気に環境が変わると思います。

佐世保地区で仕事を探されている女性医師の方は、ぜひご連絡ください。夫の異動に伴って佐世保市へ来た方や、子どもがいる研修医の方にとっては舎宅・病児保育付きでお勧めです。オンコールも舎宅が病院のすぐ近くなので、負担が軽減されます。

―貴重なお話をありがとうございました。

  

院内の病児保育室を見学させていただきました。

  

↑以前使用していた内科病棟の4人部屋を再利用。

感染症のお子さんには別部屋を用意。当日の朝8時までに利用の予約電話を病院に入れて、院内の小児科(1階)を受診後、病児保育室(6階)で預け入れする流れ。

今後の理想は、保育園や小学校から発熱等の連絡があった際に、「子どものお迎え→小児科受診→病児保育室へ預け入れ」の一連の流れをサポートするシステムの構築とのことです。

  

院内病児保育室を利用している医師へお伺いしました。

  

【麻酔科医師】
勤務している病院の敷地内にあるので、時間が空いた時などに様子を見に行けて良かった。子どものペースで遊んでくれたりと、よく面倒を見ていただき、有り難かったです。

【産婦人科医師】
午前中だけみていただき、午後からは休みをとって自分で看病できました。突発的なので、業務の引継を午前中に済ませる間だけでも預かってもらえるので、安心です。

【内科医師】
2010年当初は、佐世保市内に4施設の小児科併設病児保育施設があり、そのうちの2施設に登録・利用していました。遅刻・早退しながらでしたが、それでも勤務を休むわけにはいかなかったので大変助かりました。

その後、院内に病児保育室ができ、利用しやすいように解決しながら、今ではスムーズにみていただけて助かっています。敷地内にあるのは、やはり心強いです。送迎の時間なども考慮すると、圧倒的に便利です。

左棟:看護師と研修医の舎宅
中央棟:医師(単身用)の舎宅
 右棟:医師(家族用)の舎宅

佐世保共済病院

地域就労支援病院

<副センター長の感想>
驚いたことに、病院から隣のショッピングセンターまで傘なしで行ける連絡通路が整備してあります。病児保育室も、女性医師や看護部からの要望に応えて、大がかりな改修工事などをせずに、空いている部屋を利用して対応しておられます。

院内保育園ができれば欲しいという職員の願いも、いつか叶えられる日が来るかもしれません。ワークライフバランス推進員の木本先生は、周りの女性医師のニーズを把握され、志を全うできるように、心配りされておられます。

敷地内舎宅の利点を生かしてオンコールを乗り切り、共働き世帯の動線を短くして時間を短縮するワークライフスタイルを、参考にしてみてはいかがでしょうか。