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長崎川棚医療センター

2015.09.15

平成27年9月15日、独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センターの宮下光世病院長、今年の6月30日に復帰したばかりで時間短縮勤務(常勤)中の神経内科医師 成田智子先生、小池恭栄看護部長、宮田広事務部長の4名にお話を伺いました。

●育休復帰後の勤務状況などについて、神経内科で活躍中の女性医師 成田智子先生インタビュー

●ワークライフバランスの面から見る病院運営全般について、宮下光世病院長インタビュー

●看護部のワークライフバランスについて、小池恭栄看護部長インタビュー

●事務部門が取り組んでいる勤務状況改善について、宮田広事務部長インタビュー

  

  

  

精神内科で活躍中の女性医師、成田智子先生に、復帰後の勤務や子育てについて伺いました。

  

8時半から15時までの時間短縮勤務で常勤です。平成25年4月に長崎大学病院からこちらに異動してきて、その1年後の平成26年4月から産休に入って、平成27年の6月30日に復帰しました。

現在の仕事内容は他の科の入院中の患者さんのコンサルトや、当直時間帯に入院された患者さんの引き継ぎ、専門の検査を担当、などしています。外来は出産前はやっていましたが、今は担当していません。

できるかぎり臨床をしっかりやりたいと思っています。なるべく時間の融通がきくような臨床の形態で育児との折り合いをつけて、少しずつできることを増していっているという状況です。

私は長崎市内ではありませんが、通勤に1時間かかります。子どもは家の近くの保育所に預けていますが、子どもが熱を出したりして連絡が入ると、少し遠いですけど帰ります。

夫は地元で開業医をやっていますが、私が勤務後帰宅するまでずっと預かってもらうわけにはいかないので、私が帰っています。
子どもがもう少し大きくなれば夫に任せることができるかもしれないですけど、今はまだ1歳ちょっとなので難しいです。

今は、子どもが小さいために仕事が制約されているような状況だと考えています。外来中に子どものことで呼び出されて、急に帰ることになると、多大な迷惑をかけることになるので、そういう意味で外来はできないなと思っています。

病棟は主治医制なのでカバーしていただくのが難しい部分もあります。今は、何か急用などがある時は、同じ神経内科で副院長の松尾秀徳先生にバックアップしていただいています。

また、土日に患者さんに問題が生じたら、可能な時は来ています。子どもは一緒に連れてきて、病棟のナースステーションに置いてもらいます。

両立できていると言えるかわからないです。病院では誰かに迷惑をかけている、家では夫に迷惑をかけているような状況で、なんとかやっている感じです。

具体的にキャリアを積むプランはありませんが、少しずつできる範囲を増やしていって、将来的には仕事の上でのライフワークのようなものを見つけられるといいなと思います。

私は平成16年に医学部を卒業し、新しく始まったばかりだった臨床研修制度で長崎医療センターで研修しました。その後大学病院に勤務して大学院を卒業、専門医をとりました。

将来的にずっと観察していけるというか、リサーチも絡めたようなことをやっていきたいと思っています。

<病院長>
この病院に臨床研究部があって、研究ができる体制になっていて、この病院で学位を取った女性医師もいます。長崎大学の連携大学院にもなっています。

ピンチは今のところありません。少ない仕事量から始めさせてもらって、少しずつ増やしているような状態で、復帰直後は“もっとできるのに”という気持ちにもなり、逆にそれが負担でした。
“自分の存在意義あるのかな?”というような感じでしたが、徐々にいろいろな仕事をさせてもらっています。

時間の長さはどうなるかわかりませんが、仕事内容としてフルに復帰できることをまず目指しています。1時間早く帰るにしても、当たり前に外来をし、病棟を持つ、といった勤務状況になることが目標です。そして、いつかはフルタイムになることを目指しています。

私のように時間制約のある働き方の人が女性に限らずもっと増えてくれば、社会的にも働きやすくなると思います。

例えば、私の後に誰かそういうことになれば、その人が外来をしていて、急に休むとしても、変わってあげることもできますし。そういった助けあいをするためにも、男性、女性問わず、育休を取る人が増えてくるといいなと思います。

  

宮下光世院長に、ワークライフバランスに関する病院全体としての取り組みについて伺いました。

  

子どもがいて、働くためには、24時間保育と病児保育が必要で、以前からあった保育所は一昨年の3月に建て直し、病児保育は今年3月から新しく始めました。
安心して働いてもらうためと、医師、看護師も含めて女性や共働きが多いから、働きやすい環境を整え、この病院を選んでもらうためです。

安心して働いてもらえるということが第一です。それによって、離職防止にもつながります。

職員の研修は国立病院機構の運営方針の3本柱のひとつで、それは病院でサポートしますし、個人的にもっと勉強したいという人には病院長の裁量でサポートしていきたいと思います。

ここは臨床研修協力病院なので、同じ国立病院機構の長崎医療センターや佐賀病院から研修医が来ます。結核や神経内科の疾患など、内科の研修としてこの病院を選んできてくれます。

研修期間は年間に1~2か月で、毎年1~2名います。
また、新しい専門医制度が始まります。病院としては、若い医師の確保に初期臨床研修、新しい専門医制度にしっかり取り組んでいきたいと思います。

これからもっと男性が家庭や地域と関わることが大事になってくると思います。

私は子育て中は学校関係を担当していました。学校の行事に行ける時は私が行き、三者面談や授業参観に行っていました。それは、私にとっても勉強になりました。

今は夫婦ふたりだけですが、家事も後片付けはしますし、洗濯も自分の分は自分で全部しています。これからは夫婦がそれぞれ自立することも必要ではないでしょうか。

ワークライフバランスについてですが、ここはそんなに忙しい病院ではないので、コンパクトに働いて定時退勤できます。アフター5を有意義に過ごすことで、医師や職員全体もいろんな体験ができて、それが仕事に役立ってくるので、様々な体験をしてもらいたいと思います。

また、この病院には研修用の立派な宿舎があり、職員や難病のご家族の方にも使ってもらっています。また、別の職員用の宿舎は家具付きで、新採用の人が利用しやすいようにしています。

最後になりますが女性医師である前に医師であるということを意識してほしいと思います。そういう女性医師を私たちはサポートしていきたいと考えています。

  

小池恭栄看護部長に、看護部でのワークライフバランスについて伺いました。

  

病院長の方針に従って、仕事がうまくいくように看護部でできることを計画的に行っています。

産休、育休の人は約20名です。短時間勤務は10名程です。

夜勤が問題なのですが、短時間勤務の人などを考慮して配置しているので、それほど困っていません。育休から復帰する時は、まず副部長が連絡をとって意向を聞いて、復職する前に何度か病院に来てもらって、状況を聞きながら配置場所などを決めています。

また、育児中の人は勤務時間を1日2時間短縮でき、朝1時間夕方1時間でもいいし、2時間まとめてでもどちらでもいいことになっています。期間は小学校入学前までです。

育休中の人に、当院が発行している情報誌“長崎川棚医療センターだより「養氣軒」”を定期的に届けていますが、それに病院の最新の出来事などを添えて送っています。

私は結婚や子育てをしつつ、転勤も経験して、定年まで働かせていただきました。なるべく自分のキャリアを考えながら、子育てもうまくしていただいて、協力できるところはしてもらって、長くこの仕事を続けていただきたいと思います。

  

宮田広事務部長に、事務部門としてのワークライフバランスへの取り込みについて伺いました。

  

大きくは変わりませんが、若干減ったので、医師確保に苦慮しています。女性医師は全体で6名、神経内科に4名います。

病児・病後児保育のことは、昨年秋に病院長から話があって、情報収集したら、国立病院機構では今まで病児・病後児保育をしているところがほとんどなかったのです。

ところが、ちょうど熊本医療センターで始めたと聞いて、看護部長と一緒に見学に行きました。
いざ当院でやることになったら、保育室の内装だけは業者さんにお願いしましたが、職員の皆さんから育児後使っていないものなどをいろいろ寄贈していただいて、ほとんどの家具・ベッド・おもちゃなどが自前で揃いました。

朝から病児保育を利用したい方が管理当直に電話をして、そこから看護部へ伝達され、看護師が派遣されます。派遣の分の穴埋めは業務調整して対応しています。

先日、レアケースとして、台風が直撃するという時に、普段利用している保育所が休みになり、看護師さんが出勤できなかったので、それなら病児保育室を使って対応しようということになり、出勤できる方には出勤してもらって、病児保育室で子どもさんを預かることにしました。

<病院長>
子育て中の女性医師を間近で見ていて、病児・病後児保育がないと働けないなあと思っていました。地域の病児保育は川棚町になく、当院の病児保育を一般にも使わせてほしいという要望もあります。
一般の方にも開放することになるといろいろ調整が必要ですが、将来的にはありえることかもしれません。

今年の3月に病児保育室を開設する前に院内で説明会を開催しました。その時の参加者はこれから病児保育を使う可能性のある方がほとんどだったのですが、そこで機構が作成したワークライフバランス応援ガイドブックを配って、活用してもらえるような制度について説明しました。

また、事務部門では今年の7月から週1回各課で曜日を分けて定時退勤の日を決めて、今も継続しています。どうしても急ぎでしなければならない仕事は上司や同僚が協力して対応するようにしていて、まだ完全ではないですが、少しずつそうできたらと思っています。

女性職員、男性職員を問わず、勤務環境の改善をしないと、人材確保や仕事をやっていくうえでのモチベーションの維持ができないと思いますので、スピーディーにタイムリーに他部門等とも協力してやっていきたいと思います。

―貴重なお話をありがとうございました。

  

保育所、病児保育室を見学させていただきました。

  

「さくら保育園」は清潔感があり、園庭も広々としていて、とても快適に過ごせそうです。

 一昨年完成した「さくら保育園」は定員34名で、現在は27名が利用しています。以前は育児中の女性医師の当直に合わせて、夜間保育などを行っていたそうです。

保育士の人材確保の面で毎日は難しいそうですが、夜間保育や24時間保育も要望があれば実施するとのことでした。

一方、「病児保育室さくらんぼ」は、職員用の宿舎だったアパートの一室を改装して、今年3月に開設されました。部屋は全部で3室あるので、感染症時の隔離も可能です。食事は持参か、注文も可能で、対象年齢は3歳~小学生までです。

「病児保育室さくらんぼ」は、宿舎を改装したので、台所、お風呂、トイレも完備してあります。

独立行政法人国立病院機構 長崎川棚医療センター

地域就労支援病院

<副センター長の感想>
ご自身が共働きである宮下病院長は、「さくら保育園」に床暖房を完備するなど、細やかな気配りをしていらっしゃいました。

また、その病院長の命を受けて、宮田事務部長や小池看護部長が尽力されて開設した「病児保育室さくらんぼ」は、今夏の台風時に一時預かりとして利用し、開所早々臨機応変に活用していらっしゃったのが印象的でした。

その他、単身赴任者や研修医のために準備された、家具・電化製品つきアパートなど、病院長と事務部長の理解力&実践力でさまざまなニーズにも柔軟に対応されて、働きやすい環境整備がなされているようです。病院の改築予定もあるそうなので、さらに充実した設備が整い、働きやすさが向上するのではないかと思います。