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長崎大学医学部3年生「医と社会」授業で、学生キャリア講習会を行いました

2026.11.02

「医師としてのキャリア継続のため、ワークライフバランスの考え方を知るとともに、医師としての多様な生き方を学ぶ」ことを目的として取り組みました。
日 時:2026年10月23日(金)8:50~16:20
対 象:長崎大学医学部医学科3年生(男性76名、女性42名 合計118名)の「医と社会」教育の一環で実施。

<性差医学・医療についての講義>

・久留米大学 学長直属 准教授/DE&I推進研究センター 副センター長 守屋 普久子 先生
「「当たり前」を問い直す医療 -性差医学・医療からDE&Iへ- 」

性差医学は、男女の違いを強調する医学ではない。これまで誰を「標準」として医学をつくってきたのかを問い直し、典型像から外れる患者さんを見落とさず、一人ひとりに適した医療へ近づくための医学であると説明しました。性差医学が必要になった経緯や性差を見ると診断や治療がどう変わるのかを考え、様々なデータを鵜呑みにせず意識を持って着目することで、医療の質が上がることがわかりました。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)と医療安全の章では、多様な視点がなぜ医療安全に繋がるのか、心理的安全性や多職種チームの例を挙げ、推進する必要性を解説しました。また、属人化した働き方、バーンアウトを防ぐ鍵は、一人で抱えない・異なる視点を持つ人が声を上げられるチームづくりで、見落としを防ぎ、患者さんや医師自身も守るスキルだと話しました。「今の医療現場の仕組みは、皆さんを守ってくれるでしょうか」「長く働き続けられるチームと仕組みを、皆さんの世代で作っていってください」と投げかけました。

<行政医師の紹介>

・長崎市市民健康部 次長/長崎市保健所 副所長 木下 史子 先生
「行政医師について」

エピソードを交えながら、なぜ医師を目指したか、さらに小児科医師から行政医師へ転身した経緯などを話しました。地域における「健康危機管理の拠点」である保健所の、多岐にわたる取り組みを紹介し「臨床の経験は行政医師の仕事にも役立つ」と説明しました。

<メディカル・ワークライフバランスセンターの取組紹介>

・長崎大学病院メディカル・ワークライフバランスセンター センター長 南 貴子
医学部卒業後のキャリアパスのイメージを伝え、ライフイベントを迎えた際には、センターの取り組み「マタニティウェアの貸出」「長崎医師保育サポートシステム」を利用する、センターのWebサイト「男性育児休業について」「私たちのワークライフバランス実践術」の情報を参考にする、相談窓口であるセンターや県内各病院にいる「ワークライフバランス推進員」に相談することなどを勧めました。

<グループ討論>
仕事と育児の両立を目指す共働き夫婦が、問題に直面した時にどのように解決していくかを、グループに分かれて討論しました。

<医師会の取組紹介>

・長崎県医師会 副会長 瀬戸 牧子 先生
世界に誇れる日本の医療保険制度「国民皆保険」を維持して守るためには、医療現場の代弁者として、国や社会に向けて誰かが意見を言わないといけない。言わなければ何も変わらないし、現場を知らない人が作ったルールで様々なことが決まってしまわないように、医師会の立場で多くの医師が国政にも関心を持ち、関わっていくことがとても大事だと話しました。また、長崎とゆかりのあるシーボルトの娘、楠本イネは、西洋医学を学び初めて医業を行った女性と紹介。学生の認知度は低く「来年2027年5月22日に、おイネさん生誕200周年のイベントを行うので、見に来てください!」と呼びかけました。※関係記事はコチラ

<発表と先輩医師からのアドバイス>
4つの事例毎に、全12グループが発表をしました。うち4グループはロールプレイング形式で発表をしました。

院内のワークライフバランス推進員や先輩医師からは、様々な視点からのアドバイスが挙がりました。

内分泌・代謝内科 中村 祐太 先生    麻酔科 山田 友理 先生       呼吸器内科 森 麻耶子 先生

<先輩医師のコメント>
●内分泌・代謝内科 中村 祐太 先生
学生の皆さんならではの新鮮な視点があり、貴重な学びの機会となりました。自分本位なワークライフバランスとならないよう、私自身も今後は同僚や家族のワークライフバランスにも目を向けていきたいと感じました。医師人生には大小さまざまな選択の機会がありますが、譲れない希望を実現するには、それ相応の準備や周囲との対話、時には振り返りも重要だと思います。皆さんのこれからを応援しています。
●麻酔科 山田 友理 先生
学生の皆さんが医師のワークライフバランスについて真剣に考え、活発に意見を交わす姿が印象的でした。私自身も、これまでの経験を振り返ると共に、思いつきもしなかった意見にハッとさせられる貴重な機会となりました。学生の皆さんには、医師としてのキャリアを積み、様々なライフイベントを迎える中でも、自分らしい働き方を見つけてほしいと思います。私もワークライフバランス推進員として、その実現を支えられるよう努めていきたいと思います。
●呼吸器内科 森 麻耶子 先生
事例はいずれも、医師として働く中で誰もが遭遇しうるものであり、学生の皆さんの発表を「わかるなぁ、悩むよね」と共感しながら聞いていました。結婚や妊娠・出産がすべてではありませんが、誰にとっても人生の中で起こりうることとして、学生のうちからワークライフバランスについて考え、将来の診療科の選択やキャリアの築き方について考えておくことは、とても大切だと思います。お伝えした内容が、学生の皆さんにとって少しでも参考になれば幸いです。
●長崎県医師会 副会長 瀬戸 牧子 先生
いつもながら若い学生の皆さんの意見を楽しく聞かせていただきました。私たちの時代と違って自分の意見を堂々と発表する技術と度胸を持っていて素晴らしいと思います。私は教育を受けてきたのが半世紀以上前になり、また性別に関するUnconscious biasの影響だけではないのですが、自分に自信がなく、どうしても一歩引いてしまいます(私の周りの人は、私がそんな風に思っているとは気づいていないかもしれませんが)。本当にうらやましい限りです。皆さんのように飛び出してみたい!
長崎大学は、メディカル・ワークライフバランスセンターがあって、共に生活していくことについて、みんなで考え、侃侃諤諤(かんかんがくがく)言い合えることができて幸せだなと思います。これからも期待しています、一緒に頑張りましょう。


<先輩医師の講演① -ビデオ- >

・長崎大学医歯薬学総合研究科 内臓機能生理学 教授 井上 剛 先生
「留学、研究医のすゝめ?」

臨床医から研究医へ転向した井上先生は、米国留学中の医師13年目に初めて国際学会のシンポジウムで講演した経験が、基礎研究を続ける決意に繋がったと述べました。研究医の魅力は、疑問を追求できる・若手や学生と共に育つ・臨床医とは異なる自由な時間設計(家族との時間確保等)ができる一方で、アカデミア特有の難しさ、特に研究費の獲得はかなり大変だと説明しました。「今、将来を決める必要はまったくない。面白そうな選択肢が現れたときに躊躇せず挑戦し、失敗してもやり直せる柔軟さを持つことが大切」とエールを送りました。

<先輩医師の講演②>

・長崎大学病院 呼吸器外科 医員 市川 宏美 先生
「外科医とワーク・ライフ・バランス」
製薬会社での社会人経験があり「人を助けるためには資格が必要」と医学部へ学士編入された市川先生。30代後半で1年間の育休を取得し復帰。現在の女性外科医の実情を話し「仕事と子育ての両立は可能」「外科が好きなら誰でも外科医になれる」と、覚悟を持った潔さが印象的でした。

<先輩医師の講演③>

・長崎大学病院 胃・食道外科 医員 鄭 暁剛 先生
「共働き医師夫婦の育休・子育て・キャリア」
外科と内科の医師夫婦で、専門医取得年に妊娠がわかり、自身は2週間、パートナーは10か月間の育休を取得し復帰。「育休は早い段階から周りに意思表示をしておく事で後ろめたさを感じることもなく有意義な経験が得られる」と話し、パートナーの心強い味方となりポリシーを持って仕事と子育てを両立されています。

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男性の育児休業について、制度の詳しい内容やデータ、他の体験談をまとめたページを公開しました。
あわせてご覧ください。
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その他、グーグルフォームによる「講義前後アンケート」の実施や「キャリア&ライフ未来年表」の作成など、盛りだくさんのキャリア講習会でした。

<講義前後アンケートの集計結果抜粋>
●2026年度の受講予定者118名(男性76名、女性42名(女性の割合36%))のうち、アンケート回答者は、講義前80人、講義後91人でした。「ワークライフバランス」という言葉を聞いたことがある割合は、アンケートを開始した2014年で50%程度でしたが、現在ではほとんどの学生が耳にしたことがあると回答しました。学校の授業やメディアでも取り上げられ広く浸透しています。
●現時点での将来の不安
「不安がある」講義前59%→講義後は48%に漸減。
→不安が無くなったわけではないが、対策や見通しが可能な課題に変化した様子
●将来に対する不安の内容(複数選択)
1位「仕事と生活の両立」23.4%
2位「キャリア形成」18.8%
3位「勤務地」「結婚・出産」16.2%
→働き方や私生活とのバランスにも高い関心がうかがえる
●「産休」「育休」の言葉は、それぞれ90%以上の割合で認知されている
「出生時育児休業(産後パパ育休)」の言葉は初めて90%を超える高い割合で認知されている
講義後の「自分も育休を取ってみたい」学生の割合は80%以上
→講義前と比べると、育休取得を考える学生が増えている
●将来の進路を決定する時に重視するもの(3つまで選択)
<講義前>
1位「仕事の内容」2位「雰囲気の良い科」3位「やりがい」
<講義後>
1位「仕事の内容」2位「雰囲気の良い科」3位「やりがい」
→講義前後で上位3つの順位に差は出なかったが、「希望するライフスタイルが得られる」は、講義前7位から講義後4位に上昇し、自身の価値観や達成感に加えて、ワークライフバランスを考慮したキャリアプランニングを重視する学生が増加した
●仕事と生活の両立について
講義の前後で
「できる」+「なんとかできそう」54%→86%と増加し、「できない」+「わからない」46%→14%へ減少
両立への自信は講義後80%を超える高い割合に到達
「今回の講義が将来役に立ちそうだ」と答えた学生は97%
→講義の意義を感じられた

<学生の感想抜粋>
◎今までの授業よりも、身近な内容であったため、より関心を持って参加できた。グループワークも積極的に参加でき、充実した一日だった。
◎自分が抱いていた将来への不安を軽減することができたのでよかった。特に先輩医師の講演は参考になった。
◎ロールプレイをすることによって、イメージがつきやすかった。
◎最後の講演で、2週間でも男性が育休を取ることのメリットを知ることができた。
◎自分の将来の可能性を広げられそうな手段がたくさんあって非常に参考になった。
◎なんとなく不安だった、キャリアと子育ての両立について、実際に子育てを経験している先輩方のお話しが聞けてよかった。
◎1日ワークライフバランスについて考えてみて、パートナーがいる場合は、お互いの仕事環境を尊重し合いながら、自分のキャリアも大切にしていくべきだと考えた。
◎自分の進路や家族との時間で迷う事はあると思うが、うまく妥協点を見つけ、自分だけで何とかしようとせず、周囲を頼る事も大切だと思った。
◎改めてキャリア・ライフプランについて考える、いいきっかけになった。医師会に求めることは、前時代的な考え方によって、育休が取れなくなる、あるいは取りにくい雰囲気になるのを避けてほしい。

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↑講義前後アンケート集計結果抜粋グラフ(2ページあり)

<南 貴子 センター長 所感>
今年度の医学科3年生の女性比率36%(男女比=2:1程度)、医学科生6学年の総数では女性比率40%となっています。先日、医学科4年生のOSCEで模擬患者をされていた一般の方から「受験する医学生に女性が多いですね」と声をかけられました。私たち医師も、これまで女性医師がマイノリティであった時代は終わり、これからの若い医師は男女比が1:1に近くなると認識しておく必要があります。

これからどうすべきかを把握するために、今の学生が、どのように考えているのかを昨年度に引き続き、アンケート調査をしました。
<講義前>
【医師のワークライフバランスに関して、年上の世代の価値観であなたが違和感を覚えることはなんですか?】
勤務時間の長さ、休みの取りにくさ、ワークライフバランスを尊重していない態度などが多く挙がりました。
<講義後>
【あなたが考えるワークライフバランスの「令和モデル」とは何ですか?】
定時退勤、休日の確保、ワークライフバランスの取れた生活と、多様性のある働き方などが挙がりました。自己研鑽という名のサービス残業など「残業ありき」から、「両立ありき」の働き方、生活を若い世代は求めています。

このような環境が長崎大学病院、長崎県内の病院で整備できていないとわかれば、若い世代は他県・都市部に流出するのかもしれません。授業の最後に提出してもらう未来年表で、今年は「産業医」と書いた学生がこれまでより多くいました。若い世代が目指す医師像は、これまでと違うことを認識して、女性医師が増えることを想定して、働きやすい、両立しやすい長崎県になるように、センターの活動を続けていきたいと感じました。

【未来年表の記載事項】今回の講義と関連する内容などをピックアップ

海外留学16人
国内留学 9人
海外活動・渡米 2人
国境なき医師団+国際協力 2人+1人(いずれも女性)
出生時育児休業(パパ育休)男性のみ 8人
男性育休16人
女性育休10人
時短勤務・復帰医 2人(いずれも女性)
大学院進学・学位取得16人
開業(親の継承含む)男性20人、女性4人
行政医 6人
産業医 3人
法医学者 1人
政界進出 3人